田山花袋『田舎教師』 感想です。
若い野心の行く先に待つ、大人の纏う諦念との衝突がとても苦い作品でした。
田舎の学校の教師に就いた青年・清三の、貧乏を身に背負いつつも若き情熱を持った日々が、俗な世の中に堕ち、迷い立ち行かず、心に陰りが生まれていく物語。
先生になったばかりの清三は、住み家を探したり友人との交流に笑ったりと暮らしを固め、その志と思いはまだ上向きでした。しかし気づけば霧中におり、見えない前途が立ち塞がり、繰り返される女性との一夜と流れ出ていくお金……迫りくる行き場のない鬱屈が不安を誘います。挫折してわが身を省みて、一心になって生きる彼の、ある種の純粋性を感じさせる終盤、たどり着いた結末に胸を衝く悲しみがありました。
小説の前半、中盤、後半でそれぞれ雰囲気が異なる、おもしろい特徴のある物語でした。純文学でありながら、一人の青年の苦心の生を描いた青春小説とも読めます。
書かれたのは明治42年(1909年)、その当時の風俗も垣間見えて興味深かったです。
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