水嶋ヒロ処女小説
累計発行部数4版43万部
出版不況のさなか、未明から書店に行列ができた。俳優、水嶋ヒロ(26)が本名の齋藤智裕として書き下ろした第5回ポプラ社小説大賞受賞作『KAGEROU』が15日午前零時、書店に並んだ。果たして、その出来映えは?
文芸書は10万部売れれば大ヒットだが、ポプラ社には予約注文が殺到。発売前に増版となり、累計発行部数は4版43万部に達した。最近では、村上春樹氏の長篇『1Q84』BOOK1の初版25万部を上回った。
東京・六本木の青山ブックセンターには“午前0時発売”の解禁が待ちきれず行列が出現。
東京駅前の丸善丸の内本店では、午前中だけで50冊以上を販売。「大半が女性。オフィス街ということもあり、20代から40代の会社員風の方が多かった」としている。大阪の紀伊國屋書店梅田本店では、通常の開店時間より1時間半早い午前8時半から販売カウンターを特設した。
肝心の中身はどうか。
リストラ、借金に苦しみ自殺しようとした40代男が主人公。臓器提供を裏取引する話を通じ、命の尊さを問う-。発売前に原稿を入手したという小説家の岩井志麻子氏は各局ワイドショーの直撃に感想を語った。
「読みやすいのは間違いない。前評判だけで、絶対これ、ゴーストが書いていると思っていたのですが、ヒロさんすみませんでした。本当に書いてますね。どんでん返しのオチもある。ヒロインの女の子は(妻の)絢香さんですね。すぐわかりました。純真で健気でいじらしくって、病気に苦しんでいる」
どうやら私小説的な色彩もあるようだが、岩井氏は写真誌フラッシュでは苦言も述べている。
「主人公の不幸が類型的なんです」「苦しみの描写が脚本みたいなんですよ」
フジテレビ「とくダネ!」の小倉智昭氏は「ストーリー展開がわかりやすい。一気に読める」、日本テレビ「スッキリ!!」のテリー伊藤氏も「平成の世の中でこんなステキな愛の形があるんだ」など高評価だった。
ネット書店大手のアマゾンジャパンでは15日午後2時現在、和書総合ランキング1位になるなど出足は好調だが、書店業界では話題先行に売れ残りを懸念する声もある。
ポプラ社は今回、売れ残れば仕入れ値と同額で返品できる通常の本とは違い、書店のマージンを増やす代わりに返品の際の負担も増える「責任販売制」を採用した。確実にベストセラーが見込めそうなケースに使われることが多い方式だ。
書店にとっては、予約した冊数が必ず入荷されるという利点がある一方、売れ行きを読み違えれば大きな損失を抱えるリスクもあるのだ。
果たして、ベストセラー作家の仲間入りができるか。
【ヤフオクでフライング出品】
『KAGEROU』は書店での予約が殺到する一方で、早くもネットオークションに出品された。最大手のヤフーオークションでは、発売から半日たった15日正午時点で、10点の出品が確認された。
うち9点は、価格は定価より30円高い1500円からスタートしているが、これまでに応札者はゼロ。16日午後までオークションは続くことから、興味があるユーザーらの“様子見”が続いているとみられる。
気になるのはオークションの開始時間。半数の5点は同一人物による新品で、いずれも“発売解禁時間”の15日午前0時より早い時間にフライング出品。最も早かったのは前夜の午後10時39分で、発送元は滋賀県となっている。
また、楽天オークションでも、1人のユーザーが新品5点を定価の1470円で出品していた。
(ZAKZAK/夕刊フジ)
今話題の小説です。
小説の中身は、予想に反して、40歳の中年ダメ男が主人公の脱力系ドタバタコメディ。帯裏の内容紹介、
"廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。/「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。/そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。命の十字路で二人は、ある契約を交わす/(中略)深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。/そこで彼は一つの儚き「命」と出逢い、かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。"
というのは確かにそのとおりだが、この要約から想像される作風とはほとんど対極にある。
物語のパターンとしては、よくある"悪魔との契約"もの。ただし、ファンタジーでもホラーでもSFでもなく、一応は現実に立脚している点がユニークといえばユニーク。ふつうの小説ではありえないキャラ、ありえない組織、ありえない設定が続出するものの、全体にコミカルなタッチなのでさほど気にならない。主人公の愛すべきダメっぷりと文章の素人っぽさが相俟って、それなりに好感のもてる小説に仕上がっている(関係ないけど、本文の最後、232ページの誤植にいちいちシールを貼って訂正してあるのもご愛敬)。
(web本の雑誌/livedoorニュース)
賞金2000万円辞退とか、題名から、
すごいシリアスな純文学なのかと思っていたのですが、
シリアスな主題を、ドライに読みやすく、綴った小説なのかなと思いました。
活字離れが甚だしくて、漫画すら衰退している状況と聞きますので、
特に若い世代を活字に引き込むには、
現実の重苦しさをそのまま書いた、あるいは読みにくい文体より、
ライトノベル風で活きのいい小説が優れているかもしれません。
内容としてはとても現代的で興味深いですよね。
水嶋さん、いや、斎藤さんと呼んだほうがいいのかな、
話題の処女作に続いて、
どんな作品を発表なさるのか、楽しみなところです。
映画化も視野に入れて書いておられるとのことで、
この作品に関しても今後の展開が楽しみですね!!