旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

イスタンブールのアンティーク・ショップの裏事情

2021年12月03日 | 日記



イスタンブールでのアンティーク・ショップの裏事情でも書こうかしら。

裏ってほどでもないけど。

日本でも普段、いつも客が入っていない骨董店に対して、
「あの店、どうやって稼いでるのかしら?」
と思うかもしれない。

都内の一等地にある高級骨董店であっても、
それ以外の店であっても、それぞれ様々な販路があるとは思う。

ここではイスタンブールでの販売事情に関して書きます。
アンティーク・ショップと絨毯屋は業界は違うけど、
ちょっと絨毯屋の事を混ぜて触れています。

----

イスタンブールのアンティーク・ショップと言えば、
一般的にはグランドバザールを思い浮かべるだろう。
アラバスタバザールというのもある。

グランドバザールならば、
基本は観光客または外国人相手の商売である。

たぶん初めてイスタンブールを訪れる外国人観光客の多くは
グランドバザールに行くだろう。
数の多さと種類では圧倒的だが、購入には店や物と値段をよく選別する必要がある。

そして、アンティーク・ショップはバザール内だけではなく、
イスタンブールには多くの骨董店が存在する。
骨董ではなく古道具や中古品店(中古品店でもアンティークと店名をしてるが)を合わせたら、
かなりの数になるだろう。
(ここでは細かく分類せず一括してアンティーク・ショップとします)
店舗を持たない業者もプロ・アマ含め数多く存在する。
骨董市も蚤の市だってある。

観光客が集まるグランドバザール等以外では、
いつも誰も入っていないアンティーク・ショップは数多い。
一部の店を除き、
購買目的の客で賑わっている事は少ない。
しかし長年やっている。

どうやって?

そこには色々な方法がある。
僕が知る限りの販路は、
ざっと纏めると四つだ。

・一見の客
・顧客
・業者間売買
・インターネット販売

二つ目の顧客に関しては、
メールや連絡アプリ等のネットを使った海外顧客を含め、
直接取引してる場合もあれば、
来店する顧客で売上を立てている場合もある。
だが、来店売買の頻度は多くはないと思える。

しかし、そこは高価なアンティークである。
一個売れば生活物価の安いイスタンブールで生き抜くのは、
東京に比べて優位だろう。

立地や広さにもよるが、
言う迄もなく、イスタンブールの店舗家賃は東京中心部に比べて安い。
中古品店であっても、そもそも家賃が安い。
たとえ、人を雇ったとしても人件費の安いトルコでは出費はたかが知れている。
最も、オーナーの親族・家族がスタッフをやっている場合も多い(特に絨毯業者)が、
経費面では東京で店舗経営するほどは必要ではないのが実情だろう。
絨毯屋であれば、欧米の業者顧客を持っている場合は大ロットで商売してるので、
店舗での店頭一般販売の売上はあまり重要ではない、と父親が老舗絨毯屋の息子は言う。
因に、その息子は絨毯屋の道に進まなかった。
タトゥーが入った髭ゴリラの様な見た目とは裏腹に真面目な性格で、
嘘や大袈裟に盛った話が平気で飛び交う絨毯業界が好きではないと言っていた。

話しを戻そう。

アンティークを買うのは外国人だけでは無い。
イスタンブールの富裕層で古い物を好きな人は多い。
ごく少数でも富裕層を顧客に持てたらそこだけで売上が成り立つだろう。

また、高級店以外での古道具店であっても、
中古の椅子やアクセサリーなど手頃な金額の物が意外とちょこちょこ売れてる場合もある。

さて、
一見の客(いやゆるフラッと入って来た客)と顧客売買であれば、
誰でも容易に想像がつくだろうが、
三つ目の業者間での売買や、
四つ目のネット販売に関しては、
意外と見落としがちかもしれない。

ここらへんの販路が、
表からは一見分からない商売方法になるかしら。

業者間売買に関しては、
結構、頻繁に行われていて、
ぶっちゃけてしまうと、
グランドバザール内でも行われている。

これは、アンティークだけではなく、
古い布(テキスタイル類)に関しては僕の知ってる範囲で言える事です。

当たり前だが、卸の店の方が安い。
家賃が高い表通りの店は品物が高い。

安く買うのは卸の店を見つけるのがポイントだが、
ツアーで訪れる短時間かつ、
海外旅行不慣れでトルコ初めての日本人観光客が卸の店に一人でたどり着くのは
至難の技と思える。
概して卸の店は分かりづらい場所にあるから。
その上、卸業をしている店でも金額交渉は必要で、
安く買えるかは買い手の交渉力と状況次第だろう。
もっと踏み込んで言うと、
欧米顧客を持ちネットを使って直接売買を行っている業者に対しては、
それなりの交渉が必要となる。

