アイディ『英文教室』 柴田耕太郎 翻訳批評

『英文教室』主任講師 柴田耕太郎による翻訳批評

翻訳批評第四十一回

2009年03月16日 14時15分05秒 | 翻訳批評
13.2例題(1)
He was, so far as ①I could judge, as free from ambition in the ordinary sense of the word as any man who ever lived. If he rose from position to position, it was not because he thrust himself on the attention of②his employers, but because his employers insisted on promoting him. ③He was naturally a man of creative energy, a man who could no more help being conspicuous among ordinary human beings than a sovereign in a plate of silver.
 ①私が判断しえたかぎりでは、彼はこの世に生をうけたどんな人々とくらべても普通の意味での野心がなかった。彼の地位が次々に高くなっていったとしても、それは彼が②主人に認められようと努力したからではなくて、②主人が彼を昇進させることを主張したからであった。③彼は生来の創造力が豊かで、平凡な人間の中ではどうしても人の目を引くこととなったのは、銀の皿の中の金貨と同様であった。
①「私が判断しえたかぎりでは、」:悪訳
この日本語では、時制がひとつずれてしまう。日本語では、文末を過去形にすることで、文全体が過去の意味になる。文中を過去形にすると英語の過去完了の意味にとられかねない。

修正訳:「私が判断しうるかぎりでは」

②「主人」:誤差
商店か封建制みたいだ。「地位が次々に高くなっていく」のだから、結構大きな集団(あるいはemployersと複数であるところから転職を重ねるのか)だろう。それらしく訳語を決める。

修正訳:「雇用主」→「社長」

③「彼は生来の創造力が豊かで」:悪訳
コロケーションがおかしい。「生来の創造力」とはいわない。「創造力が豊か」ともあまりいわないだろう(想像力ならいいが)。

修正訳:「生来、創造力があり」

13.3. 例題(2)
If we think we must not laugh, ①this impediment makes our temptation to laugh the greater, and the inclination to indulge our mirth, the longer it is held back, collects its force, and breaks out the more violently in peals of laughter.
 笑ってはならないと思うと、①この障害のためにかえって笑いたいという誘惑は強くなる。そしておかしさのままに笑いたいという気持ちは、長く抑えているほど力を加え、かえって大きな笑い声となって爆発する。

①「この障害のため」:悪訳
「この障害」では、どこか身体的欠陥があるみたいだ。

修正訳:「そのため」

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