男の色気

　色気があるとかないとか、女性についてはよく言われるが、男性はどうか。
「彼は男の色気があるわね」
　なんて、女性が〈男の色気〉という言葉を口にする時、歌舞伎俳優とか映画俳優をさして言うことが多いが、現実に身近にいる男性について言うことは、あまりないようだ。
　色気というより、セクシーなと表現したくなる男性は、結構いるようだけれど。
　たとえば数人でアルコールを飲んでいる酒席で、酔った勢いのように猥談を始めたりする男性が、稀（まれ）にいるけれど、女はそんな男性に対して内心、呆れたり軽蔑したりすることが多い。
　エッチ言葉はベッドの中で、男女２人きりで楽しむもの。何人も一緒に飲んでいる席で、エッチ言葉を連発しての猥談を口にする男性は、最も色気のない男と言えるような気がする。
　男性のどこに色気を感じるかは、女性によって好みがあるし、それぞれ違う。
　以前、男の色気をどんなところに感じるかと、雑誌のインタビューで質問されたことがある。
「女にはない、男性独特のしぐさ、かしら」
　私は、そう答えた。
　男性の質問者は真顔だが、何かもの足りなさそうだった。
　女の色気が、男性にはない女性独特のしぐさやムードだから、その逆を言っただけなのである。内心、私はクスッと笑った。
　それから、こう付け加えた。
「退屈するくらい、何か専門的な話を延々としている時の男性の表情に、男の色気を感じちゃうわ」
　相手の男性の話の内容を、よくわからないのに、理解しているふりして相づちを打ちながら、
（今、この人の頭の中には、女のことなんて、ひとかけらもないんだわ）
　ふと、そう思い、男の色気のようなものを感じてしまったりする。
　または、女やセックスになんて興味も関心もない（そんな男性は、この世にいないけれど。）と思えるような男性のふとした表情に、男の色気を感じると言ったら、質問している男性は、ますます、わからないというような顔つきをしていたのが、内心、おかしくてたまらなかった。