図書館で本を借りると、何ヶ月も待たされる(とくに人気の本は)ので、借りる時には、はて?なんでこんな本借りたんかな?と思う時がある。
この岩波新書もそうだった。
見た目からして堅そう!新書だもんね。だけど、中身は違った!
まず出たしが著者の告白文から始まる。
両親の不仲で地獄のような環境で育ったとある。まるで、小説かエッセイのような書き出し。一気に、「何?何?どうしたんですか?」と引き込まれた。
幼い著者は部屋にこもって本にのめり込んだと書いてある。やがて翻訳者を目指し勉強するようになり、そこで出会った先生に読書会を勧められて、その「幸福」を手に入れたのだ。
めくるめく読書会の楽しさ。仲間とのやり取りにより解釈が深まる面白さ、読めそうもない古典の大作も読めてしまうミラクルそれらがズンズン伝わってくる。私も読書会に参加したい、今すぐ参加したい。こんなとこで自分だけのつたないくだらない感想語ってる場合じゃない!と思った。
それはさておき、本書には「文学を語ることは、人生を語ること」という言葉が何度も出てくる。
普段、浅い会話はご近所さんとかとよくするけど、もっと突っ込んだ深いつまり人生について語り合える場所(相手も)なんてそうそうない。でも本当はそれを語り合いたい。それを実現してくれるのが読書会なのだと言う。
困った時、戸惑った時、どのように考え対処していったらいいのか?それが文学の中にはたくさんたくさん詰まっているのだ。
また、読書会を中学生高校生を相手にやろうとして、意見が出てこず、失敗した話も面白かった。本を読んである程度ものがいえるには、人生経験が比例するともある。
さて、向井さんが紹介してくれる推し本は、いっぱいあるが、(向井さんは翻訳家なので海外文学専門か)まずは最初の読書会で出会った「チボー家の人々」。全13巻もあるので大変だ。でも、のめり込むそうである。それから、ヘミングウェイ、カミュ「ペスト」、「レ・ミゼラブル」、サマセットモーム、「失われた時を求めて」(読書会で2年半かけて読んだ全13巻の記録が付録についている)他たくさんたくさん。nhk「100分で名著」でも取り上げられてるけど、見たら忘れてしまう。やはり読まなきゃ。そして、向井さん翻訳の「プリズン・ブック・クラブ」もとても読みたくなった。
あと、向井さんは「泣ける本」という言い方が嫌いと言う。「泣くつもりなど全くなくても、人はいつのまにか泣いてしまうのである。それを「泣ける」とはなにごとか。(略)見返りがなければ割に合わない、といういじましささえ感じられる」と手厳しい。あと、「思い出作り」という言葉もダメという。思い出を作るために旅をしたり遊んだりするのは本末転倒と喝破する。これ分かるなあ!私は最近までよく聞いた「楽しめる」と言う感想が嫌い。この映画、楽しめました♪みたいな言い方。あんた何様?どんな上から目線やねん。普通に「楽しかった」では、あかんのか?と思う。