どちらがエッチ？

　男性と女性と、どちらのほうが、エッチな生き物か。
　女性たちは、男性だと言い、男性たちは、女性のほうさと断言する。
　たとえば乗り物の中の痴漢は、エッチな男性の代表みたいなもの。傍にいる未知の女性の身体に欲望が起こり、手が勝手に動いてしまうらしい。その手に、
「イヤラシイ！」
　と、羞恥と怒りで頭に血がのぼり、男性ってホントにエッチなんだからと、女性たちは再認識する。
　私が短大時代にクラスメートたちと痴漢談義をした時、
「顔を見てハンサムだったら、抵抗しないで、じっとしているわ」
　と、一人が発言したとたん、爆笑と同感の声が上がった。
　好きなタイプの男性になら、乗り物の中であれ、バストやヒップを触られて、うっとりといい気分になってしまう。
　それが大半の女性なら、行為をしかける男性と同様、女性もエッチな生き物と言えるかもしれない。でも、痴漢は、いけません。
　男性は、いい女を見ると、ひそかな空想で服を脱がせ、裸にしてしまうそうである。理性も分別もある大人の男性が、真面目な顔して、真面目に話しながら、目の前の女性のヌードを空想するなんて、イヤラシイ。　
　女性は、好きなタイプの男性と一緒にアルコールを飲んでいる時など、この後、もしかしたらホテルへ行って、キスしたり愛撫されたり、なんてことになるかもと、瞬間的に、ひそかに空想して身体の奥が熱くなったり──ということもあるかもしれない。
　そんなふうに、瞬間的な空想ということなら、男性も女性も、同じぐらいエッチな生き物と言えるかもしれない。
　けれど男女がベッド・インした時は──。相手の男に肌が馴染んでいくほど、女は我を忘れ羞恥を忘れて何度も行為を求めたくなる。
「ね、もう一度やって」
「うん」
「今夜は泊まって」
「うん……」
「さっきの、あれがいいの。ね、もう一度……」
「……うん……」
　疲れ果てて目を閉じたままの男は次第に眠そうな声。一度エネルギーを消耗すると、眠くなるのが男の生理らしい。
　女は歓びを味わえば味わうほど、しつこく、未練がましく、貪欲に、エッチな生き物に変身してしまう、というケースが多いようである。