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皮膚感で魂が揺さぶられる:トラン監督が挑んだ美意識《ノルウェイの森》

2010-12-14 | 松山ケンイチ


皮膚感で魂が揺さぶられる:
   トラン監督が挑んだ美意識《ノルウェイの森》


■ノルウェイの森とは、雪や木の芽の印象と語るトラン・アン・ユン監督

累計発行部数1079万部(単行本・文庫本合計)を突破し、今なお日本のみならず世界で読み継がれている村上春樹の小説『ノルウェイの森』。映像化困難という言葉がこれほど的を射ている作品も珍しい昨今。発行から23年経った今年、事件は起こったのである。監督は、世界の映画祭で常に高い評価を勝ち得ている『青いパパイヤの香り』(94)、『夏至』(01)のトラン・アン・ユン。この奇跡の映像化に挑んだ彼の独特な美意識をうかがってみた。

小説が発行された1987年当時、装丁の上巻が赤、下巻が緑色ということで、クリスマスプレゼントの定番でもあった。過去にとらわれ、精神を病む女性とそんな女性を見守ると決意した青年の哀しく美しい恋物語。16年前、小説に出会ったトラン監督は、「自分の中に宿った衝撃は今も全く変わらない」と語る想いがあったからこそ、映画化への道が開けたのだろう。

先に映像化が困難な作品と書いたが、その理由の1つには原作者の村上春樹の存在がある。結果的に、映画化許諾が得られたわけだが、それ以上に村上はトラン監督に作品そのものを委ねていたのだ。

「日本で撮影することは義務ではなかったんです。村上さんご自身も日本にこだわらずに撮って構わないと仰ってくれた。けれど私がこの物語から感じたのは日本の魅力であり、日本での出来事であったからなんです。だから日本で、日本人の顔を使って撮りたいと思いました」。物語全編にわたって日本を見出した、と語るトラン監督の顔は、日本文化に憧憬する少年そのものだ。

原作の詩情感たっぷりのセリフ、美しすぎる背景描写を映像化することは、誰もが臆するだろうことは想像に難くない。だがトラン監督自身、叙情性あふれる美しい映像を得意とする。キャストたちも「監督の美意識に刺激を受けた」と語るとおり、トラン監督の美意識は半端ではない。

「重要なのは皮膚感がどのように映し出されるのかということ。例えば、登場人物の皮膚のつやのために、洋服の色が考えられ、必要な光の色も決定づけられていくんです。皮膚をどういう風に映すかということで、観客はどういう感情を持つかということが私にとって一番大事なことです」。皮膚のつやで感情を持つ世界観!? 確かにこれこそ村上文学の空気感と似ているのかもしれない。

そんなトラン監督が選んだ主人公、松山ケンイチと菊地凛子。ヴェネチア映画祭でも彼らの演技力への評価は掛け値なしに高かった。

「松山ケンイチは、すごく柔らかい、しなやかな俳優さん。しなやかだからこそ、ワタナベのような内面化した役を演じることができたんだと思います。彼はこの作品の中で自分の身を任せながら相手が要求するものを表現していく。それ以上のことをしないというのは素晴らしかった」。

菊地は直子という役を得るために、自らオーディションを希望した、いわば直子とは対極の、動の人である。ヴェネチア映画祭のディレクターも菊地の素を見て「全然、直子と違う」と驚いていたと明かす。

「洗練されているけれども、シンプルで全てが浄化されている感じ」と、日本のイメージを語ってくれたトラン監督。美しい風景描写の中で、鬱積された哀しみをダイナミックにエロティカルに、そして繊細に紡いだトラン監督の美意識は、日本人の奥底にある喪失感、そしてノスタルジックそのものかもしれない。そんな監督の美意識にすっぽりとはまれる今年の冬は、最高に幸せで、荘厳な気持ちに浸れることだろう。
                                                         (Walkerplus)


こんなふうに紹介されたら、
キャストのファンのみならず、
誰もが映画を観たくなるのではないかと思いました。
素敵な記事だと思います。

映画を観て、日本人が外国人にあたえるイメージってなんだろう?と
答えを探したくもなりますよね。

>重要なのは皮膚感がどのように映し出されるのかということ。
>例えば、登場人物の皮膚のつやのために、洋服の色が考えられ、
>必要な光の色も決定づけられていくんです。

ベッドシーンでは松山さんや凛子さんがほぼ素顔で、
肌の肌理なんかも日常というか、とてもリアルだったんですよね。
あの皮膚感は官能的でした。
さりながら、私はバストトップなのが不自然に映ったなあ。
おっぱいのひとつやふたつ映ったからと言って、何かが壊れるんだろうか?
やっぱりそこはリアルに行ってほしかったなあと思いますが、
異端的発言なのかもしれません。

>彼はこの作品の中で自分の身を任せながら相手が要求するものを表現していく。
>それ以上のことをしないというのは素晴らしかった

俳優さんって、きっと欲が出ると思うんですが、
松山さんはいつも監督の駒として、というスタンスだから、
監督の思うがまま。
監督が非力だと、松山さんまでそう見えてしまいかねない(われ等経験済み^^)
トラン監督が何を望んでいるか、を十二分に知り尽くしていればこそでしょうね。




