kissのひとりごと

~私のお店ができるまで~

隠れ家

2009-10-04 10:14:14 | Friends
 降り続く雨もようやく上がり、雨雲の割れ目から青空が見え始めた夕暮れ時、
 
一台の送迎車に連れられて、私達家族はある場所へと向かった。


 入り口のドアを開け、スタッフにより一斉に出迎えられてから、

息子は奥のキッズルームへ、そして私達夫婦は、その手前の個室に案内された。 

まるで月明かりの下にいるような、薄暗い小部屋に明かりが一つ。

雰囲気のよいジャズの音色が室内を満たす。


部屋に入った瞬間に、「会社創設おめでとう!!」の張り紙が

まず目に飛び込み、それを囲むように貼られたお祝いの絵の数々に

目を奪われた。


 あれは今から3年前、桜のころ・・・

10年目の結婚記念日を迎えた私達がここを訪れた時には、

1997年4月14日、結婚式当日の新聞記事のコピーが

まず私達を祝福してくれた。


 席に座るのも忘れて私達は、しばし立ったまま張り紙の下へと近寄り、

あの時受けた感銘と同じ気持ちで、しみじみと嬉しさをかみ締めた。


 座席に着くとまず、予め注文しておいた飲み物が運ばれてきて、

それに続いて、和の上品なおかずの数々が、かわいい子供ウェイター達の手で

次々と運ばれてくる。

   ステーキ肉の秋野菜添え
   里芋のサラダ
   牛筋煮込み
   蟹のあぶり焼き
   レンコンのふわふわ揚げ

それは、私達夫婦の好みを知り尽くした料理人の味。

一口かみ締めるごとににじみ出て来るような、作り手の暖かい気持ちが

感じられ、それはそれはいい気分になってお酒も進んだ。

当然のように夫婦の会話も会社設立がテーマとなった。それまでの道のりを

しみじみと振り返り、これからの発展を願う夫の目はとても力強く見えた。

もてなす側の愛情が、料理を通じて、笑顔を通じて見えない形で

私達の内側に浸透し、それがエネルギーの潤滑油となる。


 お酒も回り気分も上々、極上な料理の味とこの幸せな気分を

分かち合いたいと思ったころ、ご主人と奥さんが、

本日最後のディシュ、梅じゃこご飯とスープを運んできて、

そこに二人も加わり、また新たな宴会が始まり夜は更ける。


お店の名前を聞かれても、残念ながら教えることはできません。

なぜなら・・・







そこは、粋な友人一家が、私達の為に開いてくれた

一夜限りの隠れ家レストラン・・・