今年は過去最多の唐紙を手がけた。
まさに唐紙師トトアキヒコとしての1年でした。
つくって、つくって、つくって…つくる
春頃だろうか
「トトさん、今はただ、ただただ求められるがままに…そしてこころの赴くままに…つくりつづけてください。そういう時期ですよ、何も考えずにひたすらこころのままにつくってください」と、言われたことを年の暮れになり思い起こす。
来年は、もっとたくさんつくり、龍の如く駆けめぐります。
21日、名刹「養源院」で2年半ほどかかわってきた文化財修復の仕事がお寺に納められた。
緑青の地色に金色の丸龍の唐紙。
片面は俵屋宗達の松図の修復、片面は江戸時代の唐長先祖の唐紙で表裏となっている。
この宗達と共する文化財の襖の修復唐紙を手がけさせていただいた。
いろいろ試行錯誤の上、100年、200年と時代を遡り当時の色あいで修復した唐紙がおさまったことにより、伏見城から移築された聖天さんの間を美しき龍の唐紙が囲むことになる。
正面には11代目の手がけた唐紙が左右に配されている。
実は、昨年この唐紙をつくる際に11代目から学んだことが、この1年間の仕事に大きく影響を与えているし、今回の龍の唐紙にも変化が生まれているといえる。
修復仕上がりの立ち会いの際、ほのかな灯りの本堂で11代目がくれたことばが本当に嬉しかった。
「去年の龍よりええやないの」
ひとつまた成長できたということ。
ありがたい。
去年の唐紙と何が違うかというのは自分のなかでは答えがでている。
このことばが的を得ているかはわからないけど、おおらかさが違うのだ。
あらゆる面で唐紙がおおらかになったということだろう。
もうひとつは、重力。
それと、ここには記さないがもうひとつ大切なことが相まってぼくの手から唐紙は生まれる。
養源院の松図修復唐紙は、ぼくが生涯語りつげる誉れなる唐紙となりました。
先祖が残してくれ、お寺さんが守り伝えてくれたおかげで今回仕事する機会をいただけたということを忘れてはならない。
つづくということはつづける人がいるということ。
この唐紙が、この先も100年、200年と伝わり人々の心の安らぎにつながり、見守ってくれることを心から願う。
先祖の唐紙の修復というものは、調べたり想像したり…なんだかいろんな対話をするようでもあり、困難さはあれども、ぼくには、なんだか楽しい仕事のように思えた。
やがて、ぼくたちの子孫がまたこの龍の唐紙に挑む日が来るのだろう。
12月22日
唐紙師 トトアキヒコ