明日がはじまるとき

事業仕分け 議論の向こうに明日がある

バス交通支援という事業名のまちなか活性化策

2012-09-06 | 事業仕分け

新潟市の事業仕分けでは、仕分け人(外部評価委員とよんでいました)7人全員が市民で、大学関係、企業、NPO、学生、公募2人で構成された2班体制でした。
構想日本からは各班のコーディネーターだけが参加しています。
このような班編成の事業仕分けも、いくつかの自治体で実施しています。

 住民にとっては行政に関心を持ち、意見を述べる機会、また行政にとっても、詳しい地域の実情が把握でき、直接利害関係者以外から声を聴くという意味でも、この構成は良いことだと思っています。
 一方で、いくつかの課題があることも指摘されています。行政の予算のしくみはわかりにくい、政策全体が見えないと他の重複が気付きにくい、また、しがらみがわかっているからドラスティックな発想ができにくいなどとも言われています。
 客観的な外部でかつ行政事情に詳しい仕分け人がいたら、議論が違っていただろうと感じる場面が見受けられたようです。

 事業仕分けでは、議論の過程が重要なのですが、ある程度知った顔の仕分け人なら、「ここはパスでつなごう」とか「ドリブルでそのまま運んで」とか「いまシュートだ!」などと議論の組立てがしやすいのですが、まったく見知らぬ顔が集まるため、リズムに乗るまで時間がかかります。
 でも、予想外の発言や、思わぬ展開があったりするので、コーディネーターとしてはとても興味深く務めさせていただきました。

 たとえばこの「交通戦略推進事業(まちなか交通改善事業)」です。
この事業名だけ見ると、まちなかが交通渋滞しているので迂回路を作るとか、サイクル&バスライドとかそんなイメージを持ってしまうのですが、実は、「中心市街地活性化」事業のことだったのですが。
 21年度に、旧市街・古町にあった大型店舗が撤退し、人が減ってしまったとのこと。このまちなか再生が喫緊の課題になったそうで、新潟駅から信濃川を渡って旧市街に乗り入れるワンコインバスを運行し、人通りを復活させようとする社会実験の事業なんです。

 この社会実験は、現金払いと「りゅーとカード」というICカードの2つの手段での乗車状況を調べています。
22年度 現金払い、4/24~8/22(42日間)、延べ131,037人、1日平均3,120人乗車
23年度 現金払い、4/29~6/12(18日間)、延べ45,179人、1日平均2,510人乗車
   ICカード、12/10~2/12(24日間)、延べ12,910人、1日平均538人乗車
24年度 ICカード、4/24~7/1(23日間)精査中、9/15~2/11(予定)

 外部評価者からは、利用者数と商店活性化の関係について質問があり、まちなか活性化の効果を確認しました。アンケートからは、顧客の変化・売上・人通りなどの項目でいずれも目立った変化はないとのことでした。
 次に、ICカード導入の背景について、経費をかけ導入したけれど、来年度からはスイカ、パスモに移行する計画とのことなので、その理由を知りたかったのです。乗客の乗車動向などを把握するため(ちゃんとまちなかまで乗ってくれたか=中心市街地活性化に寄与できたのか)、ということでしたが、まだ精査中で、この路線が良かったのかわからないのです。
 こんなやりとりの後に、「民間企業経営の感覚から」と一言添えて質問が。そもそも実験を行うときには、課題設定をし、実験でそれを確かめ、その結果から次につなげるアクションを起こし、政策に反映させるというPDCAのサイクルは基本のき。どのような結果が出てどのように反映させていくのか。「シュート」が放たれました。

 このように、まず事業の目的や何を目標に進めるのか確認し、必要ならその手段がどうか、という流れで議論が進めば、傍聴者もわかりやすいのです。
 今回は具体的な手段(ここでいうと負担金の内容が適正か、など)まで議論は及びませんでしたが、その点については市ができることですから、今後、自ら点検すればよいのでしょう。

 市はバス事業者に運行を依頼し(協定を結んでいました)、24年度予算ではICカードの運賃補填分1,000万円の負担金を支払っています。その積算根拠は、1日1,500人×76日×87.7円/人ですが、23年度実績ではICカード利用は1日538人です。1,500人の設定で予算を組むのはどうしてか?見込みがあるのか?
土日の7時や21時以降に新潟駅から古町に行くバスもあるが、賑わい創出が目的なのに多くの商店が開業していない時間帯の設定に疑問がある、など、具体的手段を確認したい場面も多くありました。

 事業仕分けは事業の事後チェックという位置づけなので、政策論ばかりではなく具体的な実施方法について、効率的だったのか効果はどうだったのか、などを検証することが大事なんです。
でもね~ コーディネーターが話しすぎるのを嫌がる傾向があるんですよね。必要な論点が出ない場合はコーディネーターだろうが誰だろうが、言うべきだと思うんですけど。

 いずれにしても、今後、このICカードを使ったバス路線をどうしていくのか、中心市街地の活性化として有効な手段は何かなど、税金をかけて社会実験をしたのだから、その結果を市民にきちんと公表していくことが求められるのです。結果は市実施(要改善)という結果となり、総じて良い議論ができました。
なお、今後は、無作為抽出の市民数千人規模に参加を投げかけ、さらに関心のある住民の掘り起こしをしていくと良いなぁ、と思いながらの事業仕分けでした。


帰りの新幹線で購入した駅弁。佐渡の食材がふんだんに使われていました
しかもローカロリー安心してをいただきました


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