黒猫洞

黒音呼夜の爪とぎブログです。
映画のレビュー、創作など。
日記はFacebookに移行しつつあります。

Dr.パルナサスの鏡

2010-01-24 18:41:40 | MOVIE
公開初日にレイトショーで鑑賞。
監督はテリー・ギリアム。
良く言えば鬼才。
悪く言えば奇人。
ヒース・レジャーが亡くなり、3人のスターが後を引き継いだのは有名な話。
生前のヒースと親交があった、ジョニデ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル。
名優クリストファー・プラマーや新進女優リリー・コールが脇を固める。
 
正直この作品、お蔵入りになると思っていた。
なにせ、ギリアム監督だし。
しかも、撮影途中で役者が亡くなったし。
完成して何より。
 
作品の出来は、かなり上々。
ギリアム作品の中では、1番良かったかも。
いつもながら、意味不明ではあったけれども。
独創的な映像は面白い。
正に”imaginarium”。
作中に散りばめられたブラック・ユーモアも笑える。
 
ヒース・レジャーは、さすがの演技力。
『ダークナイト』のジョーカー役も良かったけれど、今作のトニー役も非常に良い。
そして、比べて見れば見るほど、ジョニデに似たオーラを感じる。
これが遺作となってしまったのが、あまりにも惜しい。
ジョニデ筆頭に、引き継いだ3人も素晴らしい。
亡くなった人の代役というのは、すごく難しいだろうに。
トニーの人物像や世界観は壊さず、それぞれの個性を反映させている。
演技とは関係ないけれど、3人はギャラの全てをヒースの娘に贈っている。
役者として、ヒースの友人として、素晴らしい姿勢だと思う。
 
作風から舞台裏まで、良くも悪くもドラマチックな作品。
ギリアム監督の作品ではあるけれど、やっぱりこれはヒースの映画。
スタッフもキャストも、彼への想いで団結し、完成させたんじゃないかな、と。
 
当然ながら、好みの差がハッキリ出る作品ではある。
ものすごく良かったけれど、何度見ても意味不明だと思うし。
ヒースやジョニデの名前に釣られて見て、
「なんだコレ!」ってなる人も多そう。
頭で考えるんじゃなく、”感じる”しかない。
フィーリングで楽しむべき映画、かな。
 
ヒース・レジャーの演技が、少しでも多くの人の記憶に残りますように。

海辺の家

2010-01-23 00:10:46 | MOVIE
余命3ヶ月を宣告されたダメ親父。
ひねくれた反抗期の息子。
海辺の家を舞台に展開する、人生を立て直す物語。
監督はアーウィン・ウィンクラー。
ダメ親父役はケビン・クライン。
反抗期息子はヘイデン・クリステンセン。
 
DVDを買った理由は、ヘイデンが出ているから。
本当に、ただそれだけの理由。
けれど実際に見てみたら、期待以上にイイ。
役者陣の名演もあって、非常に上質なヒューマンドラマ。
 
反抗期まっただ中の少年サムを演じたヘイデン。
鬱屈した感情や、思春期ならではの戸惑いやためらい。
親へ反抗しつつも、どこか憎みきれない心。
そういったナイーヴな心を、見事に演じている。
『スター・ウォーズ』でも見せた、翳りのある表情は彼ならでは。
彼の叫びは、憎しみと哀しみが混ざって聞こえるから不思議。
少年の持つ不安定さを、繊細に表現している。 
親のことを嫌いだと言いつつ、本当は嫌いになれない心。
僕自身がそうだったから、すごく共感できた。
 
作中、ジョージ(親父)はこんなことを言う。
「ただ好かれたいんじゃない、愛されたかったんだ」
「親父を憎んでいた。でも、それ以上に愛してしまった」
DVDのパッケージにも書かれた、これらのセリフ。
分かる人には、グッとくるんじゃないかと思う。
逆に、何もかも満足して育った人には、分からないかも。
 
個人的に気に入ったのは、
サムが風呂場でアリッサ(ジーナ・マローン)にからかわれる場面。
裸の女の子に戸惑い、視線が泳いでそわそわする。
「恥ずかしいの?」と言われて「そんなことないさ」と強がる。
初々しいし、微笑ましい限り。
役柄は16歳でも、ヘイデンは当時20歳。
恥じらいや戸惑いを”素”に見せるのは難しかったと思う。
あの誰もが感じる恥ずかしさを、瑞々しく表現したヘイデンはさすが。
 
感情移入できたおかげもあって、とってもお気に入りに。
心がゆっくりとざわめき、熱くなる映画です。

アバター

2010-01-22 14:41:13 | MOVIE
年末に観賞。
初めての3D映画。
と言うか、最初はコレにしようと数年前から決めていた。
それが、やっとこさ実現。
構想14年、制作4年もスゴイけれど、待ってた期間も長いのです。
 
さて、肝心の内容。
映像は、文句なしに素晴らしい。
壮大で幻想的な風景は美しいし、戦闘シーンも迫力がある。
特に飛行シーンは、3Dの効果もあって爽快。
個人的には、クリーチャーの動きの良さが◎。
昨今の映画で描かれるCGクリーチャーの多くに、不満があった。
動物の動き方を、しっかりと把握できてる監督が少ない。
『紀元前1万年』のエメリッヒ監督も、
『ロード・オブ・ザ・リング』のジャクソン監督も、
違和感のあるクリーチャーを、平気で使ってしまう。
それらに比べると、『アバター』のクリーチャーは格段に良い。
飛び立つ瞬間、重力に引かれて動きが重くなる感じとか。
 
どうしても気になったのは、先住民ナヴィのデザイン。
青い肌で、テーマパーク的な印象の姿は、最後まで馴染めず。
感情移入できなかったのが、もったいない感じ。
これは、完全に好みの問題だけれども。
 
そして、最後までしつこかった大佐。
まるでターミネーター。
キャメロン監督の趣味でしょうかね。
  
ストーリーは難しくなく、ファミリー向けアドベンチャー。
根底には、環境破壊や人類の自然への侵略、があるようだけれど。
話の流れは(先が読めるほど)シンプル。
単純で普遍的だからこそ、幅広い層に受け入れられそう。
  
”映像が飛び出す”ことを目的とせず、
”空気感を出す”ことに重点を置いた点が好印象。
奥行きが感じられ、より映画の世界に浸かることができる。
ただ、まだ発展途上の技術なのも確か。
もちろん、観客側も慣れていく必要があるし。
続編の企画もあるようだし、3Dという新たな要素と、
キャメロン監督には今後も注目したい。