別館 兄弟仁義

超常現象ドラマの兄弟愛と家族愛をうっとおしくつつくブログ

失楽園と運命の子

2015-12-13 10:22:45 | シーズン9
ここ二回のストーリーはなかなか色々感じさせられるものが多くて、今回はその続きの余談。

以前、海外サイトでこの流れが聖書における“失楽園”のテーマを含んでいるという投稿を見かけてた。
エキサイト翻訳で飛ばし読みなので、大まかにしかわかってないんだけど、なるほどと思いましたよ。

バンカー(賢人の館)という、この世で最も安心で安全なはずの場所は、ケヴィンの死によって穢された。
しかもそれは捕えていた悪魔クラウリーによってではなく、住人であるサムの中にいたガドリエルが蛇となり、蛇を送り込んだのはメタトロン。二人の天使たち。
聖書世界によると、ガドリエルは堕天使の一人で、アザゼルを手助けしたこともあるらしい。SPN界での黄色い目とは関係ないよ。
その名をバンカーに入り込んだ天使につけたのも、スパナチュらしい皮肉な凝りよう。
ちなみにエゼキエルは天使の名じゃなく(そういう天使もいるのかもしれないが)、『エゼキエルの書』を書いた預言者。その名をかたった天使が預言者であるケヴィンを殺すのもスパナチュらし…(やめてくれ)

バンカーというエデンの園ではウィンチェスター兄弟がアダムとイブ。そのなかで弟のために天使を取り込むというリンゴを受け取ってしまったディーン。禁断の果実であり蛇でもあるガドリエル自身が、本来のエデンを守りきれ無かった罪を背負ったキャラクターという二重構造になっている。

サムの心情を“混乱する”と表現しつつ感じていたガドリエルが、ディーンを殺す気もなかったのは容易に想像つく。迷いながらもガドリエルを信じたディーンによって、バンカーという楽園、そして“サムというディーンの楽園”(聖域)に引き入れられていたわけです。聖域を守れなかったディーンは、かつてのガドリエル自身の姿であり、メタトロンの甘言に踊らされただけでなく、ディーンが自分を追い出そうとしていることに気付いた時に、サムと同化していた彼はその拒絶に行き場を失ったのもあるんだろう。

失楽園のテーマは深くて面白いし、この後のカインとアベルの話もまた繋がってゆく。
エデンを追い出されたアダムとイブが、苦しみや罪を重ねながらもそれを糧として変化してゆく人間の原型を選んだならば、ウィンチェスター兄弟もまた、どんな過ちを繰り返しても、絆に揺らぎが起きようと、また先に進む道を見つけ出すのがスーパーナチュラルのストーリーだと思ってる。


・運命の子、サム

以前の記事で、SPNの主役は兄弟二人だが、どちらが発端になってるかと言えばそれはサムだと書いたことがあります。
Staring Jared Padarekiだからという理由はおいても(笑) 物語の主軸がサムが“運命の子”であることから始まってるから。
生まれながらに、いや生まれる前から“選ばれし”その運命が、他の人々の運命もその手に引きつけ、変えてゆく者。
ディーンもまた選ばれ過酷な運命を背負わされているけれど、サムがまず発端であり、それに準じてディーンも大きな役目を追う順になってる。サムがルシファーに選ばれたがゆえに、ディーンもミカエルに選ばれ、サムを蘇らせるために地獄に落ちたディーンが最初の封印を破った。その役目も本来は父のジョンが受けるものだった。
そして今回、ルシファーに選ばれたアベルを救うために兄のカインが悪魔になった経過が語られ、その刻印をディーンが引き継いだ。これはサムの試練や悪魔の血と対をなしていて、ついに大きなディーンのターンになる。兄は初めて、自分の意志の及ばぬ大きな力に心身共に使われる恐怖―サムと同じものを味わうことになる。

サムを中心に、弟を守るべく先に生まれたディーン。生み出す親として選ばれたジョンとメアリー。
渦の目はいつも兄弟二人だけど、サムという運命の子が物語を起こしてる。メタトロンも賛成するはず(笑)
最近のシーズンではサムの描き方に色々な問題点があるのは認めるけれど、運命に選ばれるサムを守るためにことを起こしてしまうディーンという点では実は変わってない。そのディーンをまた助けようとするサム、その順繰りでスパナチュはシーズンを重ねてる。

波紋と批判を呼んでいるカーヴァー氏シーズンのサムに結構目が行ってしまう私。兄びいきがゆえに兄と同化してるとも言えるけど(笑) 言葉が足りないのは毎度兄弟揃ってだけど、今シーズンのサムはわざと兄を突き放しているので、それが逆効果になるか否かはストーリー上のことであって、彼の心情としてはわかるんですよ。
このあとの回も、サム衝撃語録は続くけど、それにいちいち解釈を付けるのも野暮なんだけどね。弟君の意図はわかるので、つい弁明したくなる(笑)
そしてディーンがそれにショックを受けても、自分と違うサムの望みを理解しがたくても、心の深い底では気付いているはず。
今度はディーン自らが請け負った大きな枷により、兄弟は違いをすり合わせていくんですよ。



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