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「1Q84」、村上春樹氏の新作、68万部に&執筆中のインタ①

2009-05-31 | 松山ケンイチ

村上春樹氏が内容を明かさずに出版した新作が凄まじい売れ行きなのだそうです。
去年、執筆中の村上氏のインタビューがとても興味深いので、ご紹介します。

「1Q84」、
村上春樹氏の新作、68万部に 
          &執筆中のインタ ①


村上春樹氏インタビュー 僕にとっての<世界文学>そして<世界>
 作家、村上春樹さんの新作長編「1Q84」(全2巻)が
発売日の29日、4刷が決まり、発行部数は2巻計68万部となった。
早期のミリオンセラー達成は確実とみられ、発行元の新潮社は
「社会現象になるかもしれない」としている。

 首都圏と関西地区で先行発売した27、28両日だけで実売部数は
推計約10万部。関係者は「前例のない売れ方で、信じられない数字」と驚く。 
                            (時事通信)

村上春樹氏インタビュー 
僕にとっての<世界文学>そして<世界>


『海辺のカフカ』(02年)以来となる大長編小説を執筆中という村上さん。
多忙な時間を割いて、最近翻訳した名作への思いから出版界の古典新訳ブーム、
「9・11」後の時代認識に至るまで幅広く、熱く語った。
 ◇物語の骨格、文章のリズム 名作4作の翻訳通じ学ぶ

 ■翻訳の限度は50年

村上さんは創作と並行してアメリカ文学の翻訳、紹介に積極的に取り組んできた。
そうした中で、「これだけはやりたいと思っていた」重要な作品が、
サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、
フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』、
チャンドラー『ロング・グッドバイ』(以下では『L・G』)、
カポーティ『ティファニーで朝食を』の四つの長編小説。
これらを03年から今年にかけて次々に新訳・刊行した。
いずれも各作家の代表作というだけでなく、高校時代以来、
何度も繰り返し読んできた「個人的に好きな」作品でもある。

 「フィッツジェラルドはずっと訳してきたけど、それ以外は同時代的なものを
中心にやってきた」村上さんが、「古典」に挑むようになった理由は三つある。
一つは「だんだん翻訳の手ごたえがつかめてきて、そろそろ僕の腕でも
できるんじゃないか」と考えたこと。次に「古い翻訳がちょうど『賞味期限切れ』
の時期に来た」タイミング。
そして「同時代の新しい作品の翻訳は若い翻訳者がやるべきだ」という考えからだ。


 二つ目の理由については、日本語の文体そのものの変化により、
「限度は50年」と話す。今は1960年代前後の文学全集ブーム時に
盛んに訳された作品が、次々と「期限切れ」を迎えているという。

 4作に共通する要素として、村上さんは「都会が舞台になっている」ことを
挙げる。確かに『キャッチャー』『ギャツビー』『ティファニー』はニューヨーク、
『L・G』はロサンゼルスが舞台だ。「結果的に都会小説みたいな文体の作品が
僕の翻訳の中心になっていますね」

 この「文体」こそ、村上さんが4作それぞれに魅力を感じ、探究してやまない
ところだ。中でも「チャンドラーの文体にすごくひかれる」と言葉に熱を込めた。
「あの人の文体は何か特別なものを持っている。何が特別なのか昔から
疑問だったんだけど、訳してみてもまだ分からないですね」

 その文体の秘密に対する強い関心は、『L・G』に長文の「あとがき」を
執筆したところにも表れている。そこで村上さんは、〈一種のブラックボックスと
して設定〉された「自我」の扱いに、〈チャンドラーの創造的な部分〉を見ている。

 一方、フィッツジェラルドとカポーティの文体については「とにかくうまい、
きれい、リズムがいい、流れる。これに尽きる」と話した。
とりわけフィッツジェラルドからは「文章に対する志の高さ」を得たという。
「だから自分の書く小説の文章もまだ直せると思う。それはフィッツジェラルドの
文章が僕にとってスタンダードになっているから」

 また、この二人の文章は「僕が書くタイプの文章ではない」と、自らの作品の
文体も分析してくれた。「そんなに流麗な文章は僕は書かない。ただ、そういう
文章の艶(つや)とかリズムとか流れを、僕はもう少しシンプルな言葉で
出したいと思っている」           (2008/05/12)(毎日新聞)


「1Q84」、さっそくお求めになりましたか?
私はまだです。
でも、とても興味深い内容のようですね。
カルトな教団が出てくると、どこかでちらりと読みました。
あの教団のことがあって、村上さんが虚構だけでなく
リアルな世界に関わってこられたとき、
いつか彼の小説にフィードバックされたものが求められる
だろうし、また、彼も書こうと思われるだろうなと
思っていました。個人的な感慨ですが、あくまで。

フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』は、
「ノルウェイの森」のなかでも、永沢さんとワタナベが
出会うきっかけになった小説ですよね。
ずいぶん前に読んで忘れちゃったので、
副読本として読まないとなあって思っているんですけど。

「古い翻訳がちょうど『賞味期限切れ』・・・
なるほどなあと思いました。
その小説のモチーフとかプロットは面白くても、
擦り切れた日本語と風化した文体で書かれたのでは、
本来の小説の面白さが減じてしまうのでしょう。
4作、取り上げていらっしゃる中で、
「ライ麦畑でつかまえて」しか、
新旧(新とは村上春樹氏訳)を読み比べたことがないのですが、
たしかに圧倒的差異を感じます。
村上氏の翻訳のほうが圧倒的にリアルな感じがするのです。
それぞれの作家の原書の味わいなど、知るすべもない私ですが、
とても興味深くインタビューを読みました。
まだ続きがありますので、後日ご紹介しましょう。



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6 コメント

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グレート・ギャツビー (may)
2009-05-31 12:16:06
ロバートレットフォードが主演した「華麗なるギャツビー」を見たことあるけど…(いやもしかしたら本も読んだことあるようなないような…押し入れにあったりして?)

