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友人がとても面白い本を見つけてきてくれました。「映像産業の裏方たち バックステージヒーローズ」(長野辰次著2001年 朝日ソノラマ)
テレビ、映画、CMなどの世界を裏で支える様々な"職人"さんたち141人のインタビューです。
映像の世界って、複雑そうな機械がいっぱい使われていて、人の手を必要とする部分などほんの少しのように思えますが、実は、"手作り"感あふれる世界でもあるのだと、この本を読んで知りました。
金城さんの仕事とも重なる部分がたくさんあるので、「へぇ~」「ほぉ~」「なるほど!」と、あちこち付箋を貼りながら読んでいます。
まずは、"シズル屋さん"。
冷製サッポロのCMに金城さんが登場して、「シズル感」という業界用語を知りました。てんぷらを揚げる音、焼き肉を焼く音が語源だそうですが、映像で表現した臨場感のあるおいしそうな様子を言うのだそうですね。先日も、スナック菓子の企画担当者が、お菓子のパッケージにシズル感を持たせるといっているのをテレビで見て、随分、使用範囲が広い言葉なんだなと感心しました。料理や飲み物、果物は、イメージがあるのですが、ポテトチップの「シズル感」って、ちょっとピンとこなくて。
ビールCMの"シズル屋さん"は、撮影現場で、ひたすらビールを注ぐのだそうです。
仕事道具はエプロン、タオル、ストロー、注射器、時にはミキサーも。ビールにストロー?注射器で何をするの?興味津津。
もっとも重要なことは、グラスをよく洗うことと、ビールの温度(6℃前後)。これは撮影じゃなくてもおいしいビールを飲む基本でしょうね(なんて、飲めない私が言うのもなんですが)。
よく冷えた感じを出すため、グラスに霧吹きで水滴を付けるというのは、想像がつきます。でも、あの細かくきれいな泡はどうやって?もしかして、ビール以外のものなんじゃないの?と、疑問でした。
いえいえ、本物なんですって。ただ、秘密の技があるんです。
グラスに注いで、最初にできた泡はストローで全部吸い取って捨てる(ゆっくり丁寧に注いでも大きめの泡が出てしまうんだそうです)。泡を取り除いたビールの水面に注射器(ここで登場です)を突きたて、空気を送り込むと・・・細かいクリーム状の白い泡が盛り上がってきて、見事おいしそ~な一杯に。
泡の量や流れ出すタイミングは経験から会得。まさに"職人"です。
このインタビュー記事で、もう一つ、紹介されている職人技には、まさに目からうろこが落ちる思いでした。
「なぜビールの泡は、ブランド名が見えるように、必ず右か左に避けるようにこぼれるのか」
そういえば、冷製サッポロもわずかに右に流れています。
答えは、「グラスの底に紙とかを敷いて、目に見えない程度に傾ける」でした。
種を明かしてしまえば、「な~んだ、そんな簡単なこと」と思うかもしれませんが、紙1枚敷くという細やかな気配りが、できそうでできない気がします。
CM撮影が終わると、やはりビールで乾杯!となるのだそうです。もちろん"シズル屋"さんが丁寧に注いだビールで。
この方が、金城さんのCMにも関わったかどうかはわかりませんが、現場には"シズル屋"さんの存在があったはず。その職人技に金城さんも目を見張ったんじゃないでしょうか。
撮影に使われるビールは泡まで本物というのはわかったのですが、飲む方はどうなんでしょうね。これは、まだまだ謎です。