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4 コメント

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カンナさんへ ()
2010-12-18 10:45:33
教えてくださって、ありがとうございます。

いきなり、足が現れた時は、
それでわかれって、わかるけど・・
たしかに怖かったです^^
直子の絶叫も、映画のトーンとは違ってて、
びっくりしましたが。
なにより直子があれで20歳というのがホラー、とか(すみません)

あの小説、たしかにさかりのついた犬みたいな年齢を思わせる部分もありますね。
永沢とナンパしまくりとか(笑)
ふたりの村上氏の小説は、時に官能的すぎ、
あわあわしますが、
非日常ってことでOKかもです。
ハルキストという女性が女史って感じで、あの映画化は失敗って言われてたけれど、
あの作品を忠実に再現したら、あの女史っぽいひとは赤面せずに全部観れたかなあと^^

トラン監督はこだわりがありますもんね。
あの妥協のなさ、嫌いな人は嫌いなんでしょうか。
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樹さんへ (カンナ)
2010-12-16 19:41:35
こんばんは。

>ホラーは手厳しいなあ、どのあたり?

直子が絶叫するところとか、自殺して足が映った場面とか、
直子のメンヘルなところが怖かったんですって・・・(苦笑)
それだけ抽出したら、ホラーに見えなくもない・・・ですかね?(笑)

ノル森は、ワタナベの大学時代の恋愛経験を通して
喪失と再生を描いたという物語でしょ?
直子と緑が卑猥な会話をするらしいですが、それって
男性目線の想像?だなぁと思いました。
20歳くらいの男性って、さかりのついた犬みたいな年頃・・・・(失礼!)

トラン監督の作風は好き嫌い分かれるようですね。




返信する
カンナさんへ ()
2010-12-15 23:50:39
こんばんは。

お礼を言っていただいて恐縮です。
でも、この記事を読まれた方はみんな、映画を観たくなりますよね。

>ただ、凛子さんが20歳の直子に見えなくて、評判はイマイチでした。と言うか、
>辛口が多かったです。ホラーに見えたとか(そうなんですか?汗;)
>それから、全く原作を読んでない人には意味不明とか(困ったなぁ><)

さすがにワタナベやミドリと同世代には見えなかったですわ(汗)
ワタナベはミドリと同世代に見えたんですから、
松山さん恐るべしですよ。21歳くらいですよね、希子さん。
ホラーは手厳しいなあ、どのあたり?
たしかに原作を読んでいないと、なんで直子がワタナベによって
救われなかったかが、納得しづらいかなあと思います。
原作ありき、が了解事項的な映画かも。
あれをどう映像化したのか、というかですね。

>原作本もベストセラーになったと言えども、賛否両論だったらしいですね。

それまでの作品とカラーが違いますもんね。
あれが村上春樹、という位置づけではないでしょう、ハルキストも。
私も死人の大行進という印象があって、途中から読めませんでした。
ひとをそんなに殺さないと書けないってどういうこと?とか思っちゃって。

>松山君のスタンスは変わってないようですね

謙虚というか、そうあれるのが素晴らしいですね。
だけど、監督がぶれるとそのまま影響されてしまいますよね。

>完璧な映画って無いと思ってますけど、作品の良し悪しは、
>やっぱり監督やスタッフのセンス、力量がモノを言うと思いますね。

同感です。失敗と素人がわかっているのに、
気づかず?無視して?
続編を口にする監督、そういう方には閉口しますね。
俳優さんがかわいそうです。








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Unknown (カンナ)
2010-12-14 21:33:44
こんばんは。
素敵な記事を紹介してくださって有難うございます。

ワタナベ役の松山君の演技は、ヴェネチアでも評価が高かったのですね?
良かった!嬉しいです。

>「松山ケンイチは、すごく柔らかい、しなやかな俳優さん。
>彼はこの作品の中で自分の身を任せながら相手が要求するものを表現していく。
>それ以上のことをしないというのは素晴らしかった」。

このコメントも、ヴェネチア映画祭のディレクターが仰ったのでしょうか?
2chのノル森スレを見たのですが、原作を読んでいる人も
松山君に対する感想は概ね好評でしたね(^^)
ただ、凛子さんが20歳の直子に見えなくて、評判はイマイチでした。と言うか、
辛口が多かったです。ホラーに見えたとか(そうなんですか?汗;)
それから、全く原作を読んでない人には意味不明とか(困ったなぁ><)
ヒットして欲しいけど・・・う~ん・・・。

原作本もベストセラーになったと言えども、賛否両論だったらしいですね。
けど、松山君のワタナベを観に行こうと思っています。
(でも年末に向けて忙しくなるので、鑑賞は年明けになるかな?)

>俳優さんって、きっと欲が出ると思うんですが、
>松山さんはいつも監督の駒として、というスタンスだから、

ずっと前に読んだピクトアップの記事で、
松山君の「作品が最高のものになるために、わいの力が注げればそれでいい」
というコメントが印象に残ってます。
自分が、自分がと、出しゃばろうとしない人なんだなぁ・・・
と好印象を持ちました。
松山君のスタンスは変わってないようですね(^^)

完璧な映画って無いと思ってますけど、作品の良し悪しは、
やっぱり監督やスタッフのセンス、力量がモノを言うと思いますね。




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