ノルウェイの森を読むと出てくるのを読むたびにふと映画を思い出したりして…(笑)
返信する
mayさんへ ()
2009-05-31 13:56:39
こんにちは。

そうですね、レッドフォードの映画があまりに有名で、
今さら原作・・みたいな気がするし、すっかり忘れてしまったクラシック、
はて・・と読むべきかどうか、悩みます笑
でも、永沢とワタナベという、まったく別個の人間を結びつけた本、
今読み返したら何かが見えるかなと思ったりもします。
単なる春樹さんの愛読書で・・だったら、怒りますとも(なわけない)
返信する
お久しぶりです (ホワイトネイル)
2009-05-31 21:42:15
この間は遊びに来てくださって
ありがとうございました!

「1Q84」買おうかどうしようか迷ってたら
あっというまに売り切れてました。
単行本が完売ってすごいですよね。

村上さんの翻訳作品は読んだことないんです。「ライ麦畑」は大学時代の講義で読まされて、ピンとこなかったけど、新約で読むと
印象変わりそうですね。

サリンジャーは「ナインストーリーズ」
っていう短編集が大好きなんですけど、
彼の視点も世間とか大人の常識みたいなものに疑問を感じていたり、子どもの率直さを
なにより愛していたりとなんだか
松山くんを思わせることに、今気づきました。

新約、読んでみようかな。
インタビューの続き、楽しみにしてます。
返信する
読みました~。 (SS)
2009-06-01 16:29:04
お久しぶりです。
春樹の波から帰ってきました。
すなわち、読了いたしました。

非常に、非常に、良かったです。
賛否両論あるでしょうが、それはすぐれた作品にとっては当たり前の宿命でしょう。

私にとっては、本当に素晴らしい本でした。
今、読まれるべき本だと思いました。

樹さんが、
>村上氏の翻訳のほうが圧倒的にリアルな感じがするのです。
と書かれていますが、本当ですね。
私はこの新刊でもそういうことを感じました。
だから、今読むべきなのだと思いました。
そして、アンダーグラウンドを経た春樹さんだからこそ、リアリティをもってその本質がより生の形で伝えられているように感じました。
樹さんの
>あの教団のことがあって、村上さんが虚構だけでなく
リアルな世界に関わってこられたとき、
いつか彼の小説にフィードバックされたものが求められる
だろうし、また、彼も書こうと思われるだろうなと
思っていました。
という予感は的中です。きっとそういう風に感じられたのならば、読むとますます納得されると思います。
ファンタジックな部分はあるにせよ、今までにはないリアルなかたちで、ひとの弱さとそれが生まれてしまう社会のシステムと、悲しみが描かれているように感じました。

ああ、まだ現実世界に戻ってこれていない感じです。樹さん、読まれたら是非感想の記事アップしてくださいね!!



返信する
ホワイトネイルさんへ ()
2009-06-01 20:54:21
こんばんは、ホワイトネイルさん。

売り切れていましたか?
私はSSさんの熱い想いを聞いて、速攻で買ってきました。
時間とれないだろうなとは思うんだけど、いや、
手にしとかなきゃ、の思いが勝ってしまいました。
なんかもう、ドキドキしてきました。

サリンジャー、大好きなんです。
春樹さんじゃないひとの訳で、少女時代に読んだんですが、
ホールデンがやらかすことにいちいち、泣いていました。
大人になって、ツラの皮厚くなっているんでしょうけど、
春樹さんにやられました。そりゃそうです、春樹さんにかなうわけない。

春樹さんは賞味期限の切れた小説を翻訳しなおすとともに、
優れた英米の作家を紹介してくださいますよね。
レイモンド・カーヴァーとの出会いは最高でした。
春樹さんの名訳だったからこそかもしれません。
そう思うと、春樹さんへのお礼は小説だけじゃなくて、
翻訳もかなりの部分を占めそうです。

インタビューの続き、お待ちくださいね。
返信する
SSさんへ ()
2009-06-01 21:05:06
こんばんは、SSさん。

SSさんのこのコメント読んで、帰りに本屋さんに寄って、
買ってきてしまいました。
やばいです、時間とれないんだけど、手元に置かなきゃって、
喉の渇きみたいなものにようやく気付いたみたいな気持ちになって、
あわてました。
なかったらどうしようって思いました。
手にしたら、
扉のむこうの、『ここは見世物の世界・・』に
ないてしまいました。
何故だか分からないんだけど、
春樹さんの小説のなかにいるときの、圧倒的な精神の共時性というか、
それをもう震えるくらいに予感したからです。
小説=フィクションではなく、
精神的リアルですよね。

題名を聞いたとき、ジョージ・オーウェルの
「1984」
(ボウイの曲が頭の中を流れる)を
思ったんですけど、
ビッグ・ブラザーの記述を目次に観て、
どきりとしました。
テレスクリーンを思い出しました。

てなことを言ってるまえに読めよ、ですね。
SSさん、2日で読んだんですね。
SSさんちに行ったら、数十ページって書かれていたので、
そうか、と思っていたんだけど、
あーーーさすが、ハルキスト!!!
無理ですけど、気持ちはわかります!!
あー、やばいです、
非常にやばいんですけど、手を出しそうです。
せめて、
類L1本書いてからにします(笑)
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