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COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン) 2010年3月号 貧困大国の真実 レビュー

2010-02-20 | レビュープラス
COURRiER Japon ( クーリエ ジャポン ) 2010年 03月号 [雑誌]

講談社

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このレビューはR+(レビュープラス)さんから献本いただいて書いています。
R+さんありがとうございます。

さて、3月号の特集は”貧困大国(アメリカ)の真実”です。
貧困大国=アメリカ
という方程式は一見すると変ですよね。
だって、2008年の世界のGDPの順位でいえば

(単位は10億US$)
1位:アメリカ合衆国 14,264.60
2位:日本 4,923.76
3位:中国 4,401.61
4位:ドイツ3,667.51
5位:フランス 2,865.74
6位:イギリス 2,674.09
7位:イタリア 2,313.89
8位:ロシア 1,676.59
9位:スペイン 1,611.77
10位:ブラジル 1,572.84

とダントツの世界第1位なのです、なのに国内には恐ろしいほどの貧困が蔓延している。その理由は一部の富める者を除いてほとんどの国民が貧困層に位置するという究極の格差社会がそこには存在しているからです。

このアイロニカルな現実を今月号のクーリエ・ジャポンは、気鋭のジャーナリストである堤未果氏に責任編集を依頼して特集しています。堤さんといえば、『ルポ 貧困大国アメリカ』の著者であり、この特集の責任編集者としてはまさしく適任者といえるでしょう。以前、私もこの本を読んでブログでもレビューしていますが、まさにその内容は衝撃的のひとことにつきます。今回の特集では、その衝撃度が更に深まったといっても良いと思います。

さて、今回の特集ですが、私としてはその編成にとても好感がもてました。というのも特集記事に入る前に、まず堤氏の冒頭インタビューで特集で取り上げる「食、医療、教育、犯罪」の各分野の貧困の実態をポイント解説したうえで、各カテゴリごとに良質な記事をセレクションして紹介してくれているからです。このようなツリー型の構造を持った特集を組んでくれるというのは、読者に対して非常に誠実に向き合っているなと思えました。

更には、特集の終わりには堤氏自身のコラムがあり、そこには”戦争経済をはじめ、失業率に貧困、教育に医療、私たちが抱える問題は、センセーショナルな報道やリーダー個人のみに焦点を当てた「点」だけ見ていては実態が見えなくなる。それらの点同士をつなぎ合わせ、全体を「面」で見ることことで問題の本質をすくい取るために、本誌「クーリエ・ジャポン」のような雑誌をはじめ、多角的な視点からの情報源は今後ますます価値を持つだろう。情報リテラシーは自己責任だ”という記述があります。

この「情報リテラシーは自己責任だ」というフレーズは私には大変グサッと刺さりました。私達はいまや情報をこうして自由に発信し、探そうと思えばそれこそ世界中の情報を検索できるのに、つい情報に対して怠惰な姿勢で向き合ってしまい、その結果、抜き差しならない状況に追いやられてしまう。それで不平不満を言っても仕方がない。もっと現実と正面から向き合い、力強く生きていかなくてはならないという気づきをもらえました。

で、前置きがながくなりましたが、特集の中身をちょいと紹介すると、

1日2万人のペースで増え続ける「フードスタンプ」受給者の衝撃

これは米国版ワーキングプアの実態を知る手がかりといえる内容で、月300ドル相当の食糧配給券を申請する人が増え続けている。働いていても申請せざるを得ない状況に追いやられる。泣けるのは、フードスタンプを受けるということは屈辱的な行為であるにもかかわらず、手にすることで得られる安心感は何物にも代えがたいということです。辛いですね。でも、日本でも子供手当てが支給されるとそれを当てにする人は増えるだろうから決して他人事ではありません。

