goo blog サービス終了のお知らせ 

調剤薬局の休憩時間

なかなか外では話せない(?)薬局の話です。
薬の使い方、保険・レセプトなどにもふれたいと思います。
基本雑多です。

在庫管理5(発注点を考える)

2010-06-02 07:23:55 | 在庫管理
前回の続きです。

月の使用量が1500錠のZ錠に関してです。

月26日の営業日数があるとして、1500/26=57.7錠が1日あたりの使用量となります。
約60錠です。
375錠は1か月の余裕なので、6日分の余裕があることになります。

もし万が一、3錠分3で30日の処方があったとしても4人分は確保できています。
もうひとつ。1日の使用量から見ても、十分すぎる在庫量です。

スタッフで話し合った結果、これなら十分な在庫量だろうという結論に至りました。
そして1日平均使用量60錠に、余裕の375錠を加味した435錠を通常の在庫量として仮定しました。

最小包装単位は100錠ですから、在庫が375錠で発注すると通常在庫が475錠になってしまいます。
これではやはり在庫が増える傾向にあります。
十分な在庫量があるのだから、435錠になるように発注する、つまり335錠を切ったら発注してもいいのではないかということになりました。

薬局は薬品を切らすことはできませんし、使用量の動向を読み取ることも難しいところがあります。
これは在庫管理をしている方は常に感じていることではないでしょうか。

とにかくやってみようと言うことで、それぞれの薬品に対し、同様の作業をしました。
その結果、欠品することはありませんでした。
ただ、まだ在庫数が多いかもしれないと言うことで、6日分の余裕を3日分に減らしました。
Z錠で言えば180錠を最低在庫として発注点にしました。
1日平均60錠の使用量なのですから、極端な在庫は必要ありません。

また、月単位では終了の概念がつかみにくいので、週単位に変更しました。
営業日数は平均で26日。月に3.7週の営業ですから、1500錠/月の表記を405錠/週の表記に変更しました。

つまり、Z錠で言えば、
1)平均使用量を週単位で表記
2)発注点は在庫が180錠を切ったときとし、280錠を理想、300錠を超えないようにする
3)発注は木曜日とし、週末に最高在庫数とする
4)過剰在庫になった場合は月末に返品する
というやり方にしました。
これは他の定期処方薬でも同様にしました。

残念ながら全く欠品がなかったわけではありませんでした。
しかし、それはいつも受けていない病院からの長期処方(90日)に対応したからであって、ある意味事故と見なされます。
通常の業務の範囲内であれば問題はありませんでした。

このようなことをスタッフ全員で話し合い、繰り返し細かい調節をしていきました。
結果、在庫回転期間は1.12程度になり、ほぼ理想な在庫管理ができるようになったと思います。

長々とお付き合い下さってありがとうございました。
今回でこの在庫管理はいったん終了です。


在庫管理4(発注点を決める)

2010-05-31 06:34:40 | 在庫管理
月平均使用量をカセットに記載して、しばらく様子を見ていましたが、やはり過剰在庫になってしまいました。
その原因は、「今までどれくらい使ったかがわからないから」というものでした。

当時の薬局の業務形態は次のようでした。
営業日数:6日/週
1日平均枚数:120枚
営業時間:9:00~20:00頃(終了は若干の前後あり)
薬剤師正社員:3人(うちヘルプ1人)
薬剤師パート:5人

また、発注は気がついたときに、できる人が行うようにしていました。
欠品がないようにするためです。
11:00頃と15:00頃の2回、納品がありました。

特定の人が発注をすることも考えましたが、それでは不測の時に発注できなくなってしまいます。
社員3人がすべて休むことも考えなければなりません。

その日の使用量の予測が立てばいちばんです。
そこで、レセコンの来局予定日から割り出そうとしたのですが、大変な作業になるためこれはすぐに断念。
その上新患にも対応できません。

では、ということで、最低在庫量を決めました。

まず、各月の平均使用量をその月の稼働日で割りました。
これで1日あたりの理論使用量が出ます。
しかしこれでは全く余裕がありません。
新患や不規則に来局する患者への備えを確保する必要があります。

ここで役に立ったのが、年間使用量の平均値と各月毎の使用量の差でした。
これは前にも書きましたが約25%。
前述のZ錠で考えてみます。
Z錠は月1500錠の使用量でしたから、25%の含みを持たせると1875錠です。
余裕は375錠です。
当薬局の一般的な処方日数は30日ですから、375/(3x30)=4.17となり、30日処方で4人分、同様に14日分ならば8.93となり、約8人分の余裕ができます。
当日15:00~翌11:00までの間、営業時間で約7時間。これだけで十分でしょうか?
やっぱり不安が残ります。
でもこれは杞憂だったのです。

長くなるので続きます。
ホント、引っ張ってごめんなさい。


在庫管理3(適正在庫を決める)

2010-05-27 07:41:20 | 在庫管理
在庫回転率または在庫回転期間を元に、適正在庫を割り出します。

しかし、すべての採用薬品でこれを計算することは、かなりの労力が必要となります。
そこで私は、まずレセコンから年間の使用量と各月の使用量をCSVでファイルに落とし、これをExcelで読み込ませました。
年間使用量は12で割って月平均使用量を算出しました。
年間使用量から割り出した月平均使用量のカラムとと、各月の使用量のカラムをExcelに作成し、月や季節による使用薬品の動向を探ることにしました。
これらを3年分作成しました。

