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小説「少女を埋める」

2022-05-18 23:49:00 | 日記
結局、私が図書館で予約する本って、だいたいは女性差別の問題がテーマなんだな。

ちょっと怖いタイトルの桜庭一樹著「少女を埋める」も
男性社会からのいわれなき侮蔑にいつも正論を命綱に生き延びてきた。
理不尽で旧弊的な価値観に抗って生きる者に寄り添う、勇気と希望の書。と帯に紹介されている。
(少女を、の次にうめるを変換したら産めるが最初に出てきたので、やっぱり怖いな、と思った。)

これは自伝的小説らしく、東京暮らしの作者が父危篤の知らせを母の着信とショートメールで知り、故郷鳥取で父を弔うまでを日記風に時系列を追って淡々と綴ったものである。
なので
これはそんなに拳を挙げて女性たちよ!声を上げよう!と叫んでるような本とは最初は感じさせない。

まず、母親がちょっと変わった人である。
娘に対する態度が、何気に変なのだ。本当はすごく変なのに、娘はあまりそれに反応しないようにしているかのようだ。多分、慣れだろう。その慣れが怖いってことか。
そういえば、私の母も変だった。昔、台所で突然大声で泣き出したり、2週間も口を聞かないことがあったりした。私が大人になっても年に数回はそんなことがあった。今は、ボケが入ってきて、忘れることができるから、怒りも持続しなくなってきたか?

いずれにしても小説の母の厄介さも私の母の厄介さも、男性社会からのいわれなき侮蔑から来てる症状なのではないか?ということだと思う。

そのことを戦争を経験した祖母の時代にまでさかのぼって丁寧に物語っている。
長い長いことかかって少しずつ女性たちが立ち上がり始めた。
男たちが考えた共同体を維持するために理不尽に耐えてきた女性、少数弱者。

そんな私たちにとって、淡々と丁寧に、そして力強く背中を押してくれる本だ。

女性、弱者という守られる立場を心地よさも描かれるのは、著者らしい正直さなのかも。