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高知 きたむら動物病院blog

四国高知にて2009年1月に開院いたしました動物病院のブログです。

綿棒の話

2025-03-29 21:16:33 | 獣医療
私に限ったことではなく、日々の仕事で頻繁に使用する道具…仕事じゃなくても、「使い勝手」が良いものに自然となっていることが多いと思います。

今回は、耳の処置をする際の「綿棒」。

私は、耳の処置(外耳道洗浄)は日々行う処置だからこそ、非常に気をつけることと、洗浄するのであればどうやって最大の効果が得られるかが治療の肝だと昔から考えています。

開業する以前、私は関東のいくつかの動物病院を転々としていました。決して仕事ができる人材ではなく、どちらかというといわゆるポンコツという扱いでした。

最初の職場は、外耳道洗浄の際、鉗子を使いなさいと言われました。
「モスキート鉗子」

その当時はそれで覚えようとしていました。

短い期間で退職し、次の職場では…

「耳に道具を入れるな。事故が起こる。洗浄液だけ入れて洗浄せよ。」

ということで、そうしていました。

3つめの職場。
獣医師が何人かいましたが、それぞれがめいめい好きな方法でやっていました。

4つめの職場。
この綿棒を使いなさい。ただ、耳垢を奥に押し込んだら取れなくなるから気をつけて、あとは状態を見て処置しなさい。
「ルーツェ式棬綿子」

このような経験があり、動物病院の世界では、前の職場で教わったことが別の職場ではNGということもあることを学びました。

となると。

結論としては、当たり前ですが「耳に合わせて最適を考える」のが一番だろうと思います。

小型犬の細い耳では耳垢溶解液で耳垢を溶かしたあとルーツェ式で除去して洗浄液が良いですし、大型犬の大きく深い耳では耳垢溶解液、洗浄液を入れてジャブジャブ洗えます。奥に残る場合はルーツェ式で除去することもあります。

腫れて出血している耳では刺激性のない洗浄液を用い綿棒入れずに済ませますし、猫だと洗浄液を入れるのを極端に嫌がることが多いので、液を耳に入れずにちょっと浸けただけのルーツェ式やモスキート鉗子のほうが処置しやすいこともあります。

動物の性格や状態によっては、洗浄せずに点耳薬を入れて、飲み薬を開始して腫れや痛みが引いてからじっくり処置、ということもあります。

手数、手段は多いに越したことはないので、ポンコツなりにいろいろな病院を見た結果得られたものもあったとは思います。

その、耳の処置で使いなれてて大事な道具「ルーツェ式」が最近生産終了してしまったということで…慌てて探しました。
開業16年で、折れたりとかで○○本廃棄したので、△△本あればあとXX年は持つかな、といった本数を購入。

いわゆる普通の綿棒は自分の感触では硬いので、耳垢採取には使いますが、洗浄処置では使いにくいんですよね。もちろん使ってる先生も多いと思うので、いわゆる「好み」の範囲です。

ということで、またひとつ、使い慣れた道具が生産終了したので、これからも使うために確保したのと、

これから、もっと使い勝手の良い道具が出てきたら良いな、と淡い期待を持ったのでした。

犬と猫の一般診療・内科・皮膚科・内分泌・理学療法
高知県高知市北川添24-27 088-880-5123
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好酸球のお話

2025-02-20 19:12:08 | 獣医療
当院は、一般的な診断治療と、当院独特の診断治療とを組み合わせて最善の方法を模索しています。

一般的なことについては、当院でなくとも書かれているWebや先生、書籍はたくさんあると思いますので、当院独特の方法を思い浮かぶままつらつらと記してみようと思います。



これは、とある方法で顕微鏡で観察している「好酸球」という名前の、白血球の1種です。
血液のなかには血球というものがあり、白血球、赤血球、血小板などがありますが、その白血球には、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球といった白血球のなかの種類に分けられます。

当院で行う血液の観察には、「血液塗抹」という染色して顕微鏡で観察する方法、「網状赤血球検査」という、貧血時に若い赤血球がちゃんと出てきているかを観察する方法、「好酸球数算定」という、直接好酸球を顕微鏡で見て数える方法などがあります。

この、「計算板による好酸球数算定」を行っている動物病院はほとんどないかもしれません。

この方法は、「計算板」という道具を使い、好酸球だけ見えるような液と血液を混ぜ合わせ観察します。





好酸球は、アレルギーや寄生虫感染、副腎ホルモンの変動などにより増減します。
好酸球が多ければ、アレルギーや寄生虫、好酸球増多症、副腎ホルモンが少ないかもしれない、などが示唆されますし、好酸球数が少なければ、副腎ホルモンが多いかもしれない、ストレス性で少ないかもしれないといった状況が示唆されます。

これを利用し、アレルギー体質があるかどうかの目星をつけたり、副腎皮質機能亢進症治療中の薬の量が適正かどうかなどの目星をつけたりしています。

好酸球数が多ければ、少なくとも好酸球数が多くなる要因がありますし、低ければ、副腎皮質機能亢進症を抑える治療中であれば、お薬の量が足りないかもしれない、といった判断の目安になります。

