4月18日、今年のアカデミー賞作品「スラムドッグ$ミリオネア」(ダニー・ボイル監督・イギリス映画)を観た。(以降はネタばれを含むのでご注意を!)
この作品、ストーリーだけをみるとかなりのご都合主義である。主人公の人生の苦難のすべてが、クイズで全問正解しミリオネア(富裕層)になるための伏線だったというのだから。それゆえ、映画が、貧しい若者のサクセス・ストーリーといったハリウッド的内容に終始していたら、これほどの成功を収めることはなかっただろう。
この映画の成功は、映画的イマジネーションを駆使しながら、今日のインド社会の繁栄の裏側に潜む混沌をリアルに映し出し、とりわけスラム街の子供達の悲惨な現実を告発している点にある。その意味で、観客に夢のみを与え続けようとする典型的なハリウッド映画とは一線を画している。
しかしながら、スラムを生きる貧しい子ども達の姿は、たんに痛ましいだけの存在として描かれてはいない。どん底を生きる彼らはエネルギッシュで生命力に溢れている。だから映画はインド社会の悲惨な現実を描きながらも、けっして悲壮感をにじませない。スラム街を疾走する子どもたちをとらえるスピード感溢れるカメラワークと軽快な音楽は、イギリスの下層階級の若者たちの姿をエネルギッシュに描いた監督の出世作「トレインスポッティング」に通じるものがある。
それでも「愛の勝利」というハリウッド的モチーフがあったからこそ、万人の共感を得られたのも確かだ。映画では2人の兄弟の生き方が対照的に描かれる。兄は金銭的欲望を追い求め、主人公である弟は、イノセントな愛を失うことはない。自らの保身のために弟を裏切り続けた兄も、最後に自らの命を賭けて、弟の愛を成就させようとする。
主人公が恋人の頬の傷にやさしくキスするラスト。映画史に残るキスシーンの一つだ。
この作品、ストーリーだけをみるとかなりのご都合主義である。主人公の人生の苦難のすべてが、クイズで全問正解しミリオネア(富裕層)になるための伏線だったというのだから。それゆえ、映画が、貧しい若者のサクセス・ストーリーといったハリウッド的内容に終始していたら、これほどの成功を収めることはなかっただろう。
この映画の成功は、映画的イマジネーションを駆使しながら、今日のインド社会の繁栄の裏側に潜む混沌をリアルに映し出し、とりわけスラム街の子供達の悲惨な現実を告発している点にある。その意味で、観客に夢のみを与え続けようとする典型的なハリウッド映画とは一線を画している。
しかしながら、スラムを生きる貧しい子ども達の姿は、たんに痛ましいだけの存在として描かれてはいない。どん底を生きる彼らはエネルギッシュで生命力に溢れている。だから映画はインド社会の悲惨な現実を描きながらも、けっして悲壮感をにじませない。スラム街を疾走する子どもたちをとらえるスピード感溢れるカメラワークと軽快な音楽は、イギリスの下層階級の若者たちの姿をエネルギッシュに描いた監督の出世作「トレインスポッティング」に通じるものがある。
それでも「愛の勝利」というハリウッド的モチーフがあったからこそ、万人の共感を得られたのも確かだ。映画では2人の兄弟の生き方が対照的に描かれる。兄は金銭的欲望を追い求め、主人公である弟は、イノセントな愛を失うことはない。自らの保身のために弟を裏切り続けた兄も、最後に自らの命を賭けて、弟の愛を成就させようとする。
主人公が恋人の頬の傷にやさしくキスするラスト。映画史に残るキスシーンの一つだ。