アイディ『英文教室』 柴田耕太郎 翻訳批評

『英文教室』主任講師 柴田耕太郎による翻訳批評

翻訳批評第三十八回

2009年03月11日 12時29分02秒 | 翻訳批評
12. 1例題(2)
It has so often been said that the English (though not the Scots, the Welsh, or the Irish) are an inartistic and unimaginative people, that the English have themselves come to believe the accusation. They are told that they have no vision, that they are more concerned about their pockets than about their minds and souls. Since they are a modest and a docile people, full of self-distrust and slow to give offence, ①it seldom occurs to them to point out that the English have had not only the greatest poet of all time but also more great poets than all other countries put together . イングランドの人間(スコットランドやウェールズ、アイルランドの人間はそうではないが)は、芸術性に乏しく想像力を欠く民族であると言われることがこれ まであまりに多かったので、イングランドの人間自身もその非難が正しいと信ずるようになってきている。彼らは人から、ビジョンがなく、精神や魂のことより も財布の心配をすることが多いと言われている。彼らは穏健でおとなしい民族で自己不信に満ち、なかなか人を怒らせないので、①めったに口に出そうとは思わないが、イングランドからは古今を通じて最も偉大な詩人が出ているばかりでなく、他の国々をすべて合わせたよりも多く偉大な詩人が出ているのである。

①「めったに口に出そうと思わないが、イングランドからは古今を通じて最も偉大な詩人が出ているばかりでなく、他の国々をすべて合わせたよりも多く偉大な詩人が出ているのである。」:悪訳
強調の方向が逆になっている。

①修正訳:「イングランドからは古今を通じた最も偉大な詩人が出ているばかりでなく、他の国々をすべて合わせたよりも多く偉大な詩人が出ていることを、めったに口に出して言おうと思わない。」

12.2.4
The leaves are now so thick that ①one does not see so many birds as one hears.
今では木の葉が茂っているので、①耳に聞こえるより目に入る鳥の数のほうが少ない

①「耳に聞こえるより目に入る鳥の数のほうが少ない」:悪訳

これも強調の方向が逆になっている。

①修正訳:「耳に聞こえるほど目に入る鳥の数は多くない」

12.2.8
We never believe we areas fat or as thin and bony as other people say we are. 他人が言うほどには自分は①太っていない、またはやせて骨ばってはいないと我々は信じている。

①「太っていない、またはやせて骨ばってはいない」:悪訳
「または」では「太っていない」か「やせて骨ばっていない」のどちらか、ととられかねない。
ここ単純化すれば、We never believe we are fat or we are thin.つまりnot A or Bの変形で「AでもBでもない」

① 修正訳:「太ってもやせて骨ばってもいない」

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