一般的には、好酸球数は「百分比」といって、白血球を数えて、その割合で算定しますが、この方法では好酸球数などは正確には計測しづらく、この計算板の算定が最も正確に計測できます。

百分比をもとにした好酸球数では、一般的な犬の基準値は1250まで、猫は1500までとなっていますが、当院独自の集積データでは、計算板による算定で犬は600もあれば多いほうで、1000を超えることはあまりありません。
皮膚炎の症状が出ていて好酸球数が500~600もあったら十分体質があると判断しています。
ちなみに、好酸球が上がっていたらアレルギー体質がある可能性は十分考えられますが、好酸球が上がってないからアレルギー体質ではない、ということではないのが身体の奥深いところです。

猫は独特の体質があり、好酸球数が上昇しやすい子がおります。
計算板の実数計測で4000~5000といったこともさほど珍しいことではなく、「好酸球性皮膚炎」「好酸球性潰瘍」「粟粒性皮膚炎」などどいった猫の体質的な皮膚病や、「喘息」などでは好酸球だけで15000を超えていたこともあります。
このような体質では厳格な症状管理が必要なため、定期的に好酸球を計測することは非常に有用です。

この方法は、研修させていただいた神奈川県藤沢市の大師匠「故 米倉忠夫先生」が日常行っていた方法で、3年間勤務していた神奈川県横須賀市「ながのペット病院」でも行っていました。

血液を染色して顕微鏡で計測するのは手間がかかる方法ではありますが、これにより得られる情報は非常に価値があるため、当院は必要に応じて適宜行っています。

これは本当に当院独自のことなのであまり話もしたこともないのですが、16年経っても相変わらず計測しているので、おそらく自分が獣医辞めるか顕微鏡が見えなくなるかまでは続けると思います。

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原点

2025-01-29 00:39:59 | 獣医療
今年はやる気が続けばいろいろと書いていこうかなと思っております。

開業して16年経過し、ずっと変わらないところと、時間とともに変化してきたところとあります。
結果的にですが、これまでずっと変わらないところに当院なりの信念が存在するように思います。

この仕事を目指した原点となる出来事があります。

私が小学5年生のときの話です。

当時お世話になっていた動物病院に、我が家の猫が入院していました。
入院前からかなり具合が悪いことはわかっていましたが、入院後もどんどん容態は悪化しました。約40年前の話なので正確ではないかもしれませんが、全身にぼこぼこと腫瘍ができていたので今思えばリンパ腫か何かだったのかもしれません。

ある日母親と面会に行き、もう意識が混濁した状況で、先生と母親が話した後、母が私に

「どうするで?あんた決めや。」

と、治療を断念して連れて帰るかどうかの決断を聞いてきました。

まだ小学生でしたので、入院すれば回復するものだと思っていたので、呼吸はしているものの意識が無い状態を見て、当時の私には重すぎる決断をしました。

連れて帰りました。その後すぐに亡くなりました。

当時は当時なりの時代背景がありました。

いわゆるインフォームドコンセントの前の時代で、ヒトの医療でも厳しい現実を告知しないということも普通にあり、たとえば癌患者本人には告知しないということもおかしいことではありませんでした。

お世話になった病院さんは手を尽くして頂いたことは感じてましたし、その当時も今も変わらず感謝しております。私達家族に現実を伝えることが可哀想と思って頂いていたようにも感じました。当時の時代背景から見ても、できることをして頂いたと思います。

当時小学生の自分が感じた正直な気持ちが私の仕事の原点です。

「連れて帰るならもうちょっとだけ早く連れて帰りたかったな。」

意識が混濁する前の状態も見ていたので、連れて帰るなら、撫でて鳴き声が聞きたかったな、と。

その時の感じたことは約40年経っても変わらず私の心に宿っています。
私の仕事の根本である、「治療方針作成は最短ルートで行う」ことにつながります。

できるだけ早く治療方針を作成して、どうするかを話し合う、希望や要望があればお聞きする、できることできないことを伝える、できることは最大限やるといった、状況改善のために必要なことを優先順位をつけながら迅速に考えることを重視しています。

そのための話し合いができない、話が嚙み合わない人は断ることもあるくらい、徹底しています。

また、当院はできるだけ入院させない方針を取っています。
通院でできることは最大限通院で。
念のための入院はありません。
私が入院治療じゃないとどうしても無理と判断した場合のみ、入院治療を推奨します。
具体的には24時間入院点滴が必要な、「急性膵炎」や「急性腎不全」「糖尿病性ケトアシドーシス」等の場合が多いです。他にもありますが割愛します。

もちろん、こういった治療内容に関しては病院によって考え方や方針が違いますので、その病院、その獣医師によっての判断があり、他の病院のご判断を否定するものではありません。

