いよいよ「砂漠」が登場! コーナー解説の5回目です。
≪地球シリーズ≫も加えれば、今回の出展作品のうち2/3が≪砂漠シリーズ≫の作品になるんです。
Ⅴ 砂漠へ
1972年(昭和47)12月、森は親友の山本太郎とともに、ヨーロッパ・北アフリカへ約3か月の旅に出かける。
『地平線を見に行こう、と奴が言い出しまして、それはいいなと。それで結局、地平線は砂漠に行かなきゃ見れないというんで、サハラへ行きました。サハラ砂漠のまっただなかに入って行ってエンジンを切りますと、音が、もう物音ひとつしないんですね。なんか自分が真空の中にいるような、そんな感じがいたしました。そして、実際に見ますと、羊もラクダもヤギも、うずくまって動かない一日中じっとしゃがみこんでいる羊飼いの老人もいるわけですが、砂漠ではもう、そういうものがそこらの石ころと同じようにオブジェとしてしか存在しない、そういう空間、無時間性の空間といいますか。つい3週間前まで我々が飲み歩いた、あの秒で刻まれていくような新宿の雑踏と、これがおんなじところに、おんなじ地球の上に存在してるいということが、非常に僕にとっては不思議でなりませんで。それ以来、僕は砂漠に魅せられたといいますか、人為的な人間の作った風景から段々興味を失って、砂漠の方へ入っていくわけです。』(講演会「自作を語る」より、青梅市立美術館、1996年)
帰国後の独立展には、≪SAHARA≫を出品。以後、「砂漠」が森のライフワークとなった。やがて、毎日砂漠を描き続けているうちに、ふと、「自分の追い続けている砂漠の風景は、ひょっとしたらリアリティのない違った方向に向かっているのではないか」という不安が芽生えて来る。
今一度確かめたい、今一度砂漠に触れてみたいとの思いが強くなり、1976年(昭和51)山本太郎とともに、今度は中近東のカビール砂漠に出かけた。霜のように塩の噴き出した砂漠は、遠い歴史と蕭条とした風景とが重なり合って、不思議な感動を呼び起こした。
その後、1982~83年(昭和57~58)には一人でペルーの砂漠へ。南極から赤道へと流れるフンボルト海流によって吹きつけられた風が、海岸から海抜4,000mのアンデスへと砂を運び、巨大な砂丘が太平洋岸からアンデスの山頂まで延々と続く。風に舞う砂で自分の足跡さえもかき消されてしまう様は、テレビで見る月面を想わせた。この体験が、のちに「地球」の連作を生み出すことになる。
森さんは上京後まもなく、新宿の飲み屋「より道」で詩人の山本太郎さんと出会い意気投合、無二の親友となります。ヨーロッパ・北アフリカ、中近東など、二人で取材旅行に世界各地をまわりました。
この二人の旅行記に、『サハラ放浪-文明ぎらいの旅2万キロ』(山本太郎 著・森通 画、読売新聞社、1974年/旺文社、1981年)があります。
今回は、ご遺族からお借りした森さんと山本さんの旅の写真や自筆の旅日記、『サハラ放浪』の挿絵原画なども展示しました。
山本さんが森さんに捧げた詩「消えぬ虹-森通へ-」や、山本さんが描いた北アフリカの旅マップ(複製)なども紹介していますよ。
※ 本日6日(水)は館内整理日のため休館です。
【とき】
7月1日(金)-8月7日(日) 入場無料
午前10時-午後6時
(入場は午後5時30分まで)
【休館日】
月曜日、7月6日(水)、8月3日(水)
【ところ】
唐津市近代図書館 美術ホール(1階)
【出展作品】
油彩画・水彩画 35点
写真、日記、書籍など関連資料
【主催】
唐津市近代図書館
■唐津市近代図書館■
TEL (0955)72-3467
〒847-0816 佐賀県唐津市新興町(JR唐津駅南口すぐ)
ホームページ http://tosyokan.karatsu-city.jp/
