ウェブ国産力―日の丸ITが世界を制す (★本の詳細はこちら)
まずまずの本というのは自分にとっては既知だが、他の人にとっては有益ではないかというジャンルの本をここで紹介しようかと思う。
ということでこれもサクッと通勤時間内で読み終えた。
第一章と第二章はぜひ読んでほしい。
・現在の検索技術は未完であること。
・究極の検索は他人のデータではなく、個人の偏在するリアル情報をアグリゲートした先にあること。
・それをするための有力なデバイスとして日本のケータイが存在し、社会インフラとしてもそれを実現できる国は日本が最有力であること。
以上のようなことを自分も常日頃考えているのだが、同じような考えを持つ人は多いのだろうな~。
そしてこの本の最大のスマッシュヒットはエピローグにある。これが言いたくてこの本はあるのではないかと思える内容なので一部紹介しておきたい。
以下の内容は著者の佐々木氏が「未来検索ブラジル」の竹中氏にインタビューしたものである。
(前略)
佐々木:グーグルに行ってみようと思ったことはない?
竹中:新規株式公開の前だったら、グーグルは行ってみたら面白い会社だったんじゃないかと思う。でも今はどうかな。もう優秀な人はグーグルに行かないんじゃないの。だってさ、今さら行ってもつまらないよ。
佐々木:技術者の理想の会社ではないということ?
竹中:技術者の理想の会社だというメッセージを伝えているのは偉いと思うけど、それが本当に技術者にとって幸せなことなのかどうか。そういうことに疑問を持ってしまうんだよね。少なくとも僕がグーグルに行ったらつらい気がする。だってみんなでホワイトボードを囲んで、自分のやってることをアピールするなんてねえ、そんなことやりたくない。合わせられないよ。
佐々木:しかしいまの日本でも、グーグルの人材吸収力は凄いけど。
竹中:検索エンジンまわりの人たちと集まって酒を飲む機会があると、いつも話題になるのは、グーグルって「人材クローラー」だよね、という話。人材をもの凄い勢いで吸い込んでしまっている。でもそうやって凄い人材を吸い込んでいる割には、アウトプットが少ないよね。ベンチャーを立ち上げられるような人を揃えている割にはね。
佐々木:最近のグーグルは対マイクロソフトを意識しすぎているように思える。
竹中:SaaSを推進し、グーグルだけで何でもできるようにするという戦略を遂行しているのは分かるけれど、でもエクセルやパワーポイントの真似をしたソフトを作るのが、技術者として面白いか?グーグルが吸い込んでいる人たちって、みんな生粋の技術者で、世の中を自分の技術で変えたいと思っている人たちだよね。そういう人がどうしてグーグルで表計算とかワープロとか作っているわけ?おまけに完全自前じゃなくて、外から買ってきたりしているしさ。みんな何しているんだよ。タダのご飯を食べてゴロゴロしているだけなわけ?そうじゃないと思うけど、そう見えちゃうんだよね。
佐々木:結局のところ、いったい何をやろうとしているのかわからない。
竹中:いくらガワをそろえたって、コンテンツがないとダメだよ。グーグルは入れ物産業をやろうとしてるわけ?カネもあって企業的には自由度も高いはずなんだけどね。
(中略)
佐々木:この業界では、一生使い切れないオカネができてしまったら、その後どうするのか?というのが現実的な問題として存在している。
竹中:あがちゃったプログラマー問題ね。海外に行って悠々自適で暮らす人もいれば、オカネがあっても仕事を続ける人、あるいは満たされなくて社会貢献に行く人とか。でも満たされてても満たされなくても、本当のプログラマーだったら、プログラムを作り続けているんじゃないかな。そこでプログラミングを止めてトロピカルカクテルに行っちゃうようなヤツは技術者じゃなくて、単なる資本主義の犬だよ。
(後略)
盛者必衰ですな。
追伸:件のグーグルであるが、各社内定がでて就職活動もひと段落という時期だが、優秀な大学に対しては、個別にインターン募集のメールを送りつけているとのこと。人材クローラーの名に恥じないアクティブさである。