私はそうしている、というだけです。


私は大したことはできませんが、生まれた子犬子猫から見送る間際の老犬老猫まで方針は一貫していて、

「生まれてから亡くなるまでひたすらQOL(Quality of Life )改善」

しか考えてないということです。

難しい手術や、難しい病気を完治を目指して戦う、あるいは昼夜問わず対応する、といったことは獣医1人とスタッフ数人では現実的ではありませんが、

飼い主さんと犬さん猫さんのQOLを考え、お付き合いしないといけない犬猫の病気があれば最大限上手に付き合う、といったことであれば当院でもできることですし、また16年経過した現在そういった仕事はできているのでは、と感じています。

うまくいかないこともいろいろありますが、うまくいかないことも含め全部お伝えし、どうやって上手にお付き合いするか、どうやってできるだけハッピーエンドを目指すか、といったことを考える仕事をするようになるきっかけになった原点が、小学5年のその日だったことは間違いないでしょう。

もう50が見えてきてますが、少年の心を忘れない・・・といえば聞こえはいいですが、単にまるで成長していない中年男性・・・というわけではないと信じたいところです。

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17年目。

2025-01-17 14:17:39 | 病院について


当院は2009年1月4日に開院し、2025年1月4日に16周年となりました。

昨年はそれまで15年間ずっと忙し過ぎた状況から、少し忙しさが下がり、以前よりも少しだけ心の余裕をもって仕事にあたることができました。

もともと15年ずっと忙しさが増え続けていたので、どこかで止まったり下がったりは来るし、増え続けても体力的に追い付かなかったら仕事の質もさがるので、今の状況は仕事をする上では良いのかもしれません。

今年は、もう何年も書いてなかった自分なりの医療的な内容も書いていこうかなと思います。
大昔に医療的な内容はたくさん書いていたのですが、記事の内容が一人歩きしたり、間違って伝わったりなどもあったので途中から休んでそのままになりました。

でも、もう獣医になって23年目、開院して17年目で、培った仕事の考えなども残しておいても良いかなと思うようになりました。誰のためというわけでもないですけどね。

画像は新年恒例の私の母が活けた花です。


時間変更のお知らせ

2月15日 土曜日
午前 通常診療  午後 休診

3月1日 土曜日
午前 通常診療  午後 休診


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仕事納めました。価格改定のお知らせ。急患対応日について。

2024-12-28 15:52:21 | 獣医のつぶやき
本日午前にて、当院は今年の通常診療を終了しました。
今年もトラブルなく、日々坦々と仕事ができた年でした。
ひとえに飼い主さんのご協力によるものと感謝いたします。

現在当院に来られている方は、コミュニケーションが円滑に
できる飼い主さんばかりです。

以前は全く話が通じない、どう仕事したらいいのか途方にくれたり、
気に入らないことがあるといわゆる因縁をつけてきたり恫喝して
きたりといった人も稀にいたんですが、私がストレスを感じると
仕事の質も極端に落ちるため、ひいては動物にとってもよくない
ことからそういった人はお引き取り願ったりお断りしたりと、
その人にとって合う病院を探して頂くようにしてきました。

昔に比べ、「カスハラ」という言葉が生まれたり、医療のほうでも
応召義務以前に信頼関係が崩壊していたら続行不能とするなど
医療を行う側と受ける側、双方が協力体制をもって臨むことが
認知されてきており、これこそ円熟した状況だと感じます。

丸16年経過した現在は、どうしていくかお話し合いができて
相互の意思確認ができて、医療の目的を共有して仕事に
あたることができる毎日になりました。

この状況がずっと続くよう、当院は診療環境保全を続けて
いきたいと思います。


さて、全く喜ばれないお知らせなんですが、来年1月より価格改定
を行います。

昨今の諸般の事情(物価上昇やメーカー値上げなど)により、
現在の価格維持が困難になりました。
当院の費用設定の多くは2009年の開業時のもので、当時の物価から
比較して現在10%程度は上昇しています。

メーカー値上げがあったお薬やフードなど、それに応じ価格再設定を
させて頂いておりましたが、それだけでは難しい状況で全体的な
見直しをせざるを得なくなりました。

非常に心苦しく感じておりますが、ご理解ご容赦のほどよろしく
お願いいたします。


年末年始の「かかりつけの飼い主さんの」急患対応日です。
諸注意をよく熟読してください

12月29日 受付時間 10:00~10:15
12月31日 受付時間 10:00~10:15
1月1日 受付時間 10:00~10:15
1月5日 受付時間 10:00~10:15
1月6日~ 通常診療

※犬はワクチンやフィラリア予防、猫はワクチンをされているなど
予防を「当院にて」行っている、または持病で継続治療を行っている
などの動物さんが対象です。

※カルテ作成ができませんので初診の方は対応できません

※嘔吐や下痢、といった緊急性のある症状の動物が対象であり、
原則応急処置となります。

休日料金が発生します。(事前に通院を指示させて頂いた方は除きます。
また、時間的余裕がない場合預り金を頂き後日清算となることがあります。

※緊急性のない病状、予防やフード、薬だけなどは対応できません。

 ※院長ひとりでの対応です。電話されても出れません。
ご協力をお願いします。

犬と猫の一般診療・内科・皮膚科・内分泌・理学療法
高知県高知市北川添24-27 088-880-5123
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