新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

カブトムシ始末記

2020年08月04日 | 政治・経済・労働組合
◆カブトムシを食べたのはだれだ
 8月2日、日曜、農園に草刈りに行き、カブトムシを引き取りにいった。

 カブトムシはメスよりオスの方が羽化が早いのだそうだ。初めて知った。定数の8ペア以外、もうワンペア作ってくれることになったが、衣装ケースの繁殖箱にはオスが一匹足りない。元の繁殖場(肥料置き場)を2、30分ほど掘り返し回ったが、オスは1匹だけ、後はメスしか見つからなかった。オスはもうほとんどが巣立ってしまったようだ。

 7月はじめ、組合執行委員の知り合いのオオクワガタブリーダーさんの情報として、「今年のカブトムシ(の羽化)は遅い。梅雨明け頃だろう」と聞いていた。実際の梅雨明けは7月31日、先週の金曜だったが、例年より遅すぎた。1週間前ならちょうどよいタイミングだったのかもしれない。

 パックに入れて小屋の外の棚に置いていたカブトムシのうち、オスだけが何者かに捕食され、全滅したという。メスは大丈夫だった。

 「イノシシですかね?」
 
 と、私は聞いた。イノシシはカブトムシの幼虫も成虫も食べると読んだ覚えがあった。
 
 「うーん。わからへん」

 園長さんはクビをかしげる。

 カブトムシの成虫の天敵は、ハシブトガラス、タヌキ、イノシシ、フクロウだという。
 カブトムシを仕分けていると、イノシシ除けに飼っている名誉園長の犬子がカブトムシにご執心で、くんくんと鼻を近づけてくる。

 「もしかして、きみか?」

 と、聞いてみたが、もちろん返事はない。

 カブトムシのオスの長い角は、長ければ長いほどオス同士の闘争では有利になるが、天敵に対して目立ちやすい。オスは動きも活発である。メスよりもオスが、小さいオスより大きなオスの方が捕食圧が高まると研究サイトには書いてある。タヌキにカブトムシのオスが狙われやすいのは、イノシシやタヌキの視力が低いからだともいう。強いオスは樹液の場所の滞在時間も長くなるから、狙われる確率も高くなる。カラスの視力はヒトの5倍だから、オスだけ狙うというのは考えにくい。カラスなら根こそぎ食い散らかしてしまうのではないか。タヌキはイヌ科で、やはり視力はよくない。まあ、犯人が犬子だとしても責める気にはなれない。全ては自然の摂理である。


 ◆三里塚戦士の敗北
 カブトムシの仕分けが終わり、草刈りに取りかかる。朝から草刈りスタートで、仕事が片付くまでは、OPのおじいちゃんに連れられてきた小さなお客さんには虫取りや魚取りや水鉄砲で遊んでいてもらうつもりだった。しかし、おうちに帰る時間が早まり、カブトムシの仕分けを先行したのである。

 2年前、草刈りに来たときは9月も半ばだった。そして農園でも平坦な場所だった。梅雨明け直後、日の光を浴びるのも久しぶりなのに、いきなり快晴で33度超えの真夏日である。泊まりがけか始発スタートで、7時、遅くとも8時には始めるべきだった。10時前到着では遅すぎた。草刈りを始めたのは11時で、すでに日は高い。カブトムシ探しであちこち掘り返して、体力も消耗している。

 今回の草刈りはハードだった。雑草は大人の背丈ほどにも伸びていた。今回は平地ではなく、斜面になった3~5畝(せ)ほどのエリアを3人がかりで取り掛かる(予定より1人減った)。足場の悪い斜面に踏ん張り続けながら、重量もありカッターが高速回転する草刈り機を操るのは、至難の技だった。リモコンの草刈り機の宣伝動画が、斜面での操作性を強調していた理由がよくわかる。これはベテランでも辛いはずだ。根元からなぎ倒すために体の重心を下げたら(これは失敗だった)、バランスが崩れ、最後は地面にへたりこんでしまい、再び立ち上がるのに骨が折れた。草刈り機は右から左に回したときに草を薙ぐ。このコツを思い出した頃には体力のほとんどを使い切ってきた。