そして、卸から買って自分の店で売っている、という地元業者だけではなく、
卸(またはグランドバザール以外も含めた他の店)の店から商品を預かって売る、
ようは委託販売をしている場合もある。

尚、ここでは便宜上、卸と一括表現しているけど、
多くは一般販売もしているので店や倉庫に行けば一部除き基本は顧客でなくとも少数でも購入できる。
グランドバザール以外の地で、ビル一棟まるごと絨毯卸業者の建物もある。

また、グランドバザールを代表するのだが、
販売時の一個単価の利益率は高い。
つまり、一個売ったら利益が大きい。
はっきり言うと、総じて原価(仕入れ値)は、
現地の情報がない外国人が考えるより安い。

アンティークのシルバー製の貴金属類アクセサリーなどは、
価格がグラム単価(1グラム幾らでの総重量計算)の場合もあるが、
そのグラム単価自体は店や立地や物などで異なる。
グラム単価は統一ではない。

各業者の品物の仕入れ方法に関しては長くなるので書かないが、
絨毯業者など親から受け継いだ在庫がある場合も含め、
口先では色々言うが、
本当の仕入れ値は公にされる事は基本ない。

最も、(イスタンブールではないが)僕も見た事があるが、
業者の台帳とか見せてくれれば仕入れ金額を確認できたりもするけど、
一般的にはそこまで見せないのが普通だろう。

交渉決裂する場合の理由は様々なので想像に任せます。
ただ、思うに、イスタンブールの業者はイスラム圏特有の価格交渉には時間はかかるが、
比較的知的でマイルドなので、交渉決裂であっても喧嘩になりにくい。
何処かの国の、ひたすら力技で押してくる業者達とは大違いである。

もちろん、本当に仕入れ値が高い時もあったり、
売り手が現金が必要で安値で手放す場合もある。

または、あなたが容姿端麗交渉上手な美女で決裁権のある売主がトルコ男性、
または、売り手と既に個人的に友人知人等の間柄であった場合など、
売り手が仕入れた同等金額か長年取引してる業者価格で手に入れられる時は幸運だろう。
イスタンブールにおいて売り手がマジで損する金額で購入出来る機会は限りなく少ないと思えるけど。

ただし、どこの世界でも共通する事だろうけど、
次回購入または継続して良好な関係を維持したいとするのならば、
相手が納得する金額で支払う事も大切とは思う。
また、それらは相手と状況を見定めて行う事が良いと個人的には思う。


さて、
三つ目の販路「インターネット販売」

これはオークション形式が多くある。
まぁ、日本にもありますよね。ネットオークション。

ちょっと考えると当たり前だがトルコにもあり、
オークションごとの独自アプリも存在する。

そして、数や専門とする種類は多い。
トルコ語で現地で検索すると、ドワァ〜と出てくる。

実際、僕も友人を介して、
日本の古い物をトルコのネットオークションに出品しようと試した事はある。
どのサイトを見ても大体トルコ語のみだったので友人にお願いした。

アンティーク・オークションやネット販売サイトと言っても千差万別で、
格安中古品のサイトもあれば、バリバリの高級アンティーク専門サイトもあり、
無数に存在するサイトから適切な販路を見つける必要があるのだが、
僕の場合は適切なオークションをまだ見つけられていない。

正確に言うと、出品前に運営会社に商品の写真を送ったのだが、
運営会社自体が日本の古物に関しての知識がなかったし、
そのオークションの利用者が僕の商品の購買層とはターゲットが異なったので見送った。

また、以前、某高級地区にある高額商品を扱うオークション会社の事務所にも
行った事があるが、そこもネット上の売買のみを行っていた。

事務所は門番付きのビルの一室にあり、
出品を待つ品物を見せてもらったが、珍しい物も多くあった。
落札予想金額が数千ドルの物も普通にあり、
話しをしたところ、どうやら購買層はトルコ富裕層であるらしい。

ここのオークションは毎日随時行っているのではなく、
日程(年数回)を決めて売買を行う方式をとっていた。

一般的な市場では見ない物もあるので、
資金力があれば個人的に買うには選択の一つかもしれないが、
商売を前提としての仕入れは微妙だろう。
富裕層相手なので金額設定が高額だから。

また、トルコの素晴らしいアンティークにはオットマンの紋章が入っている物もある。
オットマン・サインは制作時代を表していて、
大型の古い絨毯や馬の鞍にドーンとオットマンのサインが入ってしまうと、
輸出(輸送する場合)でやり方次第では問題になる場合がある。
トルコは意外にアンティークの国外持ち出し制限が厳しいのです。

