月刊ガバナンス平成19年2月号
特集 自治体・信頼性回復への道から
浅野史郎
「自治体不祥事と首長の姿勢」より抜粋
《議員、業界、職員との関係》
『議員選挙の際に、候補者として有権者に売り込むのは、行政とのパイプの太さである。有権者も、その選挙区のために行政がどれだけ要望を聞いてもらえるかの力量で候補者を選ぼうという意識がある。であるとすれば、議員になったあかつきには、その議員は行政に取り入って、選挙区の利益にかなう働きをしようとすることになる。その役割を果たすためには、与党、つまり首長のお友達になる以外方法はないと思い込むのも当然かもしれない。そういう役割認識の議員に、首長を厳しくチェックして、首長に嫌われるリスクを冒す勇気があるとは思えない。
首長のほうも、議会に厳しくチェックされるのは歓迎しないから、現職が再選を狙う時にはその選挙において、議員を味方につけるに越したことはないと考える。そのほうが、選挙戦も有利に戦えると踏んで、議員取り込み工作を計ることになる。
こうやって、首長と議会との蜜月が簡単にできてしまう。しかし、これを蜜月の甘い関係と考えるのは、それこそ甘いと言うべきものである。
首長や行政をチェックするのは、議会だけではない。監査にも、外部監査というやり方が導入されている。市民オンブズマンの挙げた実績も顕著である。内部告発から不祥事が明らかになる例が増加している。そういった中で、議会がチェック機関として何の役割も果たしていないことが明らかになり、「首長と議会は甘い関係」ということ自体がスキャンダルになりかねない。
だとすれば、首長としても、議会との甘い関係を構築することは、両刃の刃と自覚すべきである。むしろ、議会との関係がいい意味での緊張関係になっていることは、不祥事を未然に防ぐ意味で、自らの身を守ることにつながる。さらに言えば、議会の役割は首長のチェック機関ということが第一番ではなくて、唯一の立法機関であることを今こそ認識すべきである。議員たるもの、まずは政策立案能力を磨くこと。それが有権者への最大の売り込み材料になるようになって、地方議会は初めてその存在意義を示すことができる。』
特集 自治体・信頼性回復への道から
浅野史郎
「自治体不祥事と首長の姿勢」より抜粋
《議員、業界、職員との関係》
『議員選挙の際に、候補者として有権者に売り込むのは、行政とのパイプの太さである。有権者も、その選挙区のために行政がどれだけ要望を聞いてもらえるかの力量で候補者を選ぼうという意識がある。であるとすれば、議員になったあかつきには、その議員は行政に取り入って、選挙区の利益にかなう働きをしようとすることになる。その役割を果たすためには、与党、つまり首長のお友達になる以外方法はないと思い込むのも当然かもしれない。そういう役割認識の議員に、首長を厳しくチェックして、首長に嫌われるリスクを冒す勇気があるとは思えない。
首長のほうも、議会に厳しくチェックされるのは歓迎しないから、現職が再選を狙う時にはその選挙において、議員を味方につけるに越したことはないと考える。そのほうが、選挙戦も有利に戦えると踏んで、議員取り込み工作を計ることになる。
こうやって、首長と議会との蜜月が簡単にできてしまう。しかし、これを蜜月の甘い関係と考えるのは、それこそ甘いと言うべきものである。
首長や行政をチェックするのは、議会だけではない。監査にも、外部監査というやり方が導入されている。市民オンブズマンの挙げた実績も顕著である。内部告発から不祥事が明らかになる例が増加している。そういった中で、議会がチェック機関として何の役割も果たしていないことが明らかになり、「首長と議会は甘い関係」ということ自体がスキャンダルになりかねない。
だとすれば、首長としても、議会との甘い関係を構築することは、両刃の刃と自覚すべきである。むしろ、議会との関係がいい意味での緊張関係になっていることは、不祥事を未然に防ぐ意味で、自らの身を守ることにつながる。さらに言えば、議会の役割は首長のチェック機関ということが第一番ではなくて、唯一の立法機関であることを今こそ認識すべきである。議員たるもの、まずは政策立案能力を磨くこと。それが有権者への最大の売り込み材料になるようになって、地方議会は初めてその存在意義を示すことができる。』
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