 おそらく時間にして20分足らず、ノルマを1/3以上残したところで、完全に息があがり、ゼエゼエと息を荒げながらその場に座り込んでしまった。熱中症寸前である。副組合長(大)が塩クエン酸飴をくれ、凍らせたペットボトルで首を冷やしてくれ、副組合長(小)がお茶とポカリを持ってきてくれた。1リットルほど水分を補給したところで、ようやく人心地ついた。

 落ち着いたところで、ベテランの園長さんの草刈り姿を見る。古希を前にしながら体幹に一切ブレがない。副組合長(大)も農家の出でスポーツマンだから安定感がある。二人ともしっかり斜面に足を踏み込み、肩や腕ではなく、腰を回転軸にしながら草刈り機を回している。非常に美しいフォームである。あの体勢なら疲労度も少なく効率的だ。やはり正しい姿勢をキープすることは大切である。

 「しかし情けない。おれはもっと出来る男だと思っていたよ」

 私はそう嘆いた。

 「そんなこといわんといてください。僕なんて3分でダウンしました」

 副組合長(小)がポカリのおかわりを渡しながら言った。

 「きみは農作業も、農機具を使うのも初めてだったろう。仕方ないよ。おれは定年後は農業で生きていくつもりなのになあ」

 そういう私も三里塚で援農をやったくらいで、それも何十年も前の話だ。副組合長(小)には、小さなお客さんのお相手とカブトムシの仕分けだけで、草刈りは軽く体験してもらうだけのつもりだった。

 病気をしてからは疲れやすくなり、疲れるから出かけなくなるの悪循環で、血糖値も血圧もなかなか下がらずに来た。コロナ禍で、さらに出歩くこともなくなった。7月半ばから新しい薬の処方が始まり、1日1万歩をノルマにウォーキングも再開した。

 今は強い降血糖剤を服用しているから、低血糖による電池切れかもしれない。朝食を摂ったのは6時過ぎで、目玉焼にトマトとおにぎり一個の糖尿病食である。これでは真夏の屋外労働は保たない。運動前には補食が必要だと痛感した。


◆大阪に帰る
 地元の副組合長(大)は、父子で来てくれた。息子さんは草刈りまで手伝わされ、すっかりバテてしまい、食欲はないという。その場で別れ、園長さんと副組合長(小)と私で、ガテン系御用達のガッツリ飯の中華に行く。ラーメンセットは麺も飯物も大盛りで、二人前はある。普段ならこの店の定食を完食するのは厳しいのだが、この日はおいしく平らげた。久しぶりに肉体労働したおかげだろう。

 この頃には私も復活して、園長さんと今後の計画について楽しく話し合った。秋の収穫祭での再会を約して、野菜ときゃらぶきをおみやげに大阪への帰路についた。

 途中、郵便局の休日窓口に寄り、ゆうパックで東京支部にカブトムシを発送した。生体が送れるのはゆうパックだけである。送り方については、いろいろ調べて準備を重ねた。送り状にも「カブトムシ」と正直に書く。しかしゆうパックも無条件でOKしているというわけではない。窓口では、必ずしも生きて到着する保証はないことを説明を受け、支払時に戻ってきた送り状の控えには、その旨を「説明済み」と記入されていた。

 大阪に到着し、倉庫の隅の棚にカブトムシの飼育セットを置いた。会社(総務)と物流の仲間には、倉庫の一時使用の許可を得てある。カブトムシなんて小さな頃以来見たことがないから、大人たちも好意的で興味津々だった。

 運転手をしてくれた副組合長(小)と飲みに行くつもりだったが、さすがに疲れた。泥まみれの洗濯物も持って帰らねばならない。お疲れ様会は後日にして帰宅した。風呂を浴び、ざく切りのトマトをオリーブオイルとレモンでかぶりつき、みょうがで冷や奴を流し込み、きゃらぶきで地酒を傾けた。締めはキュウリとミョウガとハムで素麺。至福のひとときであった。

