見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

7ヶ国語を操るガイド

2007-11-04 10:43:55 | モロッコ
モロッコ周遊の旅は、27人の参加者、1人のガイドそして2人のドライバーと共に港町タンジェをスタートした。

すらりとした長身にネクタイと背広が似合うガイドはジョナと名乗った。フェリーから大型の観光バスに乗り替えた参加者の人数を確認し、彼は徐にスペイン語で挨拶を始めた。やはり、スペイン人ツアーなのだ。英語ガイドはいないのだろうか。と心配になったとき、ジョナさんの言葉が英語に変わった。
一人二役を務めるらしい。大変だ、と思っていると、やがて彼の言葉がドイツ語に。3つの言葉で挨拶し終わった後、参加者に使用言語を聞いた。

結果、わかったことは、スペイン語使用者は8人のみ。しかも2人はアルゼンチン人だ。次にドイツ語6名。そして他は多様な言語圏からの参加者だった。
驚いたことに、27人は、スペイン、ドイツ、オランダ、英国、カナダ、米国、インドネシア、アルゼンチン、日本の9カ国からのインターナショナルな集団だった。そして、多くの人はスペイン滞在のバカンス中に、このツアーを見つけたのだと言う。

ジョナさんは、「時間的に3つの言語の説明が限界ですから、スペイン語、ドイツ語、英語の3つにさせてください」と言った。「日本語はどうですか」私は冗談交じりに聞いてみた。すると、彼は日本語で挨拶を始めたのだ。
いったいいくつの言葉を話すのか、参加者から質問が飛んだ。「ガイドとして話せる言語は、アラビア語、スペイン語、フランス語、英語、ドイツ語・・・(理解不能)の7つだけです」とジョナさん。「だけ!?」驚きの声が上がる。が、その説明も3言語で順々に言うので、驚きのリアクションがずれる。何となくおかしい。
ジョナさんは慣れた様子で、「どの言語も同じ内容を説明しますが、言葉によって長くなったり短くなったりします。自分の言葉の時だけ短く省略したと思わないでください。」と言った。きっと不満が出ることがあるのだろう。そのためか、彼は、何度か言語の順序を入れ替えながら説明する気の遣いようだ。
それでも、3つの言葉で説明されると、自分がわかる説明がされるまで待ち遠しい。特に、他の言語の説明の最中、笑いや驚きのリアクションがされると、「何を驚いたのだろう」と妙に気になって鑑賞の気が反れる。さらに、バスで通りすぎる場面の説明になると、かなり前から説明をスタートし、早口で言わなければならない。最も、三回同じ内容を伝えるジョナさんの苦労は聞くほうの苦労以上なのだろうが。

モロッコ人の観光関係者には、多くの言語を操る人が少なくないという。羨ましい。必然性が日常的に増えれば、人はそれほど複数の言葉を覚えられるものなのだろうか。
やはり観光業に関わるネパール人の友人は、イタリア語、フランス語、インド語(ヒンディ語)、日本語、英語、ネパール語の6カ国を操る。
そういえば、カンボジアのアンコールワットの中で観光客相手に絵葉書を売り歩いていた幼い女の子は、絵葉書の枚数を数ヶ国語の数字でカウントしてみせていた。日本語でも15枚まで、ほぼ正確に発音したのだった。

■モロッコの風景■

ツアーでつらいのは、高価なみやげ物店に何件も連れて行かれること。そうした店の品物は、確かに上質のすばらしい作品ばかり。鑑賞だけするのも目の保養になるのだが、電卓を持った店の担当者がマンツーマンで張り付くため、じっくり見ることすら適わない。

↑ベルベル人の伝統的絨毯は魅力的。欧米の参加者何人かが購入していた。


↑王室献上の皿を細工したという職人が「安物との違い」を説明する。


↑ラクダの革製品がたくさん。


↑真鍮や石を用いたインテリアや装飾具は土産にしたいが重くて手が出ない。


↑涼しく着やすいきらびやかな民族衣装。


↑ツアーの良いところは、「名所」を効率的かつ計画的に回れること。モロッコの首都ラバトでは、フランスからモロッコの独立を勝ち取った前国王ムハンマド5世の霊廟は閉門間際に飛び込みで間に合い参観できた。



↑三角の蓋を被せて調理する伝統料理タジン。各種香辛料を用いて様々な食材を取り合わせて煮る料理で種類も豊富。街角でタジン鍋から湯気を出す店に入って食べてみたいが、レストランも指定されているツアーでは適わない。


↑というわけで、夜のオプショナル・ツアーをキャンセルし、メディナ(旧市)に入ってアラビアパンを食べることにした。


↑夕方、メディナを囲む城壁の外で仕事帰りの人たちを相手にしたマーケットが始まった。


↑ゴミ箱から拾ってきたとしか思えない破片や壊れた食器をにこやかに売る男性。ツアーを離れて自由になると、市井の人たちとの対話の時間ができる。と言っても、多くのモロッコ人は多言語ではない。身振り手振り、相手はフランス語かスペイン語の単語を連発し、こちらは英単語で聞き返す。
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