6月の末、神奈川大学の南さんに依頼され、顎関節症で苦しみながら書いたレポートが、(株)ぎょうせいの月刊誌『地方財務』2011.7月号の「自治体経営改革ツールとしての事業仕分け」として、掲載されました。
今回は、高齢者に対するさまざまな給付事業のうち、紙おむつの給付について取り上げました。
高齢社会への対応は、国はもちろん、地方自治体にとっても、社会保障を考える上で重要な課題となっています。
財政に余裕のあった90年代までは、給付事業は拡大する一方でした。高齢者の投票率が高い傾向にある各種選挙を考えると、その支持を得るためには給付縮小を打ち出すことが、困難であったと考えられます。
たとえば、民間企業を退職した高齢者の場合、現役時代に高額の給与が支給され、退職金も相当額を受け取り、さらに公的年金と企業年金を手にしている事例もあります。
一方、20代で20万円程度の給与、もしくは正規社員にすらなっていない若者も多くいる状況です。それにもかかわらず、22年度の国の一般会計の社会保障費のうち、高齢者予算が占める割合は28%にもなっているのです。
高齢者に対する手厚い施策は、地方行政においても同様で、国で全国一律の事業を行い、県や市町村が補助上乗せや独自の事業展開を行ってきたため、事業数・事業費が増えてきました。さらに、高齢化の進展により対象者も増え続け、その結果として、高齢者への給付事業の予算額は増加の一途をたどっているのが現状です。
給付型のサービスをニーズごとに追加するというやり方は、受益者には評判が良く、首長や議員選挙での支持を確保することはできても、やがて財政破綻につながっていくと認識すべきですね。
この傾向に加えて、自助・共助で解決すべき問題までも全て行政が担うことは、要求型・依存型住民を養成してしまう実態も認識すべきでしょう。
しかしながら、選挙では、ほとんどの場合、競争相手がいるので、現職が事業を中止する方針を打ち出す必要性を認識しても、対抗する候補者によって「高齢者を切り捨てる」と批判される可能性もあり、相当な勇気がなければ撤退できないという実態もあるようです。
このようなことから、高齢者に対する給付事業は、何とか減らしたいが、減らすことができない、まるで囚人のジレンマのようになりつつあるのではないでしょうか。
さて、紙おむつ給付事業に関して言えば、全ての対象者の全てのニーズに対応するということになってしまわないよう、所得制限、現物給付か金銭給付か、対象者をどこまでに絞るのかなどが論点となりました。
今後、高齢者福祉政策は、すべての事業について内容を点検し、重複の見直しや類似事業の統合、また個別のニーズに対応するためのバウチャー制度の検討など、工夫する必要があると考えます。
世代間公平性を確保するためにも、部分最適事業を行うという考えから抜け出し、全体最適を目指すことが実現可能性の高いものと言えるのでしょう。
ジョリー 天を仰いで何を願うのか・・・