コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

ガリ版版画の可能性など

2007-06-23 17:03:19 | 
何はともあれ、この画像をクリックしてみて下さい。



これは、小学校2年の時、担任から戴いた年賀状。
ただし、多分、印刷を請け負ったのは父だと思われます。

このイノシシは、ガリ版で刷られているわけですが、意図的な濃淡があります。

前足の周りを拡大してみます(画像をクリック)。


口の部分にもヤスリのあとがありますが、全体とはかなりキメが違います。

ガリ版印刷を学級新聞や授業の配付資料程度で済ませていた多くの人たちは、恐らく、こういう技法に縁がなかったのではないかと思うのですが、私の場合、父の影響で、小学生の頃から年賀状や暑中見舞いは、必ずガリ版多色摺でした。で、少しだけですが、「裏技」も伝授されていました。

もっとすごい作例は、前の記事でリンクした先にありますのでご覧下さい。
例えば孔版画ギャラリーとか。

今回、若林さんの技法マニア魂に火をつけてしまったのは、そういう話で……。


ガリ版が下火になったのは、輪転機など、新しい印刷機が学校や職場に入ってきた事も関係ありますが、その他にボールペン原紙の出現と言うことも大きかったように思います。
これは、ヤスリがいらないけれど、これでは多分、上のような濃淡は出せない。

同様に、孔版印刷は、現在プリントゴッコやリソグラフなど、光によって原紙(マスター)に穴を開ける方式で生き残っていて、写真モードなどもありますが、これは、機械頼みでどうにも。



さて。前置きが長くなりましたが、ガリ版で濃淡の出せるわけを少し解説。

ガリ版(謄写版印刷)は、鋼鉄のヤスリの上に固定した蝋原紙を、鉄筆でこすって穴を開け、その穴にインクを通す印刷方法です。

言葉だけでは解りにくいかも知れませんが、ヤスリは鉄板に、縦横に筋を入れた物で、基本的に四角錐の集合体のような物です。一面塗りつぶされるような面でも、実際にはドットの集合です。

これに原紙をのせ、上に鉄筆を滑らせると押しつけられたところだけ穴が開きます。
このとき、弱すぎると穴になりませんし、強すぎれば隣のドットとつながって破れます。同様に、原紙がずれるとドットもずれて、綺麗な刷りは期待できません。

さて、錐状のヤスリで原紙に開けられた穴は、薄い紙ながらも、上が小さく、下が大きくなっているはずです。従って、普通に印刷すれば、微量のインクが穴から入り、印刷面に拡がることになります。
ということは、逆に、製版してから裏返して印刷すると、小さなドットからしかインクが透過せず、ドットが小さくなるわけです。
全くもって、アナログなナノテクです。

父のイノシシは、原紙を裏返して使ったか、あるいは別のヤスリ(アート用の目の粗い物があります。この辺も前のリンク参照)に変えたのかもしれません。いずれにしても、同じ原紙に、別の加工法を用いて、一回の刷りで濃淡を出しているワケです。

父は、原紙を重ねて更に濃淡を強調する技を見せてくれたことがありました。これは、原紙が破れやすいので、子供には無理でした。
理論的には、つぶす時の、鉄筆の手加減で、原紙の開ける穴の大きさは、ある程度調整できるのだと思います。作例にある、グラデーションは、そういう技術なのかもしれません。


そんなわけで、ガリ版は、単純に実用一辺倒の、もっと便利な物が出てきたら滅んでも良いような物ではないのです。
手仕事の版画芸術の一つとして、残っていって欲しい物です。

幸い、父の所に、何種類かのヤスリや鉄筆もあるらしいし、若林さんも相当乗り気なので、多忙な日々ですが、なんとか夏休みには極私的ワークショップが出来るのではないかと期待しています。

そのうち、作品を掲載できるかな。
*そうそう、ここを見てる古い知り合いの方で、私のつくった年賀状や暑中見舞いなど、ガリ版「作品」が手元にある人は、是非連絡を!!




こうやって、ひょんな所からつながっていくのは本当に楽しい。


仕事もこんなかんじだったらいいのにねえ。

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