先日、首相の私的諮問機関である地方制度調査会が、総務省原案に対する意見を提出しました。
この会は、地方自治法改正にかかわる話題満載だったし、とても近い知り合い数人が委員になっていたので、関心を持って毎回の議事録を追っていました。
さて、提出された意見ですが、結論から言うと、総務省案に比較しやや改革のテンポを緩めた、という印象でした。
良かったのは、
* 地方議会の会期は、条例により、定例会・臨時会の区分を設けず、通年の会期とすることができることとする。
原案通り制度化を図るべきと結論付けられました。
会期をどうするのかは条例で決めるということで、つまり、どのような議会運営をするのかは議会自らが決める、ということですね。
通年会期のメリットは、簡単にいうと、1年間継続的に議論することで、住民が傍聴する機会を増やせます。
また、「議会を開催する暇(いとま)がない」という理由で強行する、「専決処分」の濫用は避けられるでしょう。
議会にとっては選択肢が増えるし、住民にとっても参加の機会が増え、政治への関心は高まるかもしれません。
もちろん現行法制下でも通年議会開催は可能ですが、法制化することで、より実行しやすくされるのでは、と期待できます。
まぁ、職員にとっても、1年中議会対策をするということは、資料作りに忙殺されないよう仕事のやり方を変えないといけない、ということですね。
反対に、残念だったのは、
*条例の制定・改廃の請求対象の拡大について。
原案では、地方税の賦課徴収等を除外している規定を見直そうとしていました。
会の意見は、「今後の経済状況の推移や改革の実施状況を十分見極めて検討する必要がある」に留まってしまいました。
地方自治法制定時の昭和22年には、請求対象の制限がなかったのに、23年の改正では、地方税の賦課徴収等を除外するなど、その範囲が狭められたんです。
でもよく考えたら、地方税の賦課なんて、住民の意思を適確に反映してほしい最たるものですよね。
直接請求が成立しても、条例の制定・改廃は住民の代表である議会が議決という形で最終判断を行うわけですから、請求くらいさせてくれてもいいじゃない、と思うわけなのですが。
いずれにしても、どんな良い意見が出されても、参考にし、採用しなければ実施しないのと同じだと思うのです。
もしも予定調和的に答えが用意されていたなら、こんな空しいことはありません。
原発事故の場合も、発生してから、当時の委員さんたちが大事故を危惧していたとか、この装備では不十分だと指摘していたとか・・・でも、その意見は採用されなかったです。結果論ではありますが、もしもこうだったら~という想像力は、大事にしたいです。
政府には様々な委員会が設置されていますが、結論もさることながら議論のプロセスをよく読んで、多様な意見を吟味して、政策に活かしてほしいですね。
*大規模な公の施設の設置に係る住民投票制度について
原案は、代表民主制を補完する1つとして、特に住民が利用する施設は意思把握のために、本制度を活用したいというものでした。
会の意見は、対象のあり方や要件等についてもっと詰めるべき論点があり、引き続き検討する、というものでした。
受益と負担の関係や将来世代への負担のあり方など、住民がその直接の関係者として関心は高く、議論すべき点は多く、住民自治が叫ばれている時代に、とても重要で意義深い原案だったのに・・・残念です。
もう少しご教示くださいませ。
大規模公共施設に限らず、常設型の住民投票への発展的解消とはことなり、やはり後退的なものなのでしょうか。
続きをアップしました。参考にならないかもしれないけれど、住民投票の重要性は十分に認識された上での検討だということのようです。