
フィンランドの首都ヘルシンキには、先進国の首都を被いがちな、近代化された高層ビルは見えない。年月と共に磨り減った石畳の街に、トラム(路上電車)とバスが縦横無尽に走り、1800年代から1900年代初頭の年号が刻まれた重厚な石の建物がどっしりと座っている。車は、人と自転車とトラムを優先しながら静かに走り、首都とは思えないほど落ち着いたたたずまいの街だ。

20世紀に入って独立したフィンランド。国土面積は九州を除いた日本の面積と同じ、住む人は北海道の人口ほどの520万人。国土の75%が森林で20万個以上の湖がある、まさに森と湖の国である。首都ヘルシンキの人口ですら56万という小規模な都市だからなのか。

タルヤ・ハロネン大統領は女性。2年前の米国のイェール大とコロンビア大の調査で、対象146カ国の中でフィンランドは最も環境の持続性が高い国と評価されている。全市民に義務教育から大学レベルまで無償で提供しており、世界的な学力調査でフィンランドがトップに立っていることは有名だ。にもかかわらず、上位国の中で小中学校の授業時間は最も少ないという。教員の資質が高く、社会的な信頼が厚く、個々の教員に教育の裁量がかなり与えられていることも効果を挙げていると聞いた。
ロシアとスウェーデンに統治された歴史が、市内や生活の一端に残っている。国民の9割以上はフィンランド語を母国語としているが、スウェーデン語も公用語。道路標識、ストリート名、各種公式パンフレット等が二ヶ国語で併記されているのはそういった事情からだ。

しかし、驚いたことに、この国の人々の多くが二ヶ国語に加えて英語も操る。
到着初日に宿泊予定のユースホステルまでの行き方に迷いながら、トラム(路面電車)の中で地図を広げていると、後部座席から「お手伝いしましょうか」と英語で声がかかった。見ると70歳に近い年齢の女性だ。ホステルの名前と住所を伝えると降りる駅の場所と降りてからの行きかたを丁寧に教えてくれた。
「フィンランド人はシャイで人見知りするところが日本人に似ている」と聞いていたが、日本で地図を広げていて日本人にすら声をかけられた覚えはあまりない。日本人は外国人に声をかけるだろうか。
バスやトラムの運転手は流暢に、そして多くの高齢者も英語である程度の会話ができる。
「だって、みんな小学校中級から英語を学ぶから」と野外博物館スタッフの女性は言った。彼女の英語も癖がなくてわかりやすい。でも、日本だって長い年月かけて学校で英語を学ぶが、会話が成立するするまでに至らないと言うと、彼女はちょっと考えてから言った。「この国では、テレビの英語番組が多いからかもしれない。番組の50%は英語。国内のメディアはわずか5つだけ。自社作成番組の数に限界があって、多くは米国や英国から面白い番組を買うの。フィンランド語のテロップを入れるけど、音声はみんな英語」なるほど、日常に英会話を習得する有効な学習環境が整っているというわけだ。

「ほとんどのフィンランド人は少なくてもノルウェイ語とフィンランド語はできるわ。私?他にロシア語とドイツ語も少し。この国はロシア領だったこともあるし、隣りはロシア。ドイツ語は覚えやすい言語なの。」と流暢な英語で彼女は言った。それにしても、人間の言語の習得能力にはどれだけの可能性があるのだろうか。

20世紀に入って独立したフィンランド。国土面積は九州を除いた日本の面積と同じ、住む人は北海道の人口ほどの520万人。国土の75%が森林で20万個以上の湖がある、まさに森と湖の国である。首都ヘルシンキの人口ですら56万という小規模な都市だからなのか。

タルヤ・ハロネン大統領は女性。2年前の米国のイェール大とコロンビア大の調査で、対象146カ国の中でフィンランドは最も環境の持続性が高い国と評価されている。全市民に義務教育から大学レベルまで無償で提供しており、世界的な学力調査でフィンランドがトップに立っていることは有名だ。にもかかわらず、上位国の中で小中学校の授業時間は最も少ないという。教員の資質が高く、社会的な信頼が厚く、個々の教員に教育の裁量がかなり与えられていることも効果を挙げていると聞いた。
ロシアとスウェーデンに統治された歴史が、市内や生活の一端に残っている。国民の9割以上はフィンランド語を母国語としているが、スウェーデン語も公用語。道路標識、ストリート名、各種公式パンフレット等が二ヶ国語で併記されているのはそういった事情からだ。

しかし、驚いたことに、この国の人々の多くが二ヶ国語に加えて英語も操る。
到着初日に宿泊予定のユースホステルまでの行き方に迷いながら、トラム(路面電車)の中で地図を広げていると、後部座席から「お手伝いしましょうか」と英語で声がかかった。見ると70歳に近い年齢の女性だ。ホステルの名前と住所を伝えると降りる駅の場所と降りてからの行きかたを丁寧に教えてくれた。
「フィンランド人はシャイで人見知りするところが日本人に似ている」と聞いていたが、日本で地図を広げていて日本人にすら声をかけられた覚えはあまりない。日本人は外国人に声をかけるだろうか。
バスやトラムの運転手は流暢に、そして多くの高齢者も英語である程度の会話ができる。
「だって、みんな小学校中級から英語を学ぶから」と野外博物館スタッフの女性は言った。彼女の英語も癖がなくてわかりやすい。でも、日本だって長い年月かけて学校で英語を学ぶが、会話が成立するするまでに至らないと言うと、彼女はちょっと考えてから言った。「この国では、テレビの英語番組が多いからかもしれない。番組の50%は英語。国内のメディアはわずか5つだけ。自社作成番組の数に限界があって、多くは米国や英国から面白い番組を買うの。フィンランド語のテロップを入れるけど、音声はみんな英語」なるほど、日常に英会話を習得する有効な学習環境が整っているというわけだ。

「ほとんどのフィンランド人は少なくてもノルウェイ語とフィンランド語はできるわ。私?他にロシア語とドイツ語も少し。この国はロシア領だったこともあるし、隣りはロシア。ドイツ語は覚えやすい言語なの。」と流暢な英語で彼女は言った。それにしても、人間の言語の習得能力にはどれだけの可能性があるのだろうか。