ちなみにこのフードスタンプの構造は負の連鎖を引き起こすトリガーになっているのです。なぜなら、フードスタンプで買う食料品というのは、その大半がカロリーだけが高くで栄養価のないジャンクフードに化けるからです。貧困層の人たちは、光熱費にも困っているわけで、わざわざ調理して食べるなんて余裕がないわけです。よって常温でも長期保存が可能な食材を買ってしまうわけです。これが、ひいては肥満や健康障害に結びつき、医療費が払えない人々を更に悲惨な状況へと陥れるまさに無間地獄が待ち受けているのです。

オバマの「医療改革」はこうして失敗した
人間の尊厳を奪う「医療崩壊」

ここでは、オバマ大統領が変革の目玉にしていた公的保険による国民皆保険が保険業界のロビー活動に屈し、いつの間にか保険会社のみの保険制度になってしまったからくりにせまるとともに、弱者を救済するどころか搾取する対象としかみなしていない医療保険会社の実態を雑誌タイムの記者が自らの体験をもとに赤裸々に紹介しています。

学生を借金漬けにする教育システム

私は教育制度に関しては、アメリカは日本よりも良いのではないかと10年前くらいまでは思っていましたが、チャータースクールが流行だしたころからおかしくなってきているのではないかと危惧していましたが、もうアメリカの教育は瀕死の状況のようです。金がないとまともな教育をうけられないというのでは、アメリカンドリームももはや死語でしょう。私も奨学金のお世話になって学校を出たくちですが、働いても返済できないほどのローンを受けなければ学歴が取得できないとなると高学歴ワーキングプアが増えつつある日本でも学歴と貧困の相関関係が固定化されていくのかと思うと暗澹たる気持ちになります。

民営化で加速する「刑務所ビジネス」

軍隊が貧困層の受け皿となっていることは知っていましたが、いまや刑務所も民間委託する社会では、委託会社にとっては、犯罪者=営業ノルマを達成するための玉にしかならないという現実には背筋が凍りました。ここまでいかなくても日本でも駐車違反を切る仕事などはその傾向にありますし、いまは派遣村などと友愛的な対応もいつなんどき、ホームレスの人たちを営業目的で刑務所に収容する世の中にならないともかぎらないと思うとぞっとしました。

そのほか特集以外の記事で気になったのは、

世界が見たNIPPON から

カプセルホテルで住民登録する東京の”隠れホームレス”

越境者的ニッポン から

憂国の情、抑えがたく

佐藤優の国際ニュース解説室 から

鳩山氏は、日本の政治史でも稀に見る知識人の首相です

などが面白かったですね。

先の二つは、統計数字にだまされるなということです。ホームレスの数、自殺者の数、いずれも大本営発表にはからくりがあるということ。まさに情報リテラシーは自己責任に通じる話です。

三つ目の話も、確かに鳩山首相はスタンフォードのドクターでORの研究者でした。ですから政治における重要事項も冷静に判断を下すはずという論調ですが、かの最も賢い人々が指揮したベトナム戦争はどうなったのか、そのとき陣頭にいたのがORの権化であるロバート・マクナマラであったことを思い起こせば、この記事の真偽もまさしく自己責任で判断するのがよいでしょう。

行き過ぎた市場原理主義に対しては、グローバル化の問題、リバタリアン、フリードマン、ハイエクといろいろと論壇系の方々の理論的かつ専門的な話も多々あるかと思いますがまず目の前の現実を知ることが第一でしょう。そういう意味で今月号のクーリエ・ジャポンも買いの一冊といえると思います。

追伸:

今回の特集をフォローする意味では堤氏が続編を書いているので、こちらも読んでみてはいかがでしょうか?

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)
堤 未果
岩波書店

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また、情報リテラシーということで言えば、アメリカは貧困に対してそれを世界から根絶する計画をシミュレーションできる能力を持った人材を輩出しているという点もまた真実であります。U2のボノ氏の師匠にあたる人が書いた本を紹介しておきます。

貧困の終焉―2025年までに世界を変える
ジェフリー サックス
早川書房

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この本も翻訳するのに随分と時間がかかりました。それだけ世界の流れから遅れてしまうわけですが。

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