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さっかんの小部屋

個人的な日々のできごとです。ご笑覧あれ。

コンクリート主任技士小論文の添削

2006年10月27日 | 資格/試験
【課題】
土木技術者にとっては,耐久性の高いコンクリート構造物を後世に残していくことが求められている。
あなたが考える耐久性を損なう劣化現象を一つまたは二つあげ,耐久性を向上させるために必要な対策を設計,施工上の観点からのべよ。
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以前の課題の出題形式と似てますね
自分が作ったので,似ていて,あたりまえですが‥‥(笑)

コンクリート構造物の問題として,維持管理や耐久性の向上,長寿命化が注目されています。
このうち,維持管理は「診断士」の分野になると思いますので,「耐久性の向上」という観点から,問題を作成しています。

このお題に対して,回答をいただきました。以下,その論文です。
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耐久性を損なう劣化現象の一つである塩害について、耐久性を向上させるために必要な対策を設計、施工上の観点から述べる。

塩害とは、コンクリート中の鋼材(鉄筋やPC鋼材など)が塩化物イオンの影響によって腐食し、コンクリート構造物に損傷を与える現象である。
塩化物イオンは、海水や凍結防止剤などの外部からと、内部の材料から供給される場合がある。
塩害に対しては、以下の対策が考えられる。

(1)コンクリート中の塩化物イオンの量を少なくする。
(2)単位水量をできるだけ少なくし、密実なコンクリートとする。
(3)ひび割れ幅を小さく抑制したり、かぶり(厚さ)を十分にとり水分や酸素の供給を少なくする。
(4)樹脂塗装鉄筋の使用やコンクリート表面にライニングする。
(5)電気防食を行なう。

コンクリートの耐久性向上については、第一に密実なコンクリートとすることが重要であると考える。
これは塩害対策だけでなく、中性化や凍結融解作用の対策としても有効で、現在、設計上の観点から高性能AE減水剤を用いたコンクリートの配合を採用した。
これにより単位水量と単位セメント量を最小にし、水セメント比をできるだけ小さくした。

施工上の観点として、被膜養生剤を使用する。
ブリージング水が消失し、水分の光沢が見られなくなったとき、コンクリート表面に散布することで、急激な乾燥収縮によるひび割れを防止する。
型枠脱型直後にもコンクリート表面養生剤をライニングし、外部からの塩化物イオンの供給を防止する。
また、打ち継ぎ部からの塩分浸透を防止するため、打ち継ぎ性能を向上させる処理剤を使用し、耐久性を向上させる。

※実際の論文から,改行位置等を変えています。
具体的には,句点後に改行し,実際に改行されている位置には空白行を入れました。
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この論文は,一度提出してもらった論文を,書き直したものです。
うまくまとまっていると思います。
でも若干気になる点がありますので,下に列記します。

1.書き手の観点を統一する
全体が一般的な立場から書いてありますので,現場からの観点では書かない方がよいと思います。
例えば,高性能AE剤の使用についても,一般的な立場で記述した方がいいでしょう。

あるいは,密実なコンクリートとすることが重要であると述べた後で,個人的な経験として「単位水量と単位セメント量を減らし,なおかつ水セメント比を小さくするうえで,高性能AE剤の使用は効果的であった」と述べるなど,客観的な立場と主観的な立場をうまく混ぜ合わせることが重要です。

今の書き方では,一般的な書き方の中に,突然現場の話が出てくるので,スムーズに読み進むことができません。
前回,「立場云々」と書いたのは,もし主観的な立場を書く場合には,プラントの人間や施主の立場でなく,施工業者の立場から書く方がよいという意味でした。

2.塩害の対策
塩害の対策とその他の耐久性向上の対策は,区別して書いた方が良いでしょう。
イメージとしては,下のようなイメージです。
書く内容は,図中の1と2です。


具体的な内容としては,箇条書きの(1),(4),(5)は直接的であり,(2)や(3)は間接的です。
並べ方は,少し工夫してみてください。
それ以外では,高炉セメントなどの使用も効果的です。

書き方として(2)は,少し文章を入れ替えたほうがよいと思います。
(2)の主目的は密実なコンクリートにすることで,単位水量を少なくすることではありません。

■皮膜養生剤について
前回,皮膜養生剤を型枠を脱型した後で散布するとありました。
そこで,皮膜養生剤の散布について少し考えてみます。

まず,「養生」について考えてみましょう。
養生は,コンクリートが打設され,表面仕上げが終わった段階で,速やかに行わなければなりません。
初期材齢での急激な乾燥は,ひび割れの原因になるだけでなく強度の発現も遅らすからです。

コンクリートを急激に乾燥させない方法として,「散水養生」,「湛水養生」と並んで「皮膜養生」があります。
つまり,膜養生は,コンクリートの打設後,できるだけ早い時期に行う必要があります。

当然,型枠を脱型した後にも養生は必要です。
通常はシートをかけて散水養生等を行いますが,部位によっては難しい場合もあります。
そのような所では,「コンクリート表面養生剤」を使用するのも有効な方法です。

コンクリートは硬化するとき,セメントの水和に必要な水は,水セメント比で22~27%と言われています。
通常の水セメント比は,これより大きく,この水が外に逃げない限り,水和は完全に完了します。

この発想で考えられた養生剤が,皮膜養生剤です。
このことからも,「皮膜養生剤」は,コンクリートの表面仕上げが終わった段階で,使用することが望まれます。

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2006.11.01 追記
高炉セメントの使用は,海水の作用を受けるコンクリート構造物と混同していますね。
削除します。




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