凡人として生きるということ (幻冬舎新書
さくさくぅーと読める本です。
これは押井さんのオヤジ礼賛本ですな。
みんな早くオヤジになったらよろしということです。
オヤジは狡猾です。本音と建前をしっかりと使いわける大人です。
正論ばかり振りかざしません。時に都合のいい嘘をつくのもへっちゃらです。
オヤジは自分なりの価値観をしっかりともっています。
だから外見(うわべ)だけの表層的な価値観に惑わされることがありません。
周りから見てかっこ悪くても、自分なりに守るものがあるのでへっちゃらです。
オヤジは自由です。自由というのがしっくりこないのであれば、自在です。
自由の反対は規制です。それはある枠の中でゲームをすることを意味します。
枠が決まるから自由という考えも出てくるのです。
であれば、自らの枠が何であるかを自覚して、他者と比較することなく、自己の枠の中で自由自在にゲームを楽しむ術を磨きなさい。
そうすれば、閉塞感漂う日常も色あせることなくビビッドなビジュアルとして見えてくるはず。
オヤジ達はずるいから、こういうことに気が付いていても若者には正面から教えません。特にいつまでも若いと思っている輩には。
残念なのは、この路線で最期まで通してくれたら面白かったのにー。
そこは心優しい押井氏。
途中から、なにもオヤジにならなくてもそれなりに生きていけるというフォローをこれでもかといわんばかりに入れてくるわけです。
なので、若い人が読むとミスリードしちゃうのではないかと心配になります。
自分の中で面白かったのは、たまたま、SDカードリーダーがおまけについていたので買った『DIME』の中で映画監督の北野氏と俳優の福山さんが同じようなことと別のインタビュー記事で話していたことです。
北野氏曰く、
「いまの時代は強制的に夢を持たせようとしたから、夢のないやつがそれを社会のせいにして、ナイフで刺しちゃったりするでしょう。でも、夢なんて持たなくてもいいだって言わなきゃいけないんだと思うよ。下町だったら、いいんだよ、お前バカなんだからで終わるから(笑い)。別に、人に誇れるものなんてなくていいだよね。ないやつだっているし、ない自由だってあると思うよ。」
福山氏曰く、
「30代半ばから40代にかけてというのは、夢と現実の狭間で葛藤することがすごく増えてくると思うんです。35年ローン組んじゃったから何も出来ないよとか、天井が決まって動けない。でも決まってしまったからこそ、コントロールできるともいえるわけで、そんなに悲観すべきではないと思うんですよ。決まった枠組みの中で、日々楽しく仕事をするための方法を見つけ出していければいいと思うんですけどね」
ということで、ようはマスコミなどで流れるデマゴギーに流されるのではなく、正面から自分の人生に向き合える大人=オヤジになったほうが楽に(自在)に生きていけると。