≪地球シリーズ≫も加えれば、今回の出展作品のうち2/3が≪砂漠シリーズ≫の作品になるんです。
Ⅴ 砂漠へ
1972年(昭和47)12月、森は親友の山本太郎とともに、ヨーロッパ・北アフリカへ約3か月の旅に出かける。
『地平線を見に行こう、と奴が言い出しまして、それはいいなと。それで結局、地平線は砂漠に行かなきゃ見れないというんで、サハラへ行きました。サハラ砂漠のまっただなかに入って行ってエンジンを切りますと、音が、もう物音ひとつしないんですね。なんか自分が真空の中にいるような、そんな感じがいたしました。そして、実際に見ますと、羊もラクダもヤギも、うずくまって動かない一日中じっとしゃがみこんでいる羊飼いの老人もいるわけですが、砂漠ではもう、そういうものがそこらの石ころと同じようにオブジェとしてしか存在しない、そういう空間、無時間性の空間といいますか。つい3週間前まで我々が飲み歩いた、あの秒で刻まれていくような新宿の雑踏と、これがおんなじところに、おんなじ地球の上に存在してるいということが、非常に僕にとっては不思議でなりませんで。それ以来、僕は砂漠に魅せられたといいますか、人為的な人間の作った風景から段々興味を失って、砂漠の方へ入っていくわけです。』(講演会「自作を語る」より、青梅市立美術館、1996年)
帰国後の独立展には、≪SAHARA≫を出品。以後、「砂漠」が森のライフワークとなった。やがて、毎日砂漠を描き続けているうちに、ふと、「自分の追い続けている砂漠の風景は、ひょっとしたらリアリティのない違った方向に向かっているのではないか」という不安が芽生えて来る。
今一度確かめたい、今一度砂漠に触れてみたいとの思いが強くなり、1976年(昭和51)山本太郎とともに、今度は中近東のカビール砂漠に出かけた。霜のように塩の噴き出した砂漠は、遠い歴史と蕭条とした風景とが重なり合って、不思議な感動を呼び起こした。
その後、1982~83年(昭和57~58)には一人でペルーの砂漠へ。南極から赤道へと流れるフンボルト海流によって吹きつけられた風が、海岸から海抜4,000mのアンデスへと砂を運び、巨大な砂丘が太平洋岸からアンデスの山頂まで延々と続く。風に舞う砂で自分の足跡さえもかき消されてしまう様は、テレビで見る月面を想わせた。この体験が、のちに「地球」の連作を生み出すことになる。
森さんは上京後まもなく、新宿の飲み屋「より道」で詩人の山本太郎さんと出会い意気投合、無二の親友となります。ヨーロッパ・北アフリカ、中近東など、二人で取材旅行に世界各地をまわりました。
この二人の旅行記に、『サハラ放浪-文明ぎらいの旅2万キロ』(山本太郎 著・森通 画、読売新聞社、1974年/旺文社、1981年)があります。
今回は、ご遺族からお借りした森さんと山本さんの旅の写真や自筆の旅日記、『サハラ放浪』の挿絵原画なども展示しました。
山本さんが森さんに捧げた詩「消えぬ虹-森通へ-」や、山本さんが描いた北アフリカの旅マップ(複製)なども紹介していますよ。
※ 本日6日(水)は館内整理日のため休館です。
【とき】
7月1日(金)-8月7日(日) 入場無料
午前10時-午後6時
(入場は午後5時30分まで)
【休館日】
月曜日、7月6日(水)、8月3日(水)
【ところ】
唐津市近代図書館 美術ホール(1階)
【出展作品】
油彩画・水彩画 35点
写真、日記、書籍など関連資料
【主催】
唐津市近代図書館
■唐津市近代図書館■
TEL (0955)72-3467
〒847-0816 佐賀県唐津市新興町(JR唐津駅南口すぐ)
ホームページ http://tosyokan.karatsu-city.jp/