他にもアンティーク会社の事務所兼倉庫にも訪れた事もあるが、
ものすごく分かりづらいビルの地下にあった。
イスタンブール高級地区でレストランを経営してる知人(その従兄弟が僕の友人で骨董好き)に
聞かなければ辿り着けなかっただろう。

その会社はヨーロッパやロシア系を含めた古い大型家具類が専門だったので、僕の趣向とは違ったが、
そこもネットオークションでの売買がメインという事だった。
そもそもそんな場所に普通の客は来ない。
現地業者かネットで売る事以外はないだろう。

話しは逸れたが、
インターネット・オークション会社を含めたネット販売会社の販路に、
販売会社自身が集めた出品物の他、多くの古物業者や素人が出品しているのです。


客が入っていない店でも存続している他の理由では、
オーナーがそもそも金持ちである、という理由もある。
僕の知人のアンティークショップ・オーナーも、元々が富裕層でインテリジェンス。
一個1000ドルの商品を雰囲気が良く広い店舗に並べ、従業員も居る。
オーナーの友人達(ご婦人方)を紹介してくれた事もあるが、
全員揃って金持ちで落ち着いた上品な方々であった。
同じ富裕層でもニシャンタシュ辺りのイケイケの若い人たちとは違う印象だったかな。
僕が持ち込んだ品物も数千ドル分をポンッと払って買ってくれた。

因に、このレベルの人達は皆、英語を流暢に話すのでコミュニケーションは取りやすい。
上記のオークション会社でも英語は通じるがスタッフ全員話せる訳ではなかった。
国際都市イスタンブールであっても英語が話せないトルコ人は多い。
外国人相手の場所で英語が通じるからトルコでは英語が通じると言う訳ではなく、
観光地以外の場所や地元民の場所に行くと英語が通じない事も多いでござる。


ドアベルを鳴らさないと入られない店もある。
外観からは店舗とは分からないので、
アンティーク・ショップと知らなければ普通はドアベルを押す事もないだろう。
質の良い品物が何階にも渡り大量に並ぶが客が来てる気配はいつもない。
キリム屋でないのにアンティークの飛び抜けて良いアナトリアキリムもギッシリ持っている。
ネット売買も行っているらしいが、それで維持できる規模ではないだろう。
どうやらオーナーはある業界で有名な人でお金を持ってるらしい。
アンティークの商売は趣味に近いのかもしれない。

その他、骨董市や露店で売るという事もあるにはあるのだが、
それなりの店(高級店)のオーナーが露店で品物を売る事はない。
正確に言うと、
そこそこ立派な骨董店でも年数回の大規模アンティーク・ショーには出店するし、
店を持っていても店舗売上がない場合は露店に出店してる人も居る。
そういった構造は日本の古物業界と大体同じなのではないだろうかな。


・・・とまぁ、色々書いたが、
友人知人からの情報や僕が経験して知る現時点での範囲の事なので、
間違っているかもしれないし、他にも方法はあるのかもしれない。


-----


以前、日本でも竿竹屋が潰れない理由を書いた本があったと記憶しているが、
イスタンブールの骨董屋も売上を出す裏事情を持っている。

勿論、潰れる事もある。
稀だが、店ごとオーナーが変わる事もある。

しかし、基本は皆、
一見しては分からない事を含め様々な方法を使って、
生き残っているという事なのです。


最後に付け加えると、
「最近、トルコリラ暴落だから安く仕入れられて儲かるでしょ?」と考えるかもしれないが、
実はそうではない。

イスタンブールのアンティーク業界や絨毯業界、テキスタイル業界、
グランドバザールや多くのアンティークショップの売買通貨は、
「基本はアメリカドル建てベースでの売買」となるので、
トルコリラの為替が暴落しても連動して安く買えるという事には必ずしも直結しません。
現地の外国人相手の売り手にとってメリットがある事で外国人の買い手にはあんま関係ない。
10ドルの品物は10ドルのままで、リラ換算するとリラ価格が以前より上がるって感じ。

まぁ、値段を為替程変えずにリラ建てで商売をやってるアンティーク業者も居るし、
レストラン等での飲食や日用品購入等などリラ払いの場合であれば安く感じるとは思う。
加えて昨今のコロナ禍で一部を除き資金難で値引きに応じる業者も居るのは事実でござる。

以上
裏事情ってほどでもなかったですね。


コメント   この記事についてブログを書く
« ジョージア(グルジア)のキ... | トップ | オールド・キリム・ブランケット »

コメントを投稿