くまきちの「音楽と観劇の日々」

ライブハウス通いと観劇が趣味の“くまきち”がお送りする、とりとめもない日記形式の自己主張。

続橋 達雄『宮沢賢治 少年小説』(ISBN4-89674-207-9)

2006年01月31日 02時15分31秒 | 読書日記
演劇集団キャラメルボックスの次回公演『賢治島探検記』の観劇に向けての宮沢賢治の童話の通読&比較研究の続き。

ちくま文庫版「宮沢賢治全集」の7巻(ISBN4-480-02008-X)所収の「風の又三郎」の最終形を読みつつ、『宮沢賢治「ポラーノの広場」論』(ISBN4-434-02450-7)も読んでいるというのに、1月29日からは、さらにそれらと並行して『宮沢賢治 少年小説』という宮沢賢治童話論の一つを読み始めた。

以前、「そして「賢治島」へ・・・」で書いたこともあるが、宮沢賢治は
 ・「ポラーノの広場」
 ・「風の又三郎」
 ・「銀河鉄道の夜」
 ・「グスコーブドリの伝記」
の4つの童話を「少年小説」として一括りに扱っていると思われるメモが(「歌原稿〔B〕第一葉余白」に記された「少年小説の題名列挙メモ」をはじめとして)いくつか残っている。本書は、これら4つの童話のうち著者が別の本で取り上げた「グスコーブドリの伝記」を除く残り3作品について、初期形から最終形に至るまでの各異稿間の異同やそれそれの異稿ごとの特色や変遷について研究したものをコンパクトにまとめたものです。

まぁ、個人的にも「グスコーブドリの伝記」関連の異稿については以前にすべてを通読し、異同について『國文學 解釈と教材の研究』臨時増刊『宮沢賢治の全童話を読む』を道しるべにして一通り自分なりに考えてみたことがあるので、それ以外について考察されたものを読むのは実に楽しみである。1月30日現在、最初の一章のうちの「風野又三郎」の部分を読み終え「風の又三郎」の部分に入ったばかりであるが、似たモチーフや似た登場人物の出てきた他の作品との関連性について、いろいろと示唆に富む記述がなされていて面白かった。

なにより、「黄いろのトマト」が(「ポラーノの広場」のレオーノキューストとの関連で)「ポラーノの広場」の系統の童話として考えられているということについて気付いたのはひとつの収穫であった。まぁ、『宮沢賢治の全童話を読む』にも若干はその関連性について書かれてはいるのですが、長短合わせて約140にも及ぶ賢治の童話のすべてについて言及するという同書の性格上記述も簡潔に過ぎるところがあるので、今回『宮沢賢治 少年小説』を買ったことは無駄ではなかったのである。


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