仲代達矢主演、映画「春との旅」を観た。
現代日本の悲惨な現実を描いた映画だが、
なぜか心が温かくなり、とてもやさしい気持ちになれる、そんな作品だ。
北海道のさびしい漁村で孫娘(徳永えり)と二人だけで暮らす老人。
孫の両親は離婚し、同居の母親(娘)は自殺した。
唯一の家族である孫は失業し、家計を支えるために「家を出たい」と思う。
こうして、祖父の「捨て場」を探す旅が始まる。
頼れるのは、いままで疎遠だった兄弟たち。
しかし、外の「家族」に老人の安住の場所などない。
けっして仲の良い兄弟ではなかったし、年老いた兄弟もそれぞれに事情を抱えている。
それは老人にとって失望以外の何物でもないのだが、映画のラスト・シーンで老人に別様の旅の意味づけが与えられる。
老人の最後の旅は、家族のつながりをもう一度確認する旅であった。
互いに罵り合っても兄弟であるがゆえのさりげないやさしさ。
寄り添い合う老夫婦たち。
新たな家族の生成へのささやかな予感。
そして、祖父を一人にはしないと決意する孫娘。
「無縁社会」とも呼ばれる現代、それでも人と人とのつながりはけっして失われることはない。
小津安二郎の「東京物語」、山田洋次の「息子」につづき、現代家族の現実とささやかな希望を描いた新しい日本映画の名作の誕生である。
(写真はgoo映画より)
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