くまきちの「音楽と観劇の日々」

ライブハウス通いと観劇が趣味の“くまきち”がお送りする、とりとめもない日記形式の自己主張。

宮沢賢治「ポラーノの広場」「ポランの広場」

2006年01月27日 01時40分02秒 | 読書日記
なにごともなく・・・」で書いたように、「銀河鉄道の夜」に続き、「ポラーノの広場」とその先駆形とされる「ポランの広場」の2つを読みました。諸般の理由により行き帰りの電車ではなるべくちくま文庫版は読まないと決めていたので、当初は新潮文庫版で読み始めたのですが、途中で思い直してちくま文庫版の7巻(ISBN4-480-02008-X)で読み通すことにしました。ただなんとなく通読するならともかく、宮沢賢治作品のもろもろの比較研究資料を読むのにはやはり最低でもちくま文庫版でないと、思ったからです(実際、後述する『新宮沢賢治語彙事典』はちくま文庫版をベースに書かれています)。

その後、手ごろな研究書で「ポラーノの広場」関連だけがまとまっているものを探していたら『宮沢賢治「ポラーノの広場」論』(ISBN4-434-02450-7)というのが新書版で出ていたので、続いてこれを読むことにしました。

こちらのほうはまだ通読が終わっていない状況なのですが、基本的に「ポラーノ」を初めとする「『ポラーノの広場』に登場する賢治の造語についての考察」を行なっています。

前半の「Ⅰ <ポラーノ>の語源考察」について言えば、『新宮沢賢治語彙事典』(ISBN4-487-73149-6)に対する少し的外れな批判が目立つのが気になりました。辞典という性格上、(研究論文とは異なり)紹介されている諸説についていちいち出典を挙げることはしないのが通常だと思うのですが(実際、国語辞典や日本史辞典の編纂はそのように行なわれることが多い)、他人の説をまるで自説であるかのように紹介しているなどといったおかしな批判がなされていました。もっとも、その論調のお蔭で『新宮沢賢治語彙事典』に要約され紹介されている諸説についてその典拠がわかって重宝しているんですけどね。

今のところ「ポラーノの広場」と「ポランの広場」の2つを読んだだけで、戯曲版の「ポランの広場」を読んでいないので詳述は避けますが、「銀河鉄道の夜」が主人公の独白の色合いの濃い作品になっているのと異なり、この「ポランの広場」→「ポラーノの広場」は通常の「主人公が他の登場人物との間で関係性を持っていく過程が通常の物語として描写されている」タイプのお話になっているようでした。
もちろん、「ポランの広場」から「ポラーノの広場」への改稿により登場人物間の関係性あるいは各登場人物の正確付けなども微妙に変えられているようでしたが。

細かいことについては、また書く機会がありましたらそこで書くことにいたしましょう。
今夜のところはひとまず中間報告ということで、ここでいったん筆をおきます。


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