「ママのお父さんのことだけどな、この事はおにいちゃん二人が二十歳になったときにも話したんだが、お前たちが知っているということをママには黙っておくんだ。」
と意味深な言葉を切り出した。
「なんなの?」
父が何を云わんとしているのか理解が出来なかったが、そういえば、今まで母の父親について特別記憶に残るようなことを聞いたことがなかったような気がする。
「ママのお父さんが死んだのは知ってるよな。」
「うん、知ってる」
「ちょうど○○が生まれてすぐのくらいだったかな、突然お義父さんがうちに来たんだ、元気にしてるかってな。お義父さんは設計やだから、あちこちに忙しく飛び回っていた人なんだけどな、あんなふうに突然来るなんて思わなくてびっくりしたよ。とにかく一泊うちに泊まってもらったんだ。次の日用時があるからって言って、お義父さんは普通にでていったんだ。それで、次の日かその翌日か覚えてないが、海上保安庁と警察から電話があったんだ。竹芝桟橋から出ている大島行きのフェリーで乗船した人が一人大島で下船しなかったっていうんだ。
次へ