旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

チベタン・ターコイズの事

2023年05月03日 | チベットもの


チベットのターコイズの事を書こうかしら。

チベタン・ターコイズと呼ばれている石のビーズですな。
古い総称として、アンティーク・チベタン・ターコイズとも呼ばれる。
もうあまり説明は必要ないかもしれない。

以前から言っているが、
現地へ渡航する度に感じるのだが、
質の良いチベタン・ターコイズの数は少なくなった。

これは僕が売るために言っているのではなく、
本当にそう感じるのですばい。

昔、最低10年以上前から
ネパールとかチベットとかインドのチベット圏とかに行っていて、
古い物を好きな人ならば、分かるかもしれない。

「お前、チベットに関わった年数10年いってないやんけ。昔の事なんか知らんやろ」と
言われるかもしれない。

よく誤解されるので、
一応言っておくと、
僕はこの仕事を始めるかなり前から海外渡航や海外在住をしていて、
チベット文化とも早い段階で触れておりました。
なんならジー・ビーズにも以前から出会っており、
モスリム・カルチャーや仏教にも、
かなり早い段階から触れていた。
売買の商売をやっていなかっただけである。

もちろん、
旅行ついでと専門的なプロ目線では話は全く違ってくるけど、
当時見ていた印象とは、
今は全く状況が異なるのは事実だとは思うのです。

まぁ、言い訳はほどほどにして、
僕が言いたいのは、
良いチベタン・ターコイズを集めるのは意外と大変なんでっせ、と言う事ですわ。

そりゃ、お金さえ出せば集めるのは可能だけど、
それはどの世界も共通で、
フェラーリを買うのは大変かどうか?って話になってくるのです。

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もはや趣味。
小粒の質の良いチベタン・ターコイズを集めたネックレス。
以前も二本ほどつくったが、
暇でないと出来ない。

旧知のチベット人業者の店から店を回った。

サイズが合うように、
小粒を選びまくり、
店に長時間居座る図太さと店主との関係性も必要。

現地は、日本みたいに一個一個、
粒ごとにケースに収めて展示してあるなんて丁寧ではない。

珊瑚や石類は大粒を好むチベット人。
大粒であれば紐に括られて見つけやすい場合も多いが、
小粒は特に大変だよ。
ザルの中に謎のビーズ類と共にまとめて入れられているとか、
ショーケースの下の棚にあるとかとか、だ。

更に言うと、
アフガン系や中国系の業者の買い方は雑で、
イチイチ選ばず、まとめて買い占めちゃったりする。
大金で買い漁ってしまう。

では、
残り物にありつくかと言うと、
そうではない。
僕が知る限り、彼らは良く探さない。

言える範囲で言うが、
意外と見えない場所にも店主は持ってたりするのである。





僕はチベタン・ターコイズの色が好き。
美しいグリーン・ブルー。
たまらん。



センターに弓形アンティーク・チベタン・ターコイズを入れてみた。
これが意外と高かったが、
ネックレスにマッチしたのでどうしても入れたかったので買ってみた。
弓形に意図を持ってつくられた、かなり良いターコイズだと思う。
商売目線では単品で売った方が良いだろうが、
僕は自分が欲しい物をつくるつもりだったのでネックレスに入れた。



コロロン。
ポテッとしてかわゆい。
誰かが使っていたのであろうね。
染み付いた色味も味。



トロトロ、艶々でござる。
使い込まれた雰囲気と、
深い青緑色が美しい。




チベット人の友人の店でお茶してたら、チベット人の老僧侶が来た。

耳に良いチベタン・ターコイズのピアスをしてたので、
「譲ってよ」と一応聞いてみたら、やんわり断られた。
僕は強引に買い取る事はしないのですぐ諦めました。

彼はチベタン・コーラル(珊瑚)の大きく古いビーズも首にしていて、
「これなら売るよ」と言っていたが、
色も褪せていて高いし断った。

もし譲り受けたならば、
正真正銘のチベット僧侶来歴だ。

まぁ、だからどうした、と言われれば、それまでだが、
業者の売り言葉で「僧侶から」とか「寺院」からとかよく聞くが、
本当にそうな来歴は多くはないだろう。
だって、そんな機会は限られるからね。
僕は自分の実体験での事実しか言ってないけど。

