ティム・バートン×ジョニー・デップの黄金コンビ作品(8作目)。
共演にはヘレナ・ボナム=カーター、音楽はダニー・エルフマン。
いつもの面々が揃って、安定のティム氏ワールド。
ミシェル・ファイファー、エヴァ・グリーンという新旧美人女優も。
原作のTVドラマは全く知らなかったので、先入観ゼロで鑑賞。
相変わらず趣味全開な世界観で、実に”らしい”感じ。
メロドラマ的なドロドロ愛憎劇に、吸血鬼やら何やらホラー要素が混じっている。
けれど、印象としては完全にコメディかな、と。
特に200年ぶりに復活したバーナバス・コリンズ(ジョニデ)の挙動が笑える。
マクドナルドの看板を見て「メフィストフェレス!」(どちらも頭文字が”M”)と叫んだり……
時代錯誤な言動で浮きまくっているあたり、なんだかかわいい。
ストーリーは、ひねりがあるワケではない。
映像的にも”作り物感”満載。
ただ、それでも楽しんで見れてしまうのがティム氏の映像世界。
リアリティを追うことだけが、芸術の全てではないので。
抽象的だったり、極端だったり、そういう表現もまた一つのカタチ。
ただ、これまでのティム作品に比べると、わりとリアルさ重視だったかな、と。
粗が目立っていたCGも、技術の進歩もあって調和していたし。
前作が『アリス』だったので、そう感じただけかもしれないけれど。
監督が相変わらずなら、主役のジョニデも相変わらず。
白塗りメイクで、挙動不審気味な演技。
サングラスに日傘(吸血鬼ですので)で外出するシーン、ほぼマイケル・ジャクソンでしたが(苦笑)
奇抜なメイク、強烈なキャラクターに、ある種の親しみやすさを感じさせるのがジョニデの上手さ。
これは過去のティム作品にも言えることだけれど、普通の俳優なら役に呑まれてしまう。
そもそも、ただでさえ、白塗りメイクで”差”が出にくいのに。
『チャリチョコ』、『スウィーニー』、『アリス』そして『ダークシャドウ』。
きちんと演じ分けているのがスゴイ。
ティム作品常連にして、奥さんでもあるヘレナさん。
ジョニデの演技が伝染ったのか、すっかり”ヘン”な女優さんに。
ミシェル・ファイファーは、50代とは思えない美人っぷり。
容姿はどうしても変わっていくけれど、そのオーラは衰えを知らない。
悪役の魔女を演じたのは、エヴァ・グリーン。
今までにないキレっぷりを見せてくれたのが、個人的に高評価。
(『キングダム・オブ・ヘヴン』でも美人だとは思ったけれど、演技は印象に残らなかった)
重要な2役を1人で担うのが、ベラ・ヒースコート。
まだ有名ではない若手を重要な役にキャスティングするのも、ティム作品では恒例。
周りのお姉さまたちが”濃すぎ”て、少し霞み気味だったのが残念。
一方で印象的だったのが、まだ15歳(たぶん)のクロエ・グレース・モレッツ。
実は狼人間の、ませた女の子の役。
芸歴が長いだけあって、なかなか堂々としたもの。
製作スタッフも、ティム作品には欠かせない顔ぶれが再集結。
独特の世界観や空気感を、今作でも見事に表現。
特に物語の中心となるコリンズ邸は、細部まで凝っている。
物語の舞台が70年代なので、それを再現した演出も。
アリス・クーパー御本人様が出てきたり、ジミヘンと思しきポスターがあったり。
その時代を知っている人は、色々と気付けて面白いかも。
音楽のダニー・エルフマンは、今作でも安定したスコアを提供。
70年代のシーンと、200年前のシーンでは、アクセントにする楽器を変えている。
『スウィーニー』ほどスプラッタでもなく、『アリス』ほどファンタジーでもなく。
毒気が控えめな分、ティム氏にしては”普通”な映画なのかもしれない。
けれど、「え、ここで?」という独特のタイミングで織り込まれるユーモアが笑える。
個人的には、なかなか面白うございました。