Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

My Name is Nobody

2009-09-28 14:29:52 | 映画(銃)

キャッチコピーは前代未聞!「荒野の決闘 150 対 1 」(オイオイ・・・
パロディー映画と断言するには勿体無い、B級品の名作映画です。
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邦題:ミスター・ノーボディ
原題:IL MIO NOME E' NESSUNO
英題:My Name Is Nobody
監督:トニーノ・ヴァレリー、セルジオ・レオーネ
主演:テレンス・ヒル、ヘンリー・フォンダ
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コメディーに分類される西部劇だが、導入部は極めて真面目だ。

速撃ちガンマンとして有名なジャック・ボーレガードはすでに老境だが、銃の腕前は全く衰えていない。
(名優ヘンリー・フォンダの演技がとにかく渋い!)
彼を倒して名を上げようとする無頼のガンマン達から常に命を狙われながら、今日も3人を一瞬で倒して生き抜いた。
3人を撃ったのに、銃声は一発分しか聞こえなかった。

それを見た一人の子供が父に尋ねた。
「彼より速い人間はいないの?」
すると父の返事は"Faster than him? Nobody."
(彼より速いやつ?そんな奴は居ねえ。)
察しの良い観客は、ここで原題の意味を理解するだろう。

ボーレガードは「強奪され行方不明の大量の金塊」を探している。出来の悪い弟が強盗の一味に加わった挙句に裏切られて殺されたので、「弟の敵討ち」をしようという事らしい。
金塊の行方を知る証人を尋ねたら、直前に殺害されてしまうなど、ストーリーはサスペンス風味の展開になっている。

話が進むにつれて、アメリカに近代化の波が押し寄せている現状が伝わってくる。早撃ちの腕前だけで生きてゆけた野生的な時代の終焉を、頭の良いボーレガードは敏感に感じ取っている。
ラストのボーレガードの「街中での決闘」場面では、大勢の野次馬が珍しそうに集まり、写真屋や新聞記者が結果を見守っているのが笑える。

序盤にテレンス・ヒルに対して「若いの。何て名前だい?」とボーレガードが尋ねると、その答えは"Me ? Nobody."(俺?名も無い雑魚さ。)
このシーンの意味する「Nobodyはボーレガードより速い。」という作者のメッセージは残念ながら日本語字幕では表現不可能だ。
雑魚と名乗りながら、侮れない速撃ちの実力が垣間見える。
(フィルムの早送りによる強引な速撃ちはご愛嬌。)

Nobodyはボーレガードの過去の戦績を詳しく暗記している。
いわゆるオタクあるいは追っかけファン的な行動が目立つ彼だが、なぜか「ワイルドバンチ」と呼ばれる荒くれ者の野盗集団150名を彼のヒーローであるはずのボーレガードひとりと決闘させようとするのだった。
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主役が自分の事を「名無し」と名乗るのは「荒野の用心棒」のクリント・イーストウッドにはじまるマカロニ・ウエスタンにおける流行でした。その源流は黒澤明監督作品の用心棒や椿三十郎にあります。日本人の感覚では「謙遜」ですが、西洋人は「ミステリアス」と感じるようです。

作中の端々にパロディーが混ざる「オールドファン好み」な作品です。
インディアンの墓に「サム・ペキンポーここに眠る」と有ったりするので、細かいギャグを見逃せない緊張感があります。

以前「夕陽のガンマン」で述べた「モーティマーをヘンリー・フォンダに頼みたかった。」というレオーネ監督の希望が、やっと叶った記念すべき映画でもあります。


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