これらから最低在庫量を決定しようという試みです。
換言すれば、在庫がいくつになったら発注するかという数量です。

当時私が勤務していた薬局は、内科(消化器系)、内科(一般系)、整形外科の3科で処方箋の8割以上を占めていました。その他に眼科、婦人科、皮膚科、歯科などもたまにあり、小児科はほとんどありませんでした。
採用薬剤は約900種類。これは内服、外用すべての数です。

これは結構悩ましい作業で、計算値ではどうにもなりません。
とにかく3年分を見ても、相関性は得られなかったのです。
変動が大きいのは感染症などに関わる薬品で、オンシーズンとオフシーズンでは4倍以上の差がある薬品もありました。
しかも年ごとに使用量が定まるわけではなく、一体いくつが最適な在庫かが見えてきません。

それではと、まず定期的に処方される薬品について平均在庫を算出しました。
これらの使用量は、年間使用量から算出した数量も、月ごとの使用量も大きくは変わらないだろうと考えたのです。

実際、定期処方薬は大きく変動することはありませんでした。
平均使用量と月ごとの使用量の差は大きくても25%程度。
そこで年間使用量から割り出した平均使用量をシールに書いてカセットに貼っていきました。

これが第1段階です。

最低在庫数をどのように決めたのかはまた次回に。
引っ張ってごめんなさい。


在庫管理2(在庫回転率)

2010-05-24 19:30:47 | 在庫管理
今回は在庫回転率です。

簿記や財務諸表の本を読んだことがある方はすぐにわかるかと思います。
物の本には在庫回転率は次の計算式で書かれていることが多いかと思います。
  在庫回転率= 売上原価/棚卸資産額
つまり金額で計算するわけですが、薬局においては数量で計算しても問題ないと思います。
いやいや、うちは納入価は薬価から6%引いてもらっているから……という方もいるかもしれませんが、数量でも何ら問題ないでしょう。
実際私も在庫管理をするときには数量ベースで考えていましたから(この詳細についてはまた後日)。

在庫回転率の考え方は次のようになります。
まず、1か月の使用量を算出します。薬品の種類によっては季節性がありますので、この点は十分ご注意ください。
1か月の使用量は通常レセコンから引き出すことができます。
次に当月の使用量を納入数量で割ります。
つまり、在庫回転率=当月使用量/当月納入量となります。
これで大分わかりやすくなりました。

在庫回転率は計算式からみてもわかるように、1に近い方がよく、0に近い方が過剰納品ということになります。

例を挙げましょう。
Z錠は月に1500錠使用します。Z錠は分3かまたは頓服の場合でも3の倍数で処方されます。
A薬局では数え方の利便性から、ウィークリー包装で購入しています。その包装は3150錠単位です。
この場合の在庫回転率は1500/3150=0.476となります。
一方、B薬局ではどうせ端数がでるので、100錠包装をこまめに購入しています。
当月は1800錠購入しました。
この場合の在庫回転率は1500/1800=0.833となります。

逆に計算するとA薬局では購入した薬剤を完全に消費するのに3150/1500=2.1か月かかります。
B薬局では1800/1500=1.2か月となります。
これは「在庫回転期間」といい、在庫回転率の逆数になります。

これらを基に適正な納品計画を立てることになります。

長くなりますので、またまた続きとします。
在庫管理はなかなか奥が深いのでどうかご容赦を。


在庫管理1

2010-05-22 06:40:03 | 在庫管理
薬局の在庫を適正化することはなかなか容易ではありません。
私も4年間在庫管理を担当しましたが、必ずしも成功したとは言えません。

在庫管理は企業にとっては生命線です。
いつかは調剤してなくなるんだから負債はおかしいんじゃない?
損益計算書でも在庫は資産の部に記載するじゃん。
という声が聞こえてきそうですが、負債と考えた方がいいのです。

その理由は購入方法と回転率にあります。
大抵の会社では薬品類は掛けで購入します。購入時にその金額を支払うことはありません。
つまりツケで買っているのです。
通常は2~3か月の買掛ですから、その間は医薬品購入資金を他のことに使うことができるというメリットはあります。
しかし、支払期日にその金額がなければ1)支払期限を延長してもらう、2)金融機関から借入して支払うのいずれかになります。

1)の場合、購入元の卸に対し信頼がなくなり、掛けでの購入は不可能になるでしょう。現金売買ということになるでしょう。
余談ですが、実際友人が立ち上げた薬局は、始めは掛けでの購入でしたが、営業成績がよくなく、支払も滞りがちになったそうです。また、自己資金や担保もないことなどもあって、掛けでの購入は断られたそうです。購入毎の支払の金銭工面に苦しいと言っていました。

2)の場合、借入金に対し利子が発生しますから、返済額が大きくなり経営を圧迫してきます。購入に関し余分な支払をしているわけですから当然です。

つまり、無計画に購入することで会社の資金繰りに多大な影響を与えていることになります。

在庫回転率は次回にまわします。