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会社を悩ます問題社員の対応

会社を悩ます問題社員の対応,訴訟リスクを回避する労務管理

正社員候補者であっても,まずは有期労働契約を締結するというやり方について

2014年04月05日 | 試用期間

試用期間を設けても本採用拒否が無効と判断されるリスクがあるので,当社では正社員候補者であっても,まずは全員,有期労働契約を締結しています。その上で,正社員に相応しければ正社員として登用し,正社員に相応しくなれば期間満了で辞めてもらっています。いいやり方だと思うのですが,いかがでしょう?

 

 正社員について,試用期間を設けたとしても,本採用拒否(留保解約権の行使)が,解雇権濫用法理(労働契約法16条)により無効とされるリスクがあることから,最初から正社員として雇用するのではなく,まずは有期労働契約を締結して正社員と同様の職務に従事させ,労働者に問題があれば雇止めし,問題がない場合には正社員として登用することがあります。
 このようなやり方の法的効力は,どのようなものなのでしょうか?

 判例上,労働者の適性を評価・判断するための有期契約期間は,契約期間の満了により労働契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き,試用期間として取り扱われることになり,有期労働契約期間中の労働者が正社員と同じ職場で同じ職務に従事し,使用者の取扱いにも格段変わったところはなく,また,正社員登用時に労働契約書作成の手続が採られていないような場合には,原則として解約権留保付労働契約と評価され,本採用拒否(留保解約権の行使)が許される場合でない限り,労働契約を契約期間満了で終了させることができないことになります(神戸弘陵学園事件最高裁第三小法廷平成2年6月5日判決)。
 したがって,労働者の適性を評価・判断することを目的とした有期労働契約を締結した場合に,契約期間満了時に問題社員との労働契約を終了させることができるようにするためには,契約期間の満了により労働契約が当然に終了する旨の明確な合意を書面でしておくとともに,正社員に登用する労働者については正社員登用時に労働契約書作成の手続を確実に採っておくべきことになります。

 弁護士がアドバイスを求められた場合は,上記判例を踏まえ,訴訟になっても勝てるように厳密な労務管理をして下さいとしか言うことができませんが,実際上は,判例が要求する要件を満たしているか否かにかかわらず,有期労働契約の形式を採っていた場合の方が,長期雇用に対する期待が低いことが多いせいか,辞めてもらいやすく,紛争になりにくい傾向にあるようです。
 どこまで厳密に対応するかについては,訴訟になった場合の法的リスクを踏まえた上で,経営者が判断すべきこととなります。

 

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試用期間は6か月にすることをお勧めしています

2014年04月04日 | 試用期間

試用期間の長さはどれくらいにすべきですか?

 

 試用期間の長さとしては,1年程度までであれば有効となるケースが多いと考えられますが,3か月か6か月の会社が多い印象です。
 したがって,試用期間の長さは3か月か6か月にしておけば無難だと思いますが,私の個人的見解としては,本採用可否の判断を慎重に行うためにも,試用期間は6か月にすることをお勧めしています。
 理由は以下のとおりです。

 本採用拒否(留保された解約権の行使)は,試用期間中にしなければならず,試用期間満了により解約権は消滅することになりますので,使用者は,本採用の可否については,試用期間満了前に余裕を持って判断し,当該試用者に対して通知する必要があります。
 30日の解雇予告期間を設ける場合は,試用期間満了の30日以上前に解雇予告をしておく必要がありますから,3か月の試用期間の場合,実質2か月で本採用の可否を判断することになります。
 4月1日採用の正社員の場合,4月末から5月上旬にかけて日本はゴールデンウィークで休みですから,本採用の可否を5月末までに判断することは困難かもしれません。
 本採用拒否(解雇)の理由となる事情は,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」に限られるわけですから,そう簡単には見つからないはずです。
 すぐに見つかるような事情でしたら,採用の時点で知ることが期待できた事実と評価されることが多いですから,その事情を根拠に本採用拒否(解雇)をすることはできません。
 このような理由から,私は,試用期間を6か月間とすることをお勧めしています。

 

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解雇予告を考えなくていいのは,入社日から最初の14日間だけ

2014年04月04日 | 試用期間

試用期間中の解雇であれば,解雇予告とか,解雇予告手当の支払とかはいらないのですよね?

 

 この質問は,おそらく,労基法21条4号の「試の使用期間中の者」が,解雇予告に関する労基法20条の適用を除外されているようにも読めることから出てきたものと思われます。
 しかし,労基法21条但書では,「第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては,この限りでない。」と規定されており,解雇予告を考えなくていいのは,入社日から最初の14日間だけです。
 入社から2週間以上経ってしまえば,試用期間中の社員であっても,解雇予告又は解雇予告手当の支払が必要となります。

 

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試用期間満了前の本採用拒否は紛争を誘発しやすい

2014年04月04日 | 試用期間

試用期間満了前に本採用拒否(解雇)することはできますか?

 

 試用期間満了前であっても,社員として不適格であることが判明し,解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合であれば,本採用拒否(解雇)することができます。

 試用期間中に社員として不適格と判断された社員が,試用期間満了時までに社員としての適格性を有するようになることは稀ですから,使用者としては早々に見切りをつけたいところかもしれません。
 しかし,その後の努力次第では試用期間満了時までに社員としての適格性を有するようになることもなくはありませんので,本採用拒否(解雇)することを正当化するだけの客観的に合理的な理由がある場合であっても,本採用拒否(解雇)を試用期間満了前に行うことが社会通念上相当として是認されるかどうかについてもよく検討する必要があります。
 また,試用期間中の社員の中には,少なくとも試用期間中は雇用を継続してもらえると期待している者もおり,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)には紛争を誘発しやすいという問題もあります。
 したがって,基本的には,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)が認められそうな事案であったとしても,よほどひどい事案でない限り,退職(解雇)日は試用期間最終日とすることをお勧めします。

 

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「魅力があって雇いたい」と思う時だけ採用する

2014年04月04日 | 試用期間

採用面接時に能力が低い応募者だということが判明した場合であっても,就職できないでいる応募者にチャンスを与える意味で採用し,試用期間中役に立つ人材と判断できたら本採用拒否せずに雇い続けるというやり方をどう思いますか?

 

 「ダメなのは分かっていたけど,彼も就職できなくて困っているようだし,もしかしたら会社に貢献できる点も見つかるかもしれないから,チャンスを与えるために仮に採用してあげたんだ。」という発想は,雇用主の責任の重さを考えると,危険な考え方です。
 個人的には,魅力を感じない相手だけど,もしかしたらいいところが見つかるかもしれないから,とりあえず付き合ってみて,ダメだったら別れればいい,という乱暴な発想に似ているとさえ思います。
 使用者は,その応募者に魅力があって雇いたいと考える場合に初めて,雇うべきなのです。
 「雇ってあげる。」という発想はトラブルの元ですから,そのような発想は持たないよう,十分に注意する必要があります。
 採用を決める時点で,本採用拒否(解雇)したくなるような事情のある応募者がいた場合は,初めから不採用としなければならないと思います。

 

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