製作ティム・バートン、監督はティムール・ベクマンベトフ。
エイブラハム・リンカーンが実はヴァンパイアハンターだった、という荒唐無稽なお話。
ベクマンベトフ監督の『ウォンテッド』がまぁまぁだったのと、バートンさん絡みなので見に行ったんだけど。
率直に言ってしまうと、個人的にはけっこうなハズレ。
多少なりとバートン風の”良さ”を期待していたのだけれど……
むしろ、バートン作品のデメリット(VFXの粗さ、突拍子のない展開など)はしっかり反映されていて。
そのデメリットを補って余りある世界観は、バートンご本人でないと作れない。
ベクマンベトフ監督が得意とするスタイリッシュさ、スピード感という要素も、イマイチ世界観と噛み合わず。
3D作品だったせいもあり、見づらさが際立ち、爽快というよりは”雑”な印象。
どうも製作と監督、2人のマイナス要素が集約されてしまった感が。
あくまでも、個人的な感想ですが。
評価を下げているもう一つの要素が、パっとしない役者陣。
リンカーン役のベンジャミン・ウォーカーを筆頭に、演技力もルックスも”まぁまぁ”な感じ。
際立った個性がない分、特殊効果満載の中で霞んでしまっている。
もちろん、リンカーンという実在した偉大な人物を演じるのは(フィクションとは言え)難しいけれど。
史実に基づいているワケではないのに、中途半端に似せたところで意味がない気がする。
若手メインでの起用は良いけれど、もう少しインパクトのある俳優なり女優なり参加して欲しかったかな。
音楽を担当したのも、ここ数年で出てきたヘンリー・ジャックマン。
今まで聞いたことなかったけど、アニメ映画を中心に楽曲を提供してきたようで。
鳥肌が立つというほどではないにせよ、なかなかセンスの良いスコア。
この作品の中では、ほぼ唯一の高得点。
プロフィールをまだ調べていないけれど、若いんだろうし、これからに期待。
そして、これは今作に限ったことではないけれど。
やはり今の段階では、3D映画を全面的に指示することはできない。
アニメ映画では非常に効果的な手法だと思うけれど、実写でやろうとすると制約が多くなってしまう。
スピーディな映像や背景が見づらくなるし、何より画面全体が暗くなりがち。
もう何年も経つのに、未だに『アバター』を超える作品は現れない。
あの作品のために開発されたシステムと言っても、過言ではないわけで。
それを前提にして、すさまじい時間と費用と熱意をもって生み出されたからこその完成度。
上っ面の技術面だけマネたところで、大した作品は生まれてこない。
本当に3D作品にする必要があるのか、3Dでなければ表現できないものなのか、考えて作ってほしいかな。
3D作品として公開したばっかりに、評価を落としたものもたくさんあると思いますし。
ということで、『リンカーン/秘密の書』は残念ながら辛口な評価になってしまいましたとさ。
この手のB級(笑)作品には寛大な僕としては、けっこう珍しいことですが。