新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

ホムラーの願い 『ほむら☆たむら』と『ゆるキャン△』

2019年08月12日 | まどマギ・マギレコ
私は、『魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』を、劇場に31回観に行った。自分にはせめてほむらが時間を巻き戻した回数だけ観に行く義務があるとさえ思っていた。全然足りない。最低でも144回は必要だった。144回の根拠は、まどまぎスピンオフのコメディ外伝『魔法少女ほむら☆たむら』である。盾が壊れ、魔法アイテムサポートセンターに電話をかけたほむらは、最初はいつものようにクールに「暁美ほむら14歳」と名乗るが、コールセンターの人にドヤされ、「暁美ほむら26さい…です」と涙目で言い直している。

 最初、あfろさんの『ゆるキャン△』のなでしことリンは、同時期に連載中だったこの『ほむら☆たむら』のまどかとほむら(たむら)のように見えて仕方なかった。本作のまどかは、時間軸によってうっかりさんだったり、ドSだったりするが、ほむらはどの時間軸でも常に「たむらちゃん」と間違えられ、それが呼び名として定着してしまう。不憫なほむら(たむら)。

 『ほむ☆たむ』には、「犬とほむらの時間軸」の犬、「マギア☆ライダーの時間軸』のバイクと、『ゆるキャン△』につながるモチーフも出てくる。特に、ほむらが子犬を拾って育てる物語は、ほむらがまどか以外の「他者」に心を許し、存在を受け入れるという、誰も知らないほむらの物語だった。まどマギスピンオフ全作品のうち、私がいちばん好きな作品だ。

 『ゆるキャン』の野クル(のクル 野外活動サークル)の大垣千明、犬山あおい(犬子)、各務原なでしこの三人は、『ほむ☆たむ』世界なら佐倉杏子、巴マミ、鹿目まどかの三人になるだろうか。原作最終話で、マミさんの部屋にそろった三人だ。マミさんも犬子も、たんなるおっとりおっぱい美少女ではない。犬子は、バイト先のスーパーのレジで、「百合キャン」の食材調達にきたなでしことリンと出会い、高校で初めてできた友達との初めてのお出かけに、不安と期待で一杯いっぱいな「志摩さん」を笑顔で励ます。あの細やかな心づかいは、マミさん自身かくありたいと願った「理想のマミ先輩」ではないだろうか。

 「まみとほむの時間軸」では、時間遡行者のほむら以外存在しないはずの接続空間に、マミさんがいる。「みんな死ぬしかないじゃない」とみんなに手をかける寸前で、その時間軸のほむらに弾き飛ばされてしまったのだ。しかしマミさんがいきなり面白キャラに変わっている。3年前ここに来てから、ヒマすぎて、上下切る(落語で一人二役を演じる手法)うちに、漫才のネタが500本もできてしまったという。再会したマミさんがまず披露したのは「街で遭遇したら物凄くムカつく クソめんどくさい同級生グループのモノマネ」。何人か登場するうち、「おい お前ら そんなことより BBQやっちゃいますかァ フゥーーーーッ‼」というキャラがお気に入りのようで、「そいつ誰よ」とほむら(たむら)に聞かれて、「佐倉さん」と答えている。杏子はマミさんの「理想の後輩」でもあり、「あーいう子を上から実力で ねじ伏せ服従させて アゴで使うのとか ほっこりするじゃない?」といい笑顔で語り、ほむらに「突然のクズ発言だな‼」と突っ込まれている。ほむらと一時的に漫才コンビ「まみとほむ」を組んだマミさんは、接続空間にあるほむらたちの憩いの場「酒処あけみ屋」の一員になる。マミ杏であり、マミほむでもある、愉快な時間軸だった。

 このマミさん視点の「ウザ杏子」「BBQ杏子」は、「アケミメカニカの時間軸」にも登場する。科学で魔女を倒すことを目指す「ハカセ」ほむらが作った戦闘メカのAIのベース人格としてである。「ヘイヘイヘーーイ‼ アイムキョウコォー‼ お前らそんなことよりBBQだぜェ フゥーーーーッ‼」と叫びだし、開発者のハカセを呆然とさせるAI杏子が、大垣部長のキャラクターそのままでおかしい(もちろん、ほむらにとって、杏子は友達想いの芯の強い子で、マミさんは信頼できる相談相手だという基本設定があるからこそ、二人の「キャラ崩壊」がギャグになるわけで、そのことは、真っ直ぐな杏子ファン、繊細なマミさんファンのために書き添えておきたい)。

 『ゆるキャン△』では、さやかの立ち位置が、リンの友人・斉藤恵那になる。原作のほむらがさやかを苦手とするように、リンも恵那のいたずら好きや口の軽さは苦手らしい。しかし中学時代からの友人で、一緒にいて気の置けない仲である。恵那も、孤立しがちなリンのために、なでしこたちとの仲を取り持つ。この面倒見の良さは、魔法少女問題さえなければ、さやかも「転校生」にそう接していたにちがいないと思わせる親切さである。さやかはそういう子である。『たむ☆ほむ』のさやかは、魔女化の暴走で時空間を突破してやってくるが、「オコジョの杏子ちゃん」の「もふもふ」の力で魔女化を免れる。「あけみ屋」の隣で雑貨屋を開くさやかが、チワワの「ちくわ」を連れた恵那によく似ている。

 『ゆるキャン△』8巻では、リンは年相応の、無防備な素のままの表情や姿を見せるようになった。ライダー時代の母の若い頃の写真を見たがるところは、甘えん坊の一人っ子だ。温泉で「ふぬけ」になってしまったリンを介抱して、「ママしこ」と仲間たちに呼ばれるなでしこは、『たむ☆ほむ』のラストで、ほむらたちと花見をする、慈愛に満ちたまどかを思いださせる。

 もちろん、『ゆるキャン△』は『ゆるキャン△』であり、『まどマギ』世界とは関係ない。しかしそれでいい。『ゆるキャン△』が『まどマギ』と全く無縁な世界になったとき、『まどマギ』ファンの夢も成就する。それは「酒処あけみ屋」に集う全時間軸の全ほむらの幸せを祈る全おれの願いが実現した、奇跡と魔法の世界なのだ。

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