因みに、
友人周りは僧侶や尼さんだらけで、コルラ(巡礼)ついでに休憩しに
いつも誰か僧侶がたむろっている。
僧侶だらけの時も多く、
むしろ、僧侶以外はあまり見かけない。

チベット仏教関係で分からない事をたむろう僧侶達に聞くと、
すんなり教えてくれる。
幼い時からチベット寺院に住み、長年毎日触れているのだ。
凄く詳しいのは当たり前な事だろう。

彼のお母さんも生粋のチベット出身チベット人で、
主婦同士のコミュニティがあり、顔も広い。

余談だが、
ネパールのチベット人地区には多くのチベット人が住んでいるが、
厳密には、細かいコミュニティが存在し、
その各コミュニティを纏める人物(大抵は年配の僧侶)が居る。

そのコミュニティは、各家庭または一族のチベットでの出生地(ルーツ)毎である。
正月とかで集まるのは、そのコミュニティの一族毎だったりする。
簡単に言うと、「同郷同士の集まり」なのですな。

外国人は、「チベット人」と一括りしがちで、
オリエンタルなチベット仏教観に目が行きがちだが、
ネパールにおいて、彼らは難民・移民なのである。

実は秘めたる心情や想い、立ち位置など色々と複雑なのです。
彼らは簡単には口に出さないけどね。




色々あります。
棒状の古いチベタン・ターコイズは凄く珍しい。
市場に数多く姿を現す類ではない。

好き嫌いは分かれるかもしれないが、
珍品好きの僕は好き。

奥に見える緑色のターコイズはこれといった特徴はない。
しかし、来歴がドルポです。

ドルポと言えばネパール最深部の秘境。

簡単に行くことは難しいが、
ドルポの真冬は寒すぎるので、
ドルポの人々は街に避難してくるのです。

そして、街の滞在費などを稼ぐため、
自らの物(主に石やビーズ類)を売ったりするのです。
・・で、そのドルポの人が持ってたターコイズを僕が買い取ったのです。

まぁ、来歴には価値があるとは思う。
何に重きを置くかは人それぞれですが。




非売品にした古いチベタン・ターコイズ。
写真写りがイマイチなので、
「どこが?」と言われるかもしれないが、
実物を見れば分かってくれるかもしれない。
古さもあるし、
濃い蒼色で美しい。
写真の都合で下のターコイズと同じ色に見えてしまうが、実物は全然違う色。
何より形がかっこいい。






こんなのもある。
表面に網目がほぼ無い。
サイズも大きい。
参考商品。


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超簡単に話をまとめてしまうが、
チベタン・ターコイズは魅力ある石だと僕は思う。

何百万、何千万円も出して買うチベットのジー・ビーズや、
何十万、百万円近い古く大きいチベタン・コーラルを選ぶのは人それぞれだろう。

しかし、
チベタン・ターコイズはそれらに匹敵する魅力を持つとは個人的には感じる。

値段だって、今はまだ現実的な金額である。

(※既に、百万円近いチベタン・ターコイズはラサではあるのは事実で、
実際に、僕の目の前でハイクラスの中国人バイヤーが買っていたが)

なんと言っても、
チベットのターコイズは、
れっきとした伝統を持ち、
チベット仏教にも正統に即した石である。
単なる石のビーズでは無い。

由緒ある寺院の仏像の土台とか見ると分かると思うし、
チベットの人々が大切そうに身に付けている現場を直接見ると、
更に深く実感はするかもしれない。

以上、
さらっとチベタン・ターコイズの事でした。




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