ブログや新書などのツールを駆使して商売を広げているデタラメ就職研修屋に
対抗できる1番の候補は大学教員であろう。
大学教員は専門性で飯を食っているのだから、デタラメ就職研修屋を撃退するなど、たやすいことである。
近年、就職活動の指導に限らず、大学教員の学校内の雑務が急増している。
以前、大学教員と言えば、週3日ほど登校して授業をし、
週1の会議に参加すれば、あとは適当に過ごしても良いという雰囲気であった。
もちろん、論文は書いて、学会にも出ないといけないし、
ゼミ生の指導に熱心な先生なども大勢いる。
さらに、自身と直接触れる機会の多いゼミ生から就職活動で苦戦している話などを
聞く機会が多くなったという方もいるであろう。
以前は、大学4年の10月までは採用活動はしないと
企業同士が協定を結んでいたが、もはや、その協定はほとんど機能せず、
就職活動はどんどん前倒しになり、今年などは大学3年生の6月には就職活動が
本格始動している状況である。
これでは、大学教育に専念できる期間がわずか2年ほどしかなくなり、
とても、まともな専門教育を施せる環境ではない。
このことに危機感を感じている大学教員の方も多く
企業側への批判を口にする先生方も増えたように思える。
また、就職活動の早期化に伴って、勢いを増してきたのが就職研修屋であり、
その存在を認識している大学教員の方も多いであろう。
このブログの読者はご存じの通り、就職研修屋の主張するような
コミュニケーション能力やメラビアンの法則はどこにも存在しない。
彼らは根拠としている論文からは到底導き出せない結論を科学的にも立証されたと
言い張り、独自の主張を展開しているのである。
(このブログを見るのが初めてという人は最終段落の補足を読んで欲しい。)
就職研修屋は就職研修で飯を食っているというのに
自らが根拠としている論文の和訳すら、読んでいないのであろうか、
それとも知っていながら、わざとやっているのであろうか。
就職研修業界のみならず、美容整形業界・結婚活動研修業界(婚活研修業界)でも
「顔面偏差値」・「恋愛偏差値」というデタラメ造語を使用しているところが多い。
一見して、この用語は、美容整形業界・結婚活動研修業界などが
自分たちが儲かるために使っている用語だとわかるであろう。
「コミュニケーション能力」などはまさに「恋愛偏差値」と狭義でも同じ分類の用語である。
このような研修屋がつくった造語に、未だに惹かれる者までいる。
なぜ、就職研修屋が「コミュニケーション能力」などという造語を使うのであろうか。
もしも、コミュニケーション能力を職場の人とうまくやっていく能力と定義するならば、
それは「人当たりの良さ」とほとんど同じ意味である。
それにも関わらず、就職研修屋がコミュニケーション能力という表現にこだわるのは、
顧客の就職活動がうまくいかなかった場合、「コミュニケーション能力の養成が
不十分だったから」と言い、責任を顧客に転嫁できるからである。
もしも、「人当たりの良さ」という表現を使ってしまうと、
抽象的ながら、古くから存在する日本語であるため、
広いながらもある程度、範囲が限られてしまう。
そこで、コミュニケーション能力という日本語とカタカナ英語を併用した造語を使うことによって
より概念を抽象的にして、就職研修屋の責任を無に等しくしているのである。
こんな就職研修屋に高額の顧問料などを払い、就職活動支援と称している学校は
大いに反省するべきである。
就職研修屋に仕事を頼む前に、就職課は彼らが根拠としている論文の和訳だけでも
読んでもらいたい。
そうすれば、いかに彼らの主張が破綻しているかが、よくわかる。
しかし、現状では就職課が就職研修屋へのチェック機能を果たさず
ただ漫然と就職研修屋に追従していることが非常に多い。
就職課も被害者であるが、1番の被害者はそのような就職活動指導を受けて
面接に落ち、内定をもらえない学生たちである。
それでは就職課の代わりに就職研修屋の虚実を明らかにし
就職研修屋から学生たちを守る者はだれであろうか。
それは、大学教員である。
近年、大学教員にも何かしら就職活動指導の仕事が授業形式などで課されることが多い。
日々、思考実験を繰り返し、相手の主張の穴を見抜く能力を鍛えている大学教員であれば
就職研修屋の主張するようなことが本当に正しいか、彼らの根拠としている論文の和訳を
読む作業をするなどして、すぐにわかるであろう。
就職課が就職研修屋へのチェック機能を果たしていない以上、学生たちを守れるか、どうかは
大学教員の方々の双肩に懸かっているのである。
最終段落の補足にも書いて本であるが、
就職活動指導の仕事を担当している大学教員の方は早急に
『非言語コミュニケーション』(聖文社、A・マレービアン、西田司他訳)を読んでもらいたい。
この本は絶版になっているので、図書館などで読んで欲しい。
また、上の和訳の本が入手できない場合、
『反社会学講座』(筑摩書房、パオロ・マッツァリーノ、2007年)の
139ページ以降を読んでもらいたい。
この本は、稲葉振一郎明治学院大学教授が『社会学入門』(日本放送出版協会、2009年)の
巻末付録の読書案内でも紹介している。
教授会で、就職課が仕事を依頼している就職研修屋の主張は根拠がないと
上記の文献などで説明し、デタラメな主張をする就職研修屋には仕事を頼まないように
就職課側に働きかけることは、学校内にとどまらず、社会的に重要な仕事である。
繰り返しになるが、就職課が就職研修屋へのチェック機能を果たしていない以上、
就職研修屋から学生を守れるか、どうかは大学教員の方々の双肩に懸かっているのである。
大学教員の方々は学生たちを守る最後の砦なのである。
ぜひとも、学生のため、社会正義のため、奮闘して欲しい。
(補足:就職研修屋の虚実)
(1)「なぜ働くか」という問いは、「ひょうたんでどじょうを捕まえる方法を答えよ」という問いとイコールである。にもかかわらず、第一印象を良くして生活費のためだと答えたり、家族の笑顔のためだと答えたりする者が後を絶たない。就職の面接本を読んでいる時間を臨済宗の入門書の読解に充てるべきである。
上記の見解に対して、メラビアンの法則によれば、見掛け(外見)の情報のみで全印象の93パーセントが形成されるという反論があるかも知れない。
しかし、メラビアン博士(この人は就職業界では有名人だというのに、心理学界ではあまり有名ではない)の行った実験は「Maybe(たぶん)」という英単語1つだけを様々な表情・しぐさ(写真のみ)・声質(録音した音声のみ)で相手に伝えた時の相手に与えた印象の結果などについて調べただけにすぎない。
しかも、心理学について書かれた分厚い辞典を調べてもメラビアンの法則という項目は存在しない。心理学の世界ではその程度の扱いの法則が就職業界を牛耳っているのである。
(2)経営コンサルタント・就職研修屋に仕事を頼む前に読んでおくべき書籍。
『非言語コミュニケーション』(聖文社、A・マレービアン、西田司他訳)を読んでもらいたい。
この本は絶版になっているので、図書館などで読んで欲しい。
また、上の和訳の本が入手できない場合、
『反社会学講座』(筑摩書房、パオロ・マッツァリーノ、2007年)の
139ページ以降を読んでもらいたい。
この本は、稲葉振一郎明治学院大学教授が『社会学入門』(日本放送出版協会、2009年)の
巻末付録の読書案内でも紹介している。