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会社を悩ます問題社員の対応

会社を悩ます問題社員の対応,訴訟リスクを回避する労務管理

安易に本採用拒否することはできない

2014年04月04日 | 試用期間

試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否できるのですよね?

 

 試用者の本採用拒否は,本採用後の解雇と比べて,使用者が持つ裁量の範囲は広いと考えられており,三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決も,試用期間における留保解約権に基づく解雇(本採用拒否)は,通常の解雇と全く同一に論じることはできず,通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものと判示しています。
 具体的には,試用者の本採用拒否は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」ということになります。
 ただし,それなりの理由がなければ本採用拒否はできませんので,安易に本採用拒否することはできないものだと理解しておく必要があります。

 

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「採用面接時からダメなやつなのは分かっていた」は通用しない

2014年04月04日 | 試用期間

三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決のいう「解約権留保の趣旨,目的」とはどういう意味ですか?

 

  「解約権留保の趣旨,目的」と言われても,直ちにはイメージをつかみにくいかもしれませんが,上記大法廷判決は,次のように説明しています。
 「換言すれば,企業者が,採用決定後における調査の結果により,または試用中の勤務状態等により,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において,そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが,上記解約権留保の趣旨,目的に徴して,客観的に相当であると認められる場合には,さきに留保した解約権を行使することができるが,その程度に至らない場合には,これを行使することはできないと解すべきである。」
 試用期間中の解雇は緩やかに認められるというイメージがありますが,それは,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」に基づく本採用拒否について言えることであって,採用当初から知り得た事実を理由とした場合は,緩やかな基準で解雇することはできないということを理解しておく必要があります。
 例えば,本採用拒否(解雇)したところ,「本採用拒否の理由となるような事情がない。」といった趣旨の指摘がなされたことに対する反論として,「本採用拒否の理由となるような事情がないようなことを言っているが,そんなことはない。採用面接の時から,あいつがダメなやつだということは分かっていた。」というようなものは,通用しないことになります。

 

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試用期間中の社員の本採用拒否は,解雇の一種である

2014年04月04日 | 試用期間

試用期間中の社員であれば,本採用拒否は自由にできますよね?

 

 使用者と試用期間中の社員との間では,既に留保解約権の付いた労働契約が成立していると考えられる事案がほとんどですから,本採用拒否の法的性質は,留保された解約権の行使であり,解雇の一種ということになるのが通常のため,解雇権濫用法理(労働契約法16条)が適用されることになります。
 採用の場面とは異なりますから,試用期間中だからといって,自由に本採用拒否(解雇)できるわけではありません。
 三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決も,「被上告人に対する本件本採用の拒否は,留保解約権の行使,すなわち雇入れ後における解雇にあたり,これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない。」と判示しています。

 

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有期契約労働者には試用期間を設けず,最初の契約期間を3か月にするなどして対処する

2014年03月13日 | 試用期間

有期契約労働者についても試用期間を設けることができますか?

 

 民法628条は,「やむを得ない事由」があるときに契約期間中の解除を認めていますが,労契法17条1項は,使用者は,有期労働契約について,やむを得ない事由がある場合でなければ,使用者は契約期間満了までの間に労働者を解雇できない旨規定されています。
 労契法17条1項は強行法規ですから,有期労働契約の当事者が民法628条の「やむを得ない事由」がない場合であっても契約期間満了までの間に労働者を解雇できる旨合意したり,就業規則に規定して周知させたとしても,同条項に違反するため無効となり,使用者は民法628条の「やむを得ない事由」がなければ契約期間中に解雇することができません。
 このため,例えば,契約期間1年の有期労働契約者について3か月の試用期間を設けた場合,試用期間中であっても「やむを得ない事由」がなければ本採用拒否(解雇)できないものと考えられます。
 3か月の試用期間を設けることにより,「やむを得ない事由」の解釈がやや緩やかになる可能性はないわけではありませんが,大幅に緩やかに解釈してもらうことは期待できないものと思われます。
 したがって,有期契約労働者についても試用期間を設けることはできるものの,その法的効果は極めて限定されると考えるべきことになります。

 では,どうすればいいのかという話になりますが,有期契約労働者には試用期間を設けず,例えば,最初の契約期間を3か月に設定するなどして対処すれば足ります。
 このようなシンプルな対応ができるにもかかわらず,有期契約労働者にまで試用期間を設けるのは,あまりセンスのいいやり方とは言えないのではないでしょうか。
 正社員とは明確に区別された雇用管理を行うという観点からも,有期契約労働者にまで試用期間を設けることはお勧めしません。

 

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正社員として長期間働き続けてくれる人を募集するときは,最初から正社員を募集する

2014年03月13日 | 試用期間

試用期間の趣旨で有期労働契約を締結し,正社員に相応しければ正社員として登用し,正社員に相応しくなれば期間満了で辞めてもらうやり方はどう思いますか?

 

 正社員について,試用期間を設けたとしても,本採用拒否(留保解約権の行使)が,解雇権濫用法理(労働契約法16条)により無効とされるリスクがあることから,最初から正社員として雇用するのではなく,まずは有期労働契約を締結して正社員と同様の職務に従事させ,労働者に問題があれば雇止めし,問題がない場合には正社員として登用することがあります。
 このようなやり方の法的効力は,どのようなものなのでしょうか?

 判例上,労働者の適性を評価・判断するための有期契約期間は,契約期間の満了により労働契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き,試用期間として取り扱われることになり,有期労働契約期間中の労働者が正社員と同じ職場で同じ職務に従事し,使用者の取扱いにも格段変わったところはなく,また,正社員登用時に労働契約書作成の手続が採られていないような場合には,原則として解約権留保付労働契約と評価され,本採用拒否(留保解約権の行使)が許される場合でない限り,労働契約を契約期間満了で終了させることができないことになります(神戸弘陵学園事件最高裁第三小法廷平成2年6月5日判決)。
 したがって,労働者の適性を評価・判断することを目的とした有期労働契約を締結した場合に,契約期間満了時に問題社員との労働契約を終了させることができるようにするためには,契約期間の満了により労働契約が当然に終了する旨の明確な合意を書面でしておくとともに,正社員に登用する労働者については正社員登用時に労働契約書作成の手続を確実に採っておくべきことになります。

 当初の労働契約が有期労働契約の形式を採っていた場合の方が,長期雇用に対する期待が低いことが多いせいか,正社員の本採用拒否の形式を取るよりも辞めてもらいやすく,紛争になりにくい傾向にあるようですが,他方で,こちらが働き続けて欲しいと思っていてもすぐに辞めてしまいやすいという傾向もあります。
 また,正社員として長期間勤務し続ける希望が強い応募者は,最初から正社員として採用してもらえる会社に就職する傾向が強いですから,最初の契約を有期労働契約とした場合,長期雇用を希望する正社員タイプの人材を確保する競争では不利になる面があることは否めません。
 よほど魅力の高い職場,業務内容だとか,有期労働契約とすることに特別な意味があるのであれば別ですが,通常の中小企業においては,正社員として長期間働き続けて欲しい人材を募集する場合には,最初から正社員を募集し,よく応募者を見て慎重に選考して採用した方が,いい結果が出るように思います。

 

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