南海岸は太平洋に面している。
はるか遠い年月、太平洋の荒波に削られて、
島の南側は断崖絶壁になっている。
人類の歴史以前から、おそらく何度も津波が押し寄せてきただろう。
ナーパイとは南海岸の城辺地区には古くからの祭祀で
旧暦の3月はじめの酉の日にダンチクと呼ばれる竹に似た植物を海岸までの
道筋に立ててまわり「津波をよけて」と祈願する。
男たちは船を漕ぐまねをしながら付いていく。
昔、この近くに住むサアネという男の子がいたそうだ。
7歳の頃に大津波が村を襲い、人も家も残らず流されてしまった。
一人残されたサアネは途方に暮れ、村をさまよい歩いているところを、
それを見た喜佐真按司という人が不憫に思い
サアネを引き取って育てた。
サアネが15〜16歳になった頃、浜を歩いていると
小舟に乗った美しい女が現れ
「あなたの妻になるため龍宮の神様から使わされて来ました。」
という。
最初は「身分が違う」と手をついて断ったが
「龍宮の神様の言いつけである。」といわれてサアネは
上平山の荒れた土地に家を建て、二人で暮らしはじめた。
そして男7人 女7人の子供が産まれ。
子供たちが大きくなると妻は、
「あなたを助けるために今日まで一緒に暮らしてきたが、
子供たちも大きくなったので龍宮へ帰ります。
夫婦になってくれたお礼に、あなたを悲しませた津波が
二度と来ないよう津波避けの方法を教えます。」と言って
教えてもらったのが今も続く「ナーパイ」だと
伝えられている。