◆影武者捜し
 朝、会社に出て、倉庫までカブトムシを見に行った。なんと、オス2匹が死亡していた。片方は仰向けになり、片方はうつぶせになったまま動かない。これでオスの生き残りは2匹になってしまった。オスはおつとめを果たすと死んでしまうというのは本当だったようだ。メスは土の中に潜り込んでいる。

 カブトムシの到着を小さな人たちが楽しみにしてくれている。近所のペットショップに走ったが、売り切れで今年はもう再入荷の見込みはないという。ネットで探すと、すでに出荷が終わっているお店ばかりだったが、まだ取り扱っている店もあった。組合活動で有休にしてしまえば、日帰りで行ける距離だったが、プロの梱包や発送の仕方を知るために通販で3ペア注文してみた。1ペア多いが、残りのカブトムシも死ぬ可能性があるし、影武者も死着の可能性がある。
 東京から無事到着したという連絡が入った。心より安堵した。

 火曜朝、カブトムシを見に行く。生き残りのオスは2匹とも元気だった。一安心し、ゼリーを補給し、水で湿らせて絞ったペーパータオルを入れた。カブトムシが寄ってくる。

 部屋に戻ってすぐに通販でオーダーした影武者のカブトムシが届いた。時計はまだ10時になっていない。

◆空気穴とコールドスリープ
 プロの昆虫業者の梱包テクニックを見たかったのだが、驚いたことに段ボールに空気穴がない。蓋に少し余裕があるから、完全密閉というわけでもないのだが。蓋を開けると、丸めた新聞紙が詰めてある。水の入ったペットボトルも新聞紙にくるまれていた。出荷時には凍らせてあったのだろう。さらに驚いたのは、パック容器には空気穴が空いていないことだった。しかしカブトムシは元気にごそごそ動いている。ヒトのサイズでいえば、カブトムシ1匹につき4畳半の部屋くらいの容量はあるから、1日くらいなら酸欠にならないのだろう。オーダーしたのは昨日10時前で、仮に受付すぐ出荷したとしても、ほぼ24時間経過である。

 しかし狭い場所でいつまでも気の毒だ。カブトムシを移すために倉庫に移動した。朝、湿らせたペーパータオルに寄ってきた1匹が、そのままの体勢で力尽きていた。末期の水になってしまったのだろうか。まだ1時間も経っていない。

 今回の教訓を早速活かす。組合事務所から予備の飼育箱を持ってきて、オスとメスは別にした。

 通販で受け取ったカブトムシは元気そのものだった。体も大きい。カブトムシの大きさは、幼虫のときの栄養状態の違いで決まる。こちらは肥料の牛糞から掘り起こしてきた天然物だから、食べてきたものの差だろう。生死の条件を分けたのは、環境だろうか。通販のカブトムシも、東京に送ったカブトムシも、保冷剤をバッチリ効かせたコールドスリープ状態がよかったのかもしれない。倉庫にエアコンはない。氷を探しにいった。

 食堂の冷蔵庫の製氷庫には、冷蔵庫は2台あるが、アイストレー3個分しか氷ができていない。全部使ったら来客があったとき困る。百均で保冷剤を買い、スーパーで凍らせたペットボトルをまとめ買いし、ついでに無料の氷をもらってきた。凍ったペットボトルと氷を入れたビニール袋を新聞でくるみ、飼育箱の側に置き、新聞紙でテントをかけて、クーラーがわりにした。夕方には製氷庫の保冷剤も冷えて固まっているだろう。お父さん方が持ち帰るときは、保冷剤を入れて運んでもらうつもりである。夕方になっても、まだペットボトルは溶けきっておらず、有効活用してくれたお父さんもいたようだ。今はとにかくカブトムシが無事に小さなお客さんたちのところに到着するのを祈るのみである。

 しかしデリケートで環境の変化に弱い成虫を無事送り届けることは大変だ。来年は冬開催にして、幼虫の状態で持ち帰ることにしようかと思う。






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