質問メール…「過去問学習は必要ですか」…にまとめて応えて
この時期。「過去問」の学習を意識される人が少なくないようです。過去問の学習についての質問を受ける機会が多くなってきました。
たしかに、行政書士試験に限らず、国家試験の受験界では「過去問学習」の重要性が力説されています。行政書士試験では、平成11年まで過去問は必ず学習すべきものでした。
というのは、平成11年まで試験問題は旧自治省を中心として作成されていたわけです。ということは、それぞれの試験科目の専門家ではない、試験問題の作成に精通していない役人が問題を作成していたわけです。
彼らは。ボツ問がこわい。役人の性ですね。おのずから作問は、過去に出題されてきたような問題をなぞる傾向にあったのです。その証拠に、平成11年までの出題を検討すれば、一目瞭然。同じような問題が手を変え、品を変えて出題されています。
ここでは過去問をしっかり学習する意義があったわけです。
平成12年に試験制度が変わりました。役人に代わって法律系の大学教授などの専門家が問題を作成する制度に変わりました。試験委員は、それぞれの分野のエキスパートであるわけですから、ボツ問などありえないと思うわけです(実際、ある年のボツ問に、某大学教授「オレの作った問題のどこがおかしいんだ」と…)。しかも、その道のプロなんですから、過去問などあまり意識してこなかったのです。だから、試験の傾向は右往左往していたわけです。しかも、元試験委員の某大学教授は、「過去問など見たこともない」と発言されています。まあプライドなんでしょうか。それでも、試験問題はまだ大きく様変わりしていませんでした。
ここでもまだ過去問をじっくり学習する意義はありました。
平成18年。試験制度がまたまた大きく変わろうとしています。まだ誰も試験問題を見てはいないのですが、一つのヒントは昨年の本試験問題だと考えられます。すでに18年度の試験が改革されることが公表されていたわけですから、これからはこんな試験だよというメッセージと考えるのが自然でしょう。だって、法的思考力を問うなどといっても漠然としすぎているからです。
もうここでは過去問など学習する意義は従来ほどはないのです。
昨年の問題。過去問解いてきたからといって解けないですよ。ということは、過去問につがみつく学習は上策とはいえません。過去問学習の必要性をかつてと同じように説くことには疑問を感じますね。
要するに、過去問などやって合格できる時代は過ぎ去ってしまったわけです。
したがって、過去問の学習に多くの貴重な時間を割くことや過去問で解法テクニックをマスターなどというのは、まったくナンセンスですね。
では、まったく学習する必要がないかといえば、ノーですね。条文の知識の確認、判例の判旨の確認というような面ではそれなりの意義はあります。どんなに試験の傾向が変わろうとも、出題されるのは基礎法学、憲法、行政法、民法、商法なのですから。「法的な思考」といっても、出発点は条文なのですから。
条文を理解している、判例を理解している。これらを当然の前提とするような出題がなされると考えていいでしょうね。ですから、このための学習の一環として過去問学習を位置づけていくべきです。