グリム童話の『白雪姫』を、かなりアレンジした作品。
『ナルニア』シリーズと『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを足して割ったような映像と世界観。
『白雪姫』を原作にしたというよりは、着想を得た、という感じ。
魔法の鏡、リンゴなど、重要な要素だけ抽出している。
アクション満載でダークな仕上がり。
監督は新鋭ルパート・サンダース。
CM業界出身ということで、メジャー映画は今作が初(少なくとも知ってる限りでは)。
リドリー・スコットなんかもそうだけど、CM界出身の監督はスタイリッシュな画面作りが上手い。
ルパートさんも、例に漏れず。
ヒロインの白雪姫ことスノーホワイトを演じるのは、クリステン・スチュワート。
そして別格の存在感で主役を喰っているのが、シャーリーズ・セロン。
魔女=悪の女王役を熱演しているんだけど、相変わらずの美貌で正にハマり役。
物語的には負けても、美しさと演技では圧勝。
狩人のエリック役はクリス・ヘムズワース、ウィリアム王子役はサム・クラフリン。
まずは、良いところから。
既に書いたように、映像は非常にスタイリッシュ。
この手の大作ファンタジーは、戦闘シーンがどうしても大味になりがち。
大軍同士の戦いとなると、つい空撮風のCGで片付けてしまうのは分からなくもないけれど。
その点、今作はかなり良い方かな、と。
わりと躍動感もあったし、カットの切り替えやアングルも好みな感じ。
そして何より、シャーリーズ・セロン。
こっちが主役といっても過言ではないくらいの存在感。
個人的に”青白い”印象だったので、美しく冷酷な魔女にぴったり。
(『アンダーワールド』シリーズの印象が強いせいかな)
ジェームズ・N・ハワードの音楽も、素晴らしいの一言。
ファンタジー物の王道路線でありながら、スタイリッシュな映像を際立たせる現代的センス。
それは、ロックやゴシックなテイストを取り入れた衣装などにも言えること。
そういった自由な発想・解釈が、この作品の面白さ。
逆に、今一つだったかな、という部分。
これは誰もが思うであろうことだけど、ヒロインの弱さ。
役として、という意味ではなく、役者として。
セロン姉さん演じる女王を脅かすほど美しいかというと、そうでもなく。
「女王様より美しい者が……」と言った鏡は嘘つきだったじゃないか、となってしまう。
そして、監督のルパート・サンダース。
映像がスタイリッシュなのはいいけれど、場面のつなぎはイマイチ。
これは、CM業界やVFXの技術畑出身の監督にありがちなこと。
あと、特に日本人から叩かれそうだけど、ジブリ映画に影響されたと思しきシーンあり。
他にも『ロード・オブ・ザ・リング』と全く同じ構成のところとか、色々。
まぁ、これが長編映画1作目なので、これからに期待しましょう。
作品として一番もったいないのは、もっと思い切ってダークにしても良かったかな、と。
ユニバーサルの100周年作品ということで、万人向けにしたいという思惑があったんだろうけど。
それが少し作品としての自由度を狭めたんじゃないかな。
あくまでも、個人的な好みと推測ですが。
あと、これは本編とは全く関係ないけれど、日本語訳の表記がちょっと気になったかな。
作品が史劇タッチなのに、妙にフランクな文章になっていて違和感あり。
会話は問題ないとして、ナレーションの部分とか。
長短挙げたけれど、全体としての出来はかなり良い方だと思う。
映像がキレイで、音楽も良いんだから、実に映画館向き。
少しダークではあれど、男女問わず見られる作品でもあるし。
『白雪姫』自体は誰もが知っているから、年輩の人でも楽しめるんじゃないかな。
セロン姉さん演じる、悪の女王に肩入れして見ることをオススメします。