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日々新たなり/日本語学2020

長安の発音

2021-09-21 | 日々新た

nippon 日本と書くことで国名は通用する。その呼称は、やまと だった。そう読むと主張をするでもなく、和か、その倭国という表記より示しやすい。大和とするのは美称を文字にあらわしている。通達文書で室町期の対外呼称に自らを日本国王と書いた、その時に、これを受け取って読む漢語話者にはまた自ら用いる漢字音を当てて発音していたであろう。どう発音する、されていたかは、時代と地域のことがかかわる。
いま、長安の都でその正音とされた漢音とするとそれまでの日本語に受け入れた呉音とは異なるものもある。

>漢音① 中国音の一種。隋・唐代以後、宋代以前、長安(今の西安)地方で用いられた音。
 ② 日本漢字音の一種。上代から中古にかけて遣唐使、留学生、音博士などによって伝えられた長安地方の音。 精選版 日本国語大辞典

日本というふうに書記された国名は当の長安音では、n---rについて知られている、すると発音としてはどうなるか。にっぽん は じっぽん、と聞こえるようである。これは海を隔ててどう聞こえてきただろう。現代中国で、じーべん りーべん と発音しているわけであるから、その響きは当時の都人に漢字音としてなじまなかっただろう。





ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「漢音」の解説
漢音
かんおん
日本の漢字音の一つ。呉音に次いで,隋唐時代に遣唐使や留学僧などにより日本に伝えられたもの。平安時代には学習・教授すべき正規の音と定められたため,「正音」ともいう。おもに洛陽や長安 (現西安) などの西北方言に基づいている。呉音とのおもな相違は,(1) 呉音では漢語の清濁の対立をとどめている (糟〈ザウ〉,曹〈サウ〉) のに対し,漢音ではすべて清音 (ともに〈サウ〉) である。 (2) 呉音では漢語の/m/,/n/ をマ行,ナ行で取入れている (萬〈マン〉,奴〈ヌ〉) が,漢音ではバ行,ダ行 (〈バン〉,〈ド〉) である。 (3) 漢語の/-t/ が呉音ではチとなることがある (質〈シチ〉) のに対し,漢音ではすべてツ (〈シツ〉) となっていることなどである。


百科事典マイペディア「漢音」の解説
漢音【かんおん】
日本の字音の一つ。唐の首都長安,副都洛陽の音に基づくもの。8―9世紀にかけて遣唐使や留学僧らによって日本に伝わり,朝廷では正音として普及に努めたが,世間一般には,すでに日本語に同化していた呉音をしのいで急速に広まることはなかった。しかし漢籍の読習や一部の天台・真言の経典の読誦(どくじゅ)に用いられ,漢学でながく漢音の行われる素地をつくった。現在では,漢音の勢力は大きい。

世界大百科事典内の漢音の言及
【漢字】より
…その後,隋・唐の時代になって都が長安に移され,北方音が標準とされるようになったとき,唐制の模倣に力を注いでいた日本では,宮廷で率先して新しい北方音を取り入れ,音博士は北方音を教授し北方音を正音と呼び,僧尼の得度(とくど)にも正音を修得しなければ許可しないと幾度か布告している。したがって《日本書紀》の歌謡訓注には,漢音が多く取り入れられている。しかし,《続日本紀》宣命の万葉仮名などは依然として呉音によるところが多いのを見ても,一般の日本人は,漢音の学習がかなり困難であったと見える。…

【字音】より
…もちろん,訓は中国語の字音の借用ではない(〈馬(うま)〉〈梅(うめ)〉等微妙なケースもないではないが)ので,漢字音ではない。 一方,〈音〉には大別して〈呉音(ゴオン)〉(対馬音(ツシマオン)),〈漢音(カンオン)〉〈唐音(トウイン∥トウオン)〉(宋音)の三つがあり,それぞれ別の字音体系を成している。例えば,〈明〉は呉音ミヤウ,漢音メイ,唐音ミン,〈公〉はそれぞれク,コウ,クンである。…
※「漢音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版


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