見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

無くなっていた飛行航路

2007-10-06 08:04:10 | 欧州
様々な事情が重なり、予定より早くスペインに入ることになった。
日本を発つ前に、ローマからバルセロナまでリベリア航空のオープンチケットを購入した。欧州の格安航空会社事情を事前に詳しく知っていたら、もっと別の移動方法もあったのだが、購入済みの世界一周航空券のルート変更は困難だ。
この旅で1年間有効の世界一周航空券を活用するかどうか、かなり迷った。20回以上のフライトが可能な地球一周飛行機チケットはかなり安い。ただ、世界の航空会社10社の緩やかな提携プログラムであるため、様々な制約に縛られ、途中変更等の融通も利きにくいという使い勝手の悪さを我慢しなければならない。
今回は、旅の自由度を確保するために、搭乗日未確定のオープンチケットを購入した。その都度、搭乗日を決め座席予約のために、旅行会社か航空会社に出かける手間がかかるのは覚悟の上だ。

ところが、提携航空会社の支店がない都市や国では、そうした作業が困難になることまであまり想像していなかった。。
ローマに入り、イベリア航空(スペイン)の支店が市内にないことを知り、嫌な予感がしたところから困難は始まった。今回の世界一周航空券を取りまとめて発券したキャセイ航空(香港)が最も頼りになるはずだったが、ネットで検索して地図を頼りに出かけていったところ「ローマ支店は顧客サービスを終了しました。御用の方はミラノ支店へおいでくださるか電話を」という案内ちらしがあるはずの住所の入り口に貼ってあったのだ。ミラノ!
思案しながら路上を歩いていると、偶然、日本の大手旅行代理店ローマ支店が目に入った。しかも、3月に世界一周航空券の手配を依頼した旅行会社である。
明るい気持ちでガラスドアを開けて入ったところ、きりっとした日本人スタッフが応対に出て「世界一周航空チケットは、大変センシティブなもので、私どもでは一切、手を付けないことになっています」とあっさり。でも「ローマーバルセロナ間のイベリア航空のスケジュールはお伝えできます」と言ってネットを検索してくれた。そしてわかったことは、「ローマーバルセロナ間のイベリア航空のフライトは無くなっていますねえ」という信じられない事実だった。「ローマーマドリッド、マドリッドーバルセロナ間は飛んでいますけど」と。

世界一周チケット搭乗回数の限界までルートを組んでいるため、マドリッド乗り継ぎで搭乗便を増やすことが可能かどうかわからない。暗い気持ちになった。
「イベリア航空もキャセイパシフィックも、フライト日にはローマ空港にデスクを出すので、とにかく空港まで行ってみることをお勧めします」と彼女は同情するように言った。

日本でも航空会社建て直しのために飛行ルートの再編が行われている。私の故郷の飛行場もその一端を被った。同じことが世界中で起きている。ただ、購入したルートが、旅の途中でキャンセルされることまでは予想しなかった。

それから、バルセロナまでの飛行機座席を予約するまで、半日を要した。
世界一周チケットの複雑かつ融通の利かないシステムと、搭乗日の数時間しかデスクにいない航空会社との折衝という綱渡り状態で、空港とローマ市内を往復し、結果的にイベリア航空カウンターの男性職員の大変親切で粘り強い対応に救っていただいたことになる。
今回の問題の焦点は、飛行路がなくなり、二つの飛行機を乗り継がなければならなくなったことで、当初の一周チケットの書き換え作業が必要になったことにあるらしい。

彼が苦労して作成した手書きの航空券で、マドリッド乗継でバルセロナに入る2つ飛行機の座席が確保できたのだ。彼は「これは、私の本来の仕事ではないんだけどね」と何度も言いながら、オープンチケットに印打された細かい文字を苦労しながら読み取り、手書きで写し、二種類の航空チケットに作成し直した。できあがった航空券は、なんとA4用紙1枚に手書きのもの。通用するのかやや不安が過ぎるが、八百万の神に祈るしかない。本来は一周チケットを発券した航空会社の仕事なのだという。が、キャセイはすでに空港カウンターを閉じていた。

空港内を何度も行き来する私を見て同情したのかもしれない。彼は、カウンターに並ぶ別の旅行者たちに忙しく対応しながら、キャセイ航空に電話をし、時に怒り、時に呆れた口調で話をし電話を切ってため息をついた。そしてついには「ミラノに行くのも、また後日空港に来るのも大変でしょう。私が再発券作業をやってみよう」と言ってくれたのだった。心から感謝。持分以外の仕事を自分の意思で引き受けることにどれほどのリスクがあるのか私には予想できないが、日本に帰ったら自分にもできることはやろうとそのときばかりは思う。

そして、搭乗日。彼の手書きのA4用紙航空券は問題なくチェックインカウンターで受け入れられた。再び空港のイベリア航空デスクに行き、再度お礼を言うと、彼はにこやかな顔で「よい旅を!」と言ってくれた。
さて、あとはマドリッドで乗り換え、夕方にはバルセロナに到着する予定、だったのだが、試練の神は「まだまだ」と笑っていたのだった。
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