ブログの更新が3ヶ月も間が空いてしまいました。申し訳ございませぬ。
さて、「ウェスタンホースマン(Western Horseman)10月号」に掲載されていた手縫いにまつわる記事です。
レザーカービングをしている方からするとあまりイメージがないかもしれませんが、「アメリカ人というのは粗雑で繊細な技術を持っていない」という印象があります。
実際に、アメリカのレザークラフト用パーツ(キット)などはあまり良い出来ではないことが多いのですが、そうした中でも勉強熱心な人というのはいるのだなあ、と思いました。(読書感想文かよっ)
TCAA(Traditional Cowboy Arts Association:トラディッショナル・カウボーイ・アーツ・アソシエーション)のメンバーであるキャリー=シュワルツ(Cary Schwartz)がフランス出身の同メンバー、ペドロ=ペドリーニ(Pedro Pedrini)の仲介で、フランスで陸軍用馬具を製作しているジャン=ルーク=パリソ(Jean Luc Parisot)にレザーケースの手縫い技術を学びに行くという話です。
ちなみに、キャリー=シュワルツとペドロ=ペドリーニの作品は昨年のTCAAカタログに掲載されており、特にペドロの作品はスクロールの美しさよりも、花や葉を重ね奥行きの深遠さを重視した独特なものです。
TCAA CATALOG 2008(ロープバッグ)
さて、この2人のフランス旅行ですが、まず彼らが訪れたのがエコー・ナシオナール・デキタシオン(Ecole Nationale e'Equitation:国立馬術学校)で、そこを訪れた際に馬具に関する古書を閲覧したそうです。キャリーはアメリカの職人ですが、この資料を見て、アメリカの馬具技術がヨーロッパの伝統技術の上に乗っかっているのだ、ということがわかったそうです。
その後、キャリーとペドロは31年の馬具を作り続けているジャンの工房でレザーケースの技術を学んだそうですが、特にキャリーが驚いたのは、ジャンの使用する目打ちのピッチがとても狭かったこと(#10~#12)、そして彼が使うオールが思ったほどシャープに仕上げてなかったことだそうです。
目打ちのピッチについてはエルメスの製品などからも理解できますが、オールの仕上げが十分でないとはどういうことでしょうか?
これはヨーロッパで使用される革がアメリカほどドライではなく、アメリカの革の場合、仕上げの甘いオールで突き刺すと(しかもピッチが狭いと)、下手をすれば革が裂けてしまうものでも、ヨーロッパの革の場合は、滑らかに突き刺さるからだということです。
当店でも販売しているブランチャードのオールがC.S.オズボーンよりも表面がザラザラなのはこうした理由があるからかもしれません。
そしてジャンの技術の多くが、キャリーが27年前にアメリカのサドル職人ジェシー=スミス(Jesse Smith)から学んだ手縫い技術とそっくりだったそうです。
ジェシー=スミスは有名な職人で、キャリー=シュワルツがそんな以前に彼から学んでいたということも驚きですが、そんな昔のアメリカでヨーロッパの手縫い技術を持っていたジェシー=スミスにも感心します。
それにしても、当店ではフランスの工具メーカー「ブランチャード(Vergez Blanchard)」の目打ちを10年ぐらい以前から使用しており、最初は#7を使っていたのを現在では#9に変更し、「細かい目だ。」と豪語していましたが(←豪語はしてないですが)、手縫いにこだわるメーカーというのは更に上を行っているのだと思いました。
フランス製目打ちはこちら
Vergez